晴走雨読

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『田中角栄 封じられた資源戦略』

2010-03-22 18:13:43 | Weblog
 『田中角栄 封じられた資源戦略 石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い』(山岡淳一郎著 草思社 2009年刊)

 残念!田中角栄の政治活動を丹念に追っていて面白い読み物になっているが、私の一番知りたいことが書かれていない。角栄の失脚は、米国のトラの尾を踏んだからと言われて久しいが、本書でその決定的な証拠が示されると期待して読んだのだが、推論レベルに終っている。

 資源と政治、田中の原点は、理化学研究所にある。「石油の一滴は、血の一滴」という信念を貫き、石油メジャーに依存しない日本独自のウランや石油の資源戦略を求めたがゆえに、米国の逆鱗に触れたとされる。

 本書には、多くの興味深い人物が登場する。山下太郎(アラビア石油の設立など民族派石油利権を探る)、児玉誉士夫(自民党結党資金を提供)、正力松太郎(原子力開発と反共通信網としての日本テレビを発足)、左翼を分裂させるための民社党結成資金はCIAからの秘密資金提供、岸信介―スカルノ(インドネシア戦後賠償は、スマトラ沖石油開発、天然ガス開発につながり、それは、タイヤの原料に、ブリジストンの石橋正二郎、その娘は、現鳩山首相の母とつながる)・・・

 財界の中にも、対米従属派と資源自立派がおり、田中を支えていた後者には、中山素平(日本興業銀行頭取)、今里広記(日本精工社長)、松根宗一(経団連エネルギー対策委員長)、田中清玄(フィクサー)、両角清彦(通産省事務次官)などがいた。

 田中角栄の失脚は自ら招いた金権政治が断罪されたのか、アメリカの資源戦略に逆らったため疑獄を仕掛けられたのか、著者は断定していない。

 今頃なぜ田中角栄なのかという問いには、今も田中角栄だから、と答えたい。現在、小沢政治が批判されているのも、田中角栄的な政治が今だ影響力を持っているがゆえにだからである。米国との関係を論じるには、必ず田中角栄が登場する。普天間基地問題、東アジア共同体構想、小沢金脈批判・・米国の意志を感じなければならない。




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