馬は怪我をすることが実に多い。運動が活発で、皮膚が薄く、興奮しやすく、生産地では集団で放牧されていて、おまけに鹿まで馬を驚かし怪我の原因になる。
左の馬は上がり馬(競馬を終わってきてこれから繁殖雌馬にする馬)だった。環境が変わるのも怪我の要因になる。
今はあまり見なくなった白いペンキを塗った立派な牧柵に突っ込んだらしい。
前へは抜けないので、胸の横を切って取り出した。
右の写真で刺さった牧柵の先端はちゃんと角材のままだ。すごい勢いでぶつかったのだろう。
傷を洗うと剥がれた白いペンキがたくさん出てきた。牧柵は腋の大事な血管や神経も傷つけず、胸腔にも入っておらず、うまく治った。
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昔の獣医さんは皮膚しか縫わない人が多かった。それではほとんど癒合せず、しばらくすると傷は開いてしまう。
全身麻酔して筋肉や皮下織も縫い合わせ、死腔(空洞)をなくすようになって癒合する率は上がった。また、傷を良く洗うことも非常に重要だ。汚れている傷はまず癒合しない。
もちろん皮膚はしっかり縫うのだが、馬の皮膚は弱いので糸が切れなくても皮膚が切れて傷が開いてしまう。
それで、開きそうな傷にはチューブを切って、ステントとして使って縫合するようにした。これで、癒合する率はさらに上昇したと思っている。
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夜中にはらいたの手術が終わった馬を、入院厩舎へ連れて行った帰りがけ。
フラッシュで一人の夜桜見物。
鋭利なものが刺さるならまだしも、こんな幅広いものが刺さるなんて・・・
胸腔に入ってたら、予後はやはり厳しかったのでしょうか?
肋骨、あんたは偉いよ!!って感じですね。
学生時代、初めて馬の採血した時、皮膚の薄さにはほんとにびっくりしました。
ある馬は胸前に傷があり、とても深く奥まで探れなかったので、縫える部分だけを縫いました。
次の日、その馬は死に、解剖すると傷は胸を貫いて腹腔に達し、腸を破っていました。パイプのジョイントだけが腹壁に残っていました。
あれだけ運動性のある動物なんで、怪我も多いんでしょうね。怪我してから2~3日ほっとかれる事はないんでしょうね。
牛の外傷は縫える状態に無いのが多いような気がします。乳頭だったらすぐ呼んでくれますけど。
それにしても写真の馬の外傷すごいですね。角材のまま刺さるんですか?どんな勢いだったのでしょう?
若い馬は売り物ですし、繁殖でも傷からフレグモーネになったりするので縫合に来ます。
汚れていようが、時間が経っていようが、皮膚が欠損していようが縫った方が良いと思われているので困ることもあるのですが・・・・