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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

métro 第14回公演『GIFT』

2025-02-27 | 舞台
*天願大介作・演出 公式サイトはこちら 下北沢/小劇場 楽園 3月2日終了
 月船さらら(1,2,3,4)による演劇ユニットmétroが4年半ぶりに公演を行った。2021年の『痴人の愛』IDIOTS』(谷崎潤一郎原作)公演にあたって、天願大介が語ったことを思い起こす。曰く、「原作者の頭の中に入っていき、記された言葉はもちろん句読点に至るまで、その意味や意図を考え抜き 今度は、それを芸能として舞台に立ちあげるべく自分の言葉に置き換え、かつ演出を担う。気が遠くなるような作業であるが、『不思議な作業』」であると。2020年の『少女仮面』(唐十郎作)の際も、助詞のひとつ、句読点のひとつにまで劇作家の意志と意図を読み取り、舞台に立ち上げんとする姿勢には、哲学者、修行者のような知性と厳しさが感じられる。

 今回は天願大介のオリジナル作品である。唐十郎の逝去を指すのであろう、2024年を「アングラの終焉を感じさせる年」と捉え、それでも生き延びるアングラの精神を以て、戦場で世界を呪う女(月船)を軸に、太宰治の『斜陽』、スタニスラフスキー、地蔵、地獄巡り、ブルース・ウェイン、メイエルホリド、岡田嘉子、唐十郎など、さまざまな人物、背景、思想が絡み合い、ぶつかり合う。さながら日本と欧米の演劇史、芸能史、文学史が展開するようである。 

 「楽園」の大きな柱を有効に用い、場所も時代も特定せず、戦乱のやまない世界のどこかを舞台に、月船、渡邊りょう、影山翔一が複数の役柄を演じ継ぎながら進行する物語は、時おり観客を混沌のなかに落とし込みもするが、通しで地蔵役を演じるマメ山田の不動の安定感というのか、観る者の困惑までも受け止めて、劇世界に繋ぎとめてくれるホスピタリティに和み、救われて最後まで観劇することができた。

 ただ劇作家、演出家その人(あるいは弟と称して)を登場させる趣向については好みが分かれるであろう。その人、その人の名を出すことなく、その人の存在を示すことも可能ではないだろうか。
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