馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

でじゃぶな網嚢孔ヘルニア

2017-01-22 | 急性腹症

昼、繁殖雌馬の疝痛の来院。

発症して2時間ほど。

血液はPCV35%、乳酸値1.3mmol/l。さほど悪くない。

まだ痛い。しかし、立っていられないほどではない。

超音波で診たら・・・・右で肝臓の脇にひどく肥厚した小腸が見えた。

繁殖雌馬、冬、サク癖する・・・・・・・また網嚢孔ヘルニアか?

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開腹したら案の定、網嚢孔ヘルニアだった。

1週間前にやったばかり、またうまくやるさ・・・・と思ったが、今日は入り込んだ空腸が抜けてこない。

上位(吻側)の空腸を穿刺して減圧するが、抜けない。

しかたがないので、上位の空腸を切開して内容を抜いた。

そのことで、腹腔内を触りやすくなり、向こうへ逸脱している空腸も触れるようになった。

が、抜けてこない。

逸脱している側へ引張ってみる。内容を逸脱している側から上位へ送り出してみる。

それで、上位側の空腸をひっぱったら・・・なんとか抜くことができた。

David Freeman先生が提案しているとおりにやったことになる。

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抜けてはきたが、回腸から空腸下部にかけてけっこう損傷している。

Gradeで言うとせいぜいⅠかⅡなのだが、回復しそうにない部分がある。

右が盲腸。

そこへつながっている腸間膜が両側にある部分が回腸。

その上位が最も損傷が強い。色調が悪く、くびれがある。

回腸を切断して盲端にする。

私が右手で持っているあたりで切断して、その空腸を盲腸へ吻合する。

腸間膜は裂孔ができないように閉じる。

麻酔係に滅菌手袋をつけて腸鉗子を持ってもらった。

日曜だから二人しかいなかったのさ。

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今日の馬も繁殖セールで買われてきた馬。

サク癖する。

まるでデジャブのようだった。

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手術中、かなり雪が降った。

よろよろ入院厩舎へ歩いて行く馬のためにも、明日のためにも除雪しておかなければならない。