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詩人のことば (9) --Keats on Imagination--

詩人の言葉 (9)
ジョン・キーツ (1795-1821)
(想像力について)

ぼくが確信しているのは、心動かす感情がもつ
神のような力と、想像力が真実・現実を生み出す
力だけです。想像力が美しいととらえたものは、
本当に美しいに違いありません--もともと存在
するものであろうと、そうでなかろうと、です。
愛など、ぼくたちを動かすすべての感情についても、
そう思っています。ぼくたちの感情はみな、それが
もっとも高まったとき、本質的に美しいもの、
美の本質ともいえるものを生み出すのです。
・・・・・・想像力は、アダムの夢[ミルトン、
『失楽園』8:452ff.]のようなものかもしれません。
夢を見て、そして目を覚ますと、それが現実に
なっている、というように。想像力が真実や現実を
つくると、ぼくは本当にそう思っています。というのも、
理性でいろいろ考えつづけても、ものごとが真に、
現実に、それら自身であると、本物であると、
確信できたことがありませんから--本物ということに
しておかなくてはならないのでしょうが。

* * *
John Keats
(On Imagination)

I am certain of nothing but of the
holiness of the Heart's affections,
and the truth of Imagination. What
the Imagination seizes as Beauty
must be truth---whether it existed
before or not,---for I have the same
idea of all our passions as of Love:
they are all, in their sublime,
creative of essential Beauty. . . .
The Imagination may be compared to
Adam's dream,---he awoke and found
it truth:---I am more zealous in
this affair, because I have never
yet been able to perceive how
anything can be known for truth by
consecutive reasoning---and yet it
must be.

* * *
ベンジャミン・ベイリーへの手紙より(1817/11/22)。

理性的な思考ではなく想像力によって生み出される
ものこそ真実、という内容。

以下のような他の箇所も参照。

ああ、思考ではなく、感覚的・感情的刺激に
満ちた生き方をしたいのです!
O for a life of Sensations rather than of Thoughts!

(こういうことを考えていいのは、実際にこういう
ことを考えるのは、多かれ少なかれ思考によって
生きることができる人だけ。)

想像力によって何かを生み出すことは、人として
生きることそのものです。想像力が生んだものに
ついて頭の中で思いをめぐらし、それによって
天国のいるかのような幸せが感じられるとしたら、
それは魂のレベルで生をくり返していることに、
つまり二倍以上生きていることになります。
Imagination and its empyreal reflection, is the same
as human life and its spiritual repetition.

(想像力によって生み出されたものにあふれている
今の社会を見たら、キーツはなんというだろう?)

* * *
(訳注)

この文章については、truthという語の訳し方が
ポイント。OEDで関係する定義は以下の通り。

4.
嘘をつかない、ということ。

5a.
事実に沿う、現実と一致する、ということ。

7.
本物・本当・真実・現実である、ということ、
実際に存在する、ということ。

11.
本物・真実・現実であるようなものごと。

12a.
事実。

12b.
それをあらわす概念・記号などにきちんと
対応するものごと。

the truth of Imagination
想像力が生み出すものは本物・真実である、
ということ(5a)。

What the Imagination seizes as Beauty must be truth
想像力が美ととらえるものは、本当に、真に、
事実として美しい(12b)。

whether it existed before or not
想像力によって生み出される以前に存在
するもの--普通の意味で実在するもの--
であれ、そうでないものであれ。

it must be
= it [i.e., anything] must be [known for truth by
consecutive reasoning]. (???)

* * *
「ギリシャの壷」の最後のフレーズ、Beauty is truth,
truth, beautyのtruthも、上記のような線でとらえる
べき--「美こそ真に存在するもの、真の意味で
存在するのは、美しいものだけ」。

* * *
英語テクストは、Letters of John Keats to
His Family and Friends, ed. Sidney
Colvin (1925) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/35698

(詩ではなく散文。改行は任意。)

* * *
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