馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

公営競馬獣医師協会研修2015 3日目

2015-02-01 | How to 馬医者修行

3日目は解剖体を用いて、腹腔内探査の実習。

解剖体なので、全員が腹腔内に手を入れて開腹手術に必要な腹腔内探査の手技を練習できる。

腹壁を大きく切り開く解剖でさえ技術と知識と経験が必要だが、もっと小さい開腹手術創から腹腔内の様子を手探りで調べたり、自分がアプローチしたい腸管を引っ張り出したりするには解剖以上の技術が必要だ。

そして、腹腔のどの位置に、どの臓器、どの腸管が、どれくらいの大きさや形状で位置しているかを見たり手触りで知っていることは、聴診や超音波画像診断や直腸検査にもとても役に立つ。

獣医科大学で解剖学や病理学で馬の解剖を見たり教わっても、外科手術や診断を念頭において腹腔に手を入れるのとは身につく知識や技術はまったく異なる。

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江戸時代、「腑分け」は幕府が禁止し、特別な許可が与えられたときだけ医師たちが行っていた。

「腑分け」に対する精神的抵抗は、肉食を良しとしなかった仏教から来たと思われ、日本独自のものだったらしい。

しかし、医学知識に「腑分け」が不可欠だと考える医師たちは多く、「腑分け」が行われるときには遠方からも多くの医師たちが集まったという話も残っている。

そういう先人達が、鎖国時代の日本の医療を細々と支えていたのだ。

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上部気道の解剖構造の説明、各病気の説明、外科治療法の紹介も行った。

DDSPのTie forward手術も、喉頭片麻痺のTieback手術も、側頭骨舌骨関節症の角舌骨摘出手術も、誰もが行えるようになる手術ではないが、

こういう病気があって、こういう治療法があって、それはどういうものだ、というのは馬獣医師なら知っておくべきことだろう。

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リクエストに応えて、

永続的気管開窓術、声帯切除、内側膝蓋靭帯の確認、などはやっていただいた。

それらの知識や技術がいつかどこかで望まれる馬を助けることになると私は信じている。

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温泉であったまって、

福島空港から凍てついた北海道へ帰ってきた。

家へ着けば深夜時間帯。

で、翌日の重症馬の怒涛へと・・・・・

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ひょっとして暑いのかい?君は?