晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『サッド ヴァケイション』

2007-10-08 17:40:35 | Weblog
 久しぶりに映画を観ました。狸小路のシアター・キノです。



 『サッド ヴァケイション』(青山真治 原作・脚本・監督 2007年 間宮運送組合作品)です。
 
 何か埃っぽい北九州が舞台、登場人物たちは間宮運送という小さな会社に繋がる。そこには、社会から逃れ、捨てられたような人たちが暮らしていた。

 異父兄弟、異母兄妹を引きずり、子どもの頃親に捨てられた主人公。間宮運送を舞台に、親が死に拾われた子ども、家出をして親を捨てる子ども。そして兄弟殺し。

 徹底的に「家族」が破壊される。

 一方、したたかな女たちがいる。不幸を引きずらず、その時、その時の境遇に合わせて、家族を再建する。息子が死んでも、刑務所に入っても、未来だけを見ている女たちがいる。生きていく強さを見せる女たち。

 浅野忠信は、幼き頃母に捨てられ、復讐を企てる危ない男を演じる。石田えりは何があってもビクともしない、全てを取り込んでいくその母を演じる。

 ほのぼのとした通俗的な恋愛物では無い。家族とか、血とか、友情とかは、徹底的に否定される。乾いた人間関係、生きていくとは、一人で生きていくとは、そのテーマの中では、結果的に女の強さ、ゆるぎなさに全てが包み込まれてしまう。

 今、家族、家族と言われているが、家族を一度解体して考えろというメッセージを発する映画である。

 資本主義経済が爛熟すると、物を売らんがために、家族をその対象とするより、個人個人が消費の対象となっていく。テレビ、電話、自動車・・一家に一台で良かった物が、個人所有になっている。

 これが、家族解体の物質的な基礎である。家族を取り巻く様々な事象が発生しているが、道徳とか倫理とかで復元できる問題ではないのだ。
コメント
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