メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

マスネ「サンドリヨン」(メトロポリタン)

2019-06-11 15:22:11 | 音楽一般
マスネ:歌劇「サンドリヨン」 
指揮:ベルトラン・ド・ビリー、演出:ロラン・ペリー
ジョイス・ディドナート(サンドリヨン(リュゼット))、アリス・クート(シャルマン王子)、キャスリーン・キム(妖精)、ステファニー・ブライズ(ド・ラ・アルティエール夫人)、ロラン・ナウリ(パンドルフ)
2018年4月28日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2019年5月WOWOW
 
ペローの童話集で広く知られているサンドリヨン(仏語で灰かぶり)すなわちシンデレラ、マスネ(1842-1912)によるオペラの存在は知らなかった。マスネといえば「ウェルテル」、「マノン」が有名で、本作はメトロポリタンでは初演だそうだ。
 
これを原作とするオペラ、わたしにとってはまずはロッシーニの「ラ・チェネレントラ」でここでも何度かとりあげた。こっちは作られた当時、舞台で女性が脚を見せることを反対されたためもあり、このガラスの靴もかぼちゃの馬車もなくて、妖精は哲学者になっていて、娘が王子の愛の真実を積極的に確かめようとする自立性をむしろ表現したものになっていた。
 
マスネのものは、作曲家が円熟してから、1899年の作で、よりペローのものに近い。とはいえ、主人公の成長と、愛に関する作者の考えから、いくつかの模様替え、変更がある。
 
第一幕はおとぎ話調、オペレッタ調であって、特にサンドリヨンの父親が後妻と実の娘との間で見せるどっちつかずの煮え切らなさが笑いを誘い、また継母の存在感が際立つが、彼女もコミカルであって、演じるブライズが容姿ともピタリで見せる。父親のナウリもうまい。
第二幕の王子と会い、12時に逃げ帰ってきて、また再会、そしてという流れで、妖精の果たす役割がこのオペラでは大きく、大活躍だし、またその根底にあるこの二人をなんとかしてやろうという気持ちが、次第にこっちに効いてくる。キャスリーン・キムも名演。
 
王子をアルトに設定したのは、何回かある二人の愛の二重唱を透明感をもって盛り上げるのに成功したといえるだろう。クートとディドナートの声質もうまくマッチしていた。
 
ディドナートはロッシーニでも当たり役だったが、ここでももうすこしはかなげな見え方があるととは思う。ないものねだりだけど。
 
オペラの作り方でいえば、後半で二人が姿は見えないが愛の歌を交換して、その後それが夢の中だったのか、と思うところがある。いい仕掛けである。
最後、みんな仲良くなり、大団円、と短時間でさっと終わるところもいい。
 
ビリーの指揮はよく流れて、また手堅い。
ペリーの演出、衣装、舞台は、騒がれるほど感じなかったが、劇場で見るともっと効果的なのだろうか。




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