今日は乗鞍方面に遠征です。この界隈でまだ登った事の無い「安房山」を登り、その北西面に位置するシュートを滑降しました。
出だしは急峻な地形だが、無木立パウダーを満喫。雪が軽い!
メンバーはK永さん、しゅんぺーさん、カミさん、ボクです。
朝、2:50に目覚まし時計が鳴り、身支度をして、愛車KIXに荷物を積んで出発です。今日は3:30大野市の道の駅に集合し、しゅんぺーさんの水平対向マシンに乗り込み出発です。低重心のマシーンは曲がりくねった道路もブッ飛ばし、6:10にアカンダナ駐車場手前の除雪終了場所のゲートに到着。ボク達の他に2PTが居ました。慌てて準備をして6:20出発です。此処からの出発はアナコンダ山や、十石山に登って以来。
しゅんぺーさんの水平対向マシンで現地入り ショートカットして国道158号線に出る
雪で閉ざされた国道158をショートカットして登り、標高1480mの所で先行PT(東京大学ワンゲル部)を抜き先頭に立ちます。これからの日本の将来を背負う彼たちにエールを送りつつ。そして標高1590mの分岐を左にとり、安房平の西側を通り、安房峠に向かいます。この峠は高校山岳部の時、当時は安房トンネルが無く、九十九折の狭い道をマイクロバスで通った懐かしの道。今は冬季閉鎖してますが・・・。
そして、8:15安房山北西端の尾根に取付きました。
安房平を進みます。背後には四ツ岳が!風強そう 安房峠への斜面を登ります
最初は薮っぽい尾根も徐々に快適に 振り返ると前穂高吊尾根もバッチシ!
安房峠手前の尾根に取付きますが、とても乾いた雪に急斜面なので登りにくいため、少し北側に巻いて支尾根に取付き、稜線に出ます。最初は薮っぽい尾根も次第に疎林へと変わりの登りやすくなりますが、非常に乾いた雪が積もり、スリップして登りにくい。さすがは北陸の雪質とは違うなと実感。
前穂高岳吊尾根が一瞬晴れて望めた!!
来る途中、平湯温泉で氷点下9度。登るにつれ気温は低くなり、普段から寒さや指先の冷たさに強いボクも堪らずアウターの下に一着、手袋もフリースからテムレスに替えて登るも寒かった。山頂では氷点下20度位はあったと。そしてエントリーポイントを確認して平坦な尾根を進み、10:25に安房山山頂に到着。山頂には豪壮な電波塔が立っていた。更に一瞬ガスから晴れ望む事の出来る北アルプスの雄姿に一同感動。
山頂で記念撮影!今日はテレマーク3台(うちNTN2台)、山スキー(TLT)1台
今日の天気予報は、乗鞍岳周辺は晴れ、風速は20m/sとの事だが、その通りで、四ツ岳上空を抜ける雲の流れは凄まじかった。比較的低い2200mの山にして正解だったようだ。風は強いものの、気温が低いだけ。山頂では各々シールを剥がしエントリーポイントへ向かいます10:40。
山頂の電波塔を後にします 安房山北端のエントリーポイントからコースを俯瞰
出だしの雪庇に注意してフカフカのパウダーにドロップ!
ドロップポイントは新雪が吹き溜まっており、快適に谷に入ることが出来た。この後も無木立の快適斜面が続いて行く。この時はあの痛ましい事故が起こることなど考えられなく、延々とパウダーを滑っていくことになる。
しゅんぺーさんの華麗なテレマーク K永さんの安定した滑りのテレマーク
滑降は流石は北アルプス!乾いたパウダーで咽るほどの粉雪を堪能できました。北陸の雪とは違うねと言いながら、発狂しながら滑る面々。
カミさんの滑り!上部はフカフカの新雪 テレマークに最適な所もたくさん有りました
粉雪を撒き散らし滑る。この浮遊感はテレマークならでは
シュート状の地形はパウダーたっぷりだが、風の通り道はガリが露見されてきた。
それでも続々滑り降りてくる。条件さえもっと合えば更に素晴らしいことは分かるが、雪崩の危険性のあるシュートだと実感しながら滑り降りてきた。
小船の窪地が見えてきた 徐々に底付き新雪に成りだす
この辺りでガリガリの上に薄い雪が付き、その後はキラリと光るような氷の斜面が露見する。ヤバい雰囲気に・・・。
傾斜は強く、凍ったモナカや氷化したアイスクラスト斜面が斑になり、遂にはアイスクラストの危ない無木立斜面になり、一時停止して足元を見極めながら、横滑りするなどして危険地帯をかわそうと各々必死の状態になる。そして2名が滑落する事故を招いてしまいました。
ボクが一番下にいたところ、上方から雪面を削らす音とともに叫ぶような声とともにしゅんぺーさんが滑落してきた。目で追いやりその状況を仔細に見分できたが、落ちる速度は徐々に加速していき、頭が下になり落ちていく。片方のスキーが雪面に刺さるとともに、その勢いは減殺され藪の中に落ちていき、滑落時の雪との摩擦音が聞こえなくなるとともに、その茂みに雪煙が舞い上がった。どうにか速度は落ち、藪に当たるなどして止まったようだ。最初は呼びかけに何も反応が無かったが、その後、彼の発する声を聞き、取りあえずは無事だと知る。少し経ち「大丈夫か!?」との問いに反応が有り一応は無事を知り、ボクはカリカリ氷斜面を横滑りで慎重に降り、リーシュのブチ切れたスキーを回収して彼の元に。全身打撲で特に左脚が痛いという。アドレナリンの分泌により痛みは感じないだろうが、立つことが出来るそうで少し安心。【滑落した距離は走路:約50m、標高差約30m】
そしてしゅんぺーさんが無事だと一応安心していると、しゅんぺーさんが落ちた位置の下方で身動きできない状態でK永さんが何やら態勢を崩し、立ち上がれないようで、その介助をしているカミさんと共に氷化した斜面で何やらしていると思った瞬間、K永さんも落ちてきた。しゅんぺーさん程では無いが、スキーが片方外れ落ちてきた。K永さんは無事止まり事なきを得た。普段から冷静なK永さんがパニクった程、危険な状態だったらしくこの程度で済んで良かった。【滑落した距離は走路:約10m、標高差約10m】
その状況を目撃していたカミさんは足下ガクガクでビビりまくっていたが、無事降りることが出来た。此処まで来ると何故か雪は新雪になりホッとする事が出来た。そして、最初は救助要請もと考えていたが、二人と接触し何とか滑れるとの事で、そのままゆっくり小船に滑り降りました。
滑落時のお二人の述懐については次の通り(山岳会への第1報事故報告メールにて。)、今後の山スキーの事故を防ぐためにもその時の状況を公開させて頂きます(この後消去するかもしれません)以下原文(名前など一部修正)。
①K永さんより
K永です。
本日全員無事下山はできましたが、滑走中に滑落事故がありましたので報告します。添付地形図のログの通り、安房山から北西に延びるシュートを滑走しました。
上部はクラストの上に新雪が数十センチたまっている状況で楽しいパウダー滑走となりましたが、降るにつれ新雪が減少していき、標高1800m辺りで新雪が消え、カリカリの氷化斜面になりました。
(しゅんぺーさん)が滑走中に氷化斜面で転倒しましたが、ウィペットは全く効かず距離50m、高度30m程滑落し、立木に衝突して停止しました。
その様子を見て他のメンバーもアイスクラストに気づき斜滑降で降りましたが、私のスキーのエッジが氷から外れ転倒、ウィペットで停止することができましたが、凍った斜面の上で体勢を立て直すことはできず、数分後力尽きて滑落。ウィペット打ちこむが効かず、距離10m程滑った所で雪が少し柔らかくなり停止しました(その後はアイゼンに履き替え雪が柔らかくなる場所まで下降)。
(しゅんぺーさん)も自分も大事には至りませんでしたが、大変怖い思いをしましたし、(ゲンゴロウ)夫妻にご心配おかけしました。
ドロップ地点がクラストしていて下部ほど雪が柔らかくなるケースは多く、その様な場合は、滑らなければ良いのですが、今回のように途中から氷化斜面が出てくると対処が難しいと感じました。
ウィペットもウインドクラスト程度なら効きますが、アイスクラストには効かない事がよくわかりました。また、ウィペットはピッケルに比べ長く取り回しが悪く、水落ち部分に押し当てることもできませんし、スキーを履いていると滑落停止姿勢はとても取れません(これは仮にピッケルを使っても同様)。
ウィペットは元々ピッケルのように落停止用の信頼性高い道具ではないことは周知の事ですが、お守り程度と思っておくことが大事だと改めて認識しました。
アイスクラストにいち早く気付き、避ける事が肝要ですが、氷化していても決して転けないよう横滑りを鍛えることやエッジをしっかり研いでおくことが当たり前ですが大事だと感じました。
また降雪や気温の条件によっては今回のようなシチュエーションもあると肝に銘じておきたいと思います。
長々と失礼しました。
②しゅんぺーさんより
事故報告の詳細は、K永さんが記載された通りです。
滑落開始直後、ウィペットで停止を試みましたが止まらず、加速。
もう一度雪面を殴りつけましたが変わらず、さらに加速。
生きていた時のことを考え、頭と首を守りつつ、エッジを立てて減速を試みて、たまたま板が雪面に突き刺さり、やや減速。
刺さった側の板はブーツから外れて、リーシュが引きちぎれ、そのまま自分はさらに5mほど落ち、藪にぶつかり雪の柔らかいところで停止しました。
下から事故現場をみると、日当たりがよくやや起伏?があって、そもそも雪も薄くクラストしやすい場所だったのかもしれません。(地図では確認できない範囲の地形)
ただ、行ってみないとそこまで把握するのは困難だと思うので、K永さんが仰る通り困難な雪に出くわしたときに、なるべく早く避けて通るルートを考えることが大切だと思いました。
ウィペット、滑走時のピッケル使用についてもK永さんの記載の通りです。
リーシュに関して、千切れてしまいましたが、そのまま板が付いてこれば自分に直撃していたことも考えられます。強度が強すぎても、足に負担がかかり最悪自力歩行不可になることも考えられると思います。
道具選びや手入れなど、今一度考えたいと思います。また、ターンの練習ばかりせず、もしものときのクラスト斜面やモナカ雪を安全に降りる術を改めて練習したいと思います。
同じような状況がないとは言い切れないと思うので、山スキーをされる方はお気をつけてm(._.)m
長文、失礼しました。
しゅんぺーさんの元に付き、滑落場所を見上げる。赤丸の場所がしゅんぺーさんが滑落した場所、そしてその走路(ゲンゴロウ撮影)
特に加速しながら滑落するのを目の当たりにして、もうダメかもと思うほどの恐ろしい光景を目の当たりにしました。奇跡的に新雪、藪(ブッシュ)の中にて減速し、軽傷で済みましたが・・・この事故の原因を検証し、今後同様の事故が無いようにしていきたいと思ひます。
事故現場からは藪斜面を滑降し小船ボトムに到着。ここで怪我の部位等を確認する。この後何とか安房峠に登り返すことが出来ると判断
小船でマッタリできました。負傷者は痛みをこらえています(^^;)
11:50小船のボトムの雪原に全員到着し、滑落した二人の負傷箇所を見分します。今はアドレナリンの作用により痛みは感じないところも有るが、頚椎や関節は大丈夫そう。(しゅんぺーさんは左脚が痛くて上げられない)概ね全身打撲程度か!?重くて挫創程度で、裂創など大量出血に至るものは無し。自力下山できると判断し、小船の雪原で昼食を摂り気持ちを落ち着かせる。幸いスキーもリーシュが切断するのみで、ダメージは無い。K永さんのストックは曲がった程度。暖かいラーメンを食べると気分が和らぐ。そして12:25安房峠目指し登り返し。12:55安房峠に到着。思ひ出の峠!高校山岳部の時、夏の合宿で上高地に行ったことを思い出す。昔は此処に茶屋が有ったのが懐かしい。
安房峠へ登り返し!しゅんぺーさん登るの辛そうです 安房峠の向こうは四ツ岳
峠でシールを剥がし、平湯温泉に向かうのだけど、朝来たコースは避け、緩い傾斜の国道158号線をオートクルーズで滑り降りることにする。まだまだ気温が低く雪は生きており快適に滑り降りることが出来た。また、朝のショートカットも国道を忠実に滑り13:55車の元に到着しました。
ストップスノーで無く快適に滑ることが出来た 一部手漕ぎが有るが総じてオートクルーズで
除雪終了地点ゲートに到着K永さん! そしてカミさん!今でもあの光景が目に焼き付いてるそうです。
今日は滑落事故を起こしてしまいましたが、皆軽傷(多分)無事、何とか下山する事が出来ました。そして16:40頃には大野市に到着する事が出来ました。
北アルプスの素晴らしい光景とは裏腹に、このやうな事故が内在するアクティビティーを行っていることを再認識することに成りました!
常に事故が無いように気を付けているつもりですが、山スキーはパウダーなどの魅惑によりその危険性を軽んじてしまう傾向にあります。もちろん雪崩に対する警戒も怠ってはいけません。
再度事故を起こしてしまった事を大いに反省し、この様な事故を起こさない様に山に登りたいと思ひます。そして、この様な事故を起こさない様にスキルを磨いていきたいです。
青丸の位置が滑落事故現場です。安房山から此処までは快適powerでした。