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『街場の中国論』 その1

2007-10-05 22:57:48 | Weblog
 『街場の中国論』(内田樹著 ミシマ社 2007年刊)

「東京フライングキッズ」の内田先生の近作、売れています。神戸女学院大学での2005年の講義をまとめたものです。比較的、私の感性と合う著者なので、ゆっくり読んで見たいと思います。

 他国の国際戦略や国民性について、あまり大きな間違いをしないで考察する方法は、主観的なバイアスを排し、常識的に考えることだそうです。

第1講「チャイナ・リスク~誰が13億人を統治できるのか?」

 チャイナ・リスク(現在の中国が抱える国内的危機、中国がクラッシュすることで世界にもたらされる危機)として、以下の4点が指摘されている。

1.中国経済の失速~成長が鈍ると政体が危機に
 中国は、インビジブル・アセット(見えざる資産)である組織原理や職業倫理が未成熟

2.中産階級の動向が読めない~反日デモの中核を担うが、不満の分析が必要

3.中国政府のガバナンスの低下~苦しい立場に
 中国政府は、反日デモをコントロールできていないのだけれど、あたかもコントロールできているかのようにふるまっている。
 「中国政府は、国民を統治できていない」と言われるよりは、「政府は反日的である」と思われるほうがましと考えている。

4.技術力の貧しさ
 工業製品の流れは、商品開発、企画、研究の「川上」、材料調達、製品製造、組み立て、加工の「川中」、広告、マーケティング、流通の「川下」に区分されるが、中国経済は、あまり利益の出ない「川中」に集中している。

 これらのことから、著者は、その国のイデオロギーについて、あれこれ言う必要は無い、隣国が実効的に統治されることを希望する。
 日本にとって、最悪のシナリオは、反日イデオロギーに興奮した民衆の圧力に抗しきれず、世論に迎合することでしかガバナンスを維持することができなくなった中国政府が、危険な抗日強硬政策をとることだ。

 また、著者は、中国問題を考えるときに、彼我の抱え込んでいるリスクのスケールの差を勘定に入れる必要があると述べる。

 また、ナショナリストというのは、「自国の国益が損なわれることを喜ぶ」倒錯した傾向がある。というのは著者の珠玉の名言である。



 第10講までありますが、今キレキレの内田先生が、どんな発想で議論を進めるのか楽しみです。第2講は、中国の「脱亜入欧」~どうしてホワイトハウスは首相の靖国参拝を止めないのか?です。
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