獣医学教育モデル・コア・カリキュラムが策定され、これにしたがって獣医学教育を行うことが始められている。
6-7割りはこの内容を教えてください。
それ以外は各大学の特色で結構です。
学外実習へ出る前には共用試験を行って、それに合格した学生には学外で参加型実習できる資格を与えます。
というのが、 コアカリ事業の概要だろうか。
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「馬」をコアカリの中に残すかどうかは議論があったらしい。
「産業動物」の中に含めるので良いではないか。という意見も多かったのだろう。
しかし、多くの科目でそうなのだが、牛について教え、豚について触れ、ついでに「馬についても」となっていても、実際には馬については教えられずに終わってしまう。
だいたい海外では「産業動物」としてくくられることはないように思う。
Small animal. Equne. そして、Food animal という分け方だ。
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動物種の違いというのは大きくて、解剖構造や生理が違うので、当然、病理・薬理も違ってくる。
これが獣医学のたいへんなところで、医学・薬学でもコアカリは行われているが、コアカリに示されたポイント数は、獣医学の方が医学・薬学より多くなっているそうだ。
獣医学科の学生や教員は医学の学生や教員より優秀なのか?(笑)
臨床となると、動物種が違うと現実にはほとんど歯が立たない。
病気が違い、生理反応が違い、薬の投与量が違い、使える器具や技術が違うからだ。
紆余曲折のあと、「馬臨床学」がコアカリに残されたことは馬関係者として喜ぶべきことなのだろう。
そのポイント数は魚病学よりはるかに少ないのだけれど;涙。
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が、「馬臨床学」を馬の臨床に必要な知識をすべて網羅した教科書として書くことはできない。
コアカリではポイント数に準じてテキストのページ数が決められていて、「馬臨床学」ではせいぜい120ページほどになる。
現代の馬の臨床を120ページで網羅するのは無理だ。
そして、他の科目、例えば解剖学、生理学、病理学、薬理学、伝染病学、などにはそれぞれ「馬」についての項目が含まれている。
重複しても構わないとなっているが、ページ数が限られているので、他の科目で教わるものはそちらで勉強してくださいということになる。
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「馬臨床学」も器官別に書くことが決まっている。しかし、これも勝手に増やすことはできないので、神経病、皮膚病、などは含まれない。
そんなこともあって、あくまでコアカリテキストであって、馬臨床家が診療する上で紐解いて参考にできる教科書ではないのだけれど、少なくともこれからの新卒獣医師は馬の臨床についてこれだけのことは学んで来るという指標になっている。
そして、思えばわれわれが学んだ数十年前の家畜内科学、獣医外科学、臨床繁殖学から内容は大きく変わっている。
馬臨床家の皆さんにも目を通していただければと思う。
(つづく)