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鹿砦社編集部 『ジャニーズ帝国60年の興亡』

2024-01-07 16:19:20 | Weblog

能登半島地震(1日)、羽田空港での衝突事故(2日)と波乱の年明けになりました。テレビで何回も同じ映像を見ていると徐々に慣らされて無感動になっていく自分がいます。洪水のような報道の中ではたして肝心なことが報道されているのだろうかと思います。志賀原発の現状はどうなっているのでしょうか。政府もマスコミも国民に対してフェイクに気を付けろといいますが・・

 

『ジャニーズ帝国60年の興亡』(鹿砦社編集部編 鹿砦社 2023年刊) 

歌手、俳優、タレントなどで活躍している芸能人といわれる人たちは、それぞれ優れた才能を持っているからだと思うが、表舞台で仕事ができて多くのファンに応援される存在になるためには所属する芸能事務所の力が相当影響するとも思う。その中でもジャニーズ事務所の持つ力は他を寄せ付けない圧倒的なものがあったのだろう。そう、少し前までは。昨年3月にイギリスBBCが取り上げてからは、大手マスコミが堰を切ったようにその内実を批判し始めた。また、それもジャニー喜多川が亡くなっているのも影響しているのだろう。

僕はこの話題でいくつかの問題を考える。ひとつは、過去において『週刊文春』、『噂の真相』、鹿砦社も含めていくつかのメディアが報じたにもかかわらず大手マスコミはスルーを決め込んでいた。その理由は、ジャニーズ事務所とバーターな関係ができていて報じることができなかったといわれている。ジャニーズ以外にも大手芸能事務所は他に何社もある。ということは、同様の関係、すなわちマスコミが取り上げるのをはばかられる事実が他にもあると推測される。

もうひとつは芸能以外にも共通するのだろうが、絶大な権限を持ったカリスマが支配する物言えぬ閉鎖的な組織においては、理不尽な要求も受け入れなければならないという組織の持つ支配構造の問題だ。非合理なオキテがまかりとおり、デビュー、センター・・を餌に夢多き少年たちが弄ばれた。これもジャニーズだけの問題ではないはずだ。

後者の組織構造の問題は、程度の差はあるが僕らが所属していた会社組織も風通しが悪ければ同じようなことが起こる可能性がある。会社組織の場合、人事権を振りかざすことが社員に対して一番言うことを効かせる手段になる。自分の意志と違う指示を受けた時に、違うことは違いますと言えるか、唯々諾々と従うか。頭に浮かぶのは、家族を食べさせるために辞めるわけにはいかない。耐え忍ぶしか道はないという考えだ。

本書は2部構成で、第1部は「苦境に立たされるジャニーズ」と題し、鹿砦社が過去においてジャニーズ事務所との間で出版をめぐって係争した記録の復刻だ。鹿砦社にはジャニーズ事務所批判の先駆者という自負があるのだろう。でも少し鼻につく文章だ。

第2部は、「ジャニーズ60年史 その誕生、栄華、そして」で、こちらは面白い。例えば、田原俊彦は「たのきんトリオ」としてブレイクする前に何回か売り出しを試みたがパッとしなかったのだ。60年の歴史を簡単にまとめると、ジャニーズに始まりフォーリーブスの解散で人気が凋落、低迷期を脱したのはたのきんトリオ、そしてSMAP、嵐でピークを迎えた。驚くのは、実に多くの少年たちが市井から見出され、育成され、デビューを果たしているのだが、その中で人気を得て表舞台で活躍できたのはほんの一握りだということだ。無名のまま夢を諦めざるを得なかったり、いくつものユニットが組み換えられたりするのは、すべて喜多川氏の気持ちひとつだったのだ。だから彼らは不当な要求も受け入れたのだ。

ただ、少年たちを被害者としての面ばかりで見てはいけない。不祥事、非行、犯罪と彼らの素行が酷いことにも驚くのだ。これは、ジャニーズ事務所の力が強かったがゆえに、少年たちのスキャンダルを握りつぶし表沙汰にならないようにしたからであろう。本書に書かれていて既に明るみになった事案だけでもすごい数なのだから事務所がもみ消したのも相当あるのだろう。

 

 


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