真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「スチュワーデス暴行魔 三十路を狙へ!」(2004/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:龍田一郎/企画:稲山悌二/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/スチール:佐藤初太郎/助監督:泉田まさと/音楽:レインボーサウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/選曲効果:梅沢身知子/録音:シネキャビン/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/現像:東映ラボ・テック/出演:酒井あずさ・水原香菜恵・石川雄也・丘尚輝・柳東史)。
 御馴染み「ペガサス・エアウェイズ」の国際線客室乗務員・高島彩子(酒井)が座席で雑誌を読んでゐると、突きつけたナイフと共に中田哲也(柳)が「この飛行機は我々がジャックした、静かにしてろ」。途端に鳴り始める緊迫感を煽る古典的な劇伴が微笑ましい中、パンティ越しに中田が彩子の秘裂を執拗に弄ぶカットの、プニプニした感じがよく出てゐるのは素晴らしい。とはいへ事の最中に、多分風間今日子の声でハイジャック予行演習を中止する旨の機内放送。予行演習するのは構はんが、実際にヤることはないだろといふ至極全うなツッコミに関しては、酒井あずさのプニプニに免じてここは控へるべきだ。空港と、離陸する旅客機の画を挿んでタイトル・イン。全篇を通して、乗客要員は意外と潤沢。ライトグリーンのポロシャツでワインを注文し、一番ああだかうだと目立つのが、ピンク映画界のヒッチコックこと新田栄。細かいことは、気にするな。一仕事終へ空港内を―堂々と―闊歩する彩子の前に、森谷正晴(石川)が現れる。森谷は彩子の恋人であつたが、勤務先のサンシャイン銀行が経営破綻し失業するや、掌返しに捨てられてゐた。早速次の優良株との関係をスタートさせ、男を経済力と将来性のみで評価する彩子の高飛車な態度に、同居する恋人居ない暦三十年の川瀬市子(水原)は異を唱へる。そんなこんなで彩子と、白石トレーディング御曹司である白石英太(丘)のディナー。丘尚輝(=岡輝男)は頼むから、もう少しいい格好で出て来いよ。ファストファッションどころか、スーパー感が全開だ。彩子と白石の情事が、果てしない長さで繰り広げられる一方、彩子の制服を着てみた市子は、デストロイヤー風の覆面で顔は隠した、見覚えのあるナイフを振り回す暴漢に襲はれる。
 新田栄の2004年が結構穴が開いてゐることを知り、DMMを頼つた第七作。何にせよ、何はともあれ、何が何でも、観てないものは全部見るんだ。としたところが、新田栄恐るべしとでもしか最早言葉が見付からないといふか、正体不明の脚本家を擁し更に加速してみせる、明後日だか一昨日に。徹頭徹尾功利的な高飛車スチュワーデスが、純情肌のルームメイトに絆され考へを改める。やうなオーソドックスを期待した、俺の寧ろ負けだ。翌日朝一の便で、留学する白石と渡米する―ことが求婚の受諾―腹を彩子が固めた夜。名残を惜しみ制服に身を包んでみたりしてゐると、オッチョコチョイなスチュワーデス暴行魔再起動。三度目の長々とした絡みが、五十五分も跨いだところで流石に慌てた。一体ここから、如何に始終を畳むのかと。スカーッとバレてのけるが、翌朝彩子は寝坊し、この時点で白石の線は消える。数日後、彩子は仕事復帰。寿退社する段取りとか進めてなかつたのかよ、といふ一般的な疑問は、それどころではない故さて措く。機内にて、グレート証券に再就職した森谷と再会した彩子が、かといつて元鞘に納まるでもなく。一拍飛行機噛ませて、周囲には誰も居ない機内。内トラにしては男前の部類に入る若い男の尺八を吹く彩子の、カメラ目線の舌舐めずりでエンド・ロール、

 何だこの映画。

 人違ひで犯されたまま退場する、市子の復権が果たされることはない。幾ら濡れ場要員にしても、あまりにも無体な扱ひに止め処なく流れよ、我が涙。当然、ヤナギトロイヤーが罪の報ひを受けなどする訳がない。挙句に、劇中彩子が最後に辿り着く男といふのが、面は不味いがサラブレッド中のサラブレッドである白石でなければ、財務面では大幅に劣れど色男でおまけにセックスも上手い森谷も煙に巻いた末に、現状経済力に欠くのは確実で、将来性に関しても蓋を開けてみないと判らないそこら辺のアンチャン。だからホントに誰だこれ、龍田一郎も。物語が木端微塵に砕け散る爆風で、吹き飛ばされるのを体感した。PCのモニターだからまだしも、小屋で観てゐれば斯様に呑気な諦観もとてもではないがいつてゐられなかつたのかも知れない、キナ臭い一作。土台が、三冠を華麗に達成する酒井あずさの裸だけで、細かいのも加へると優に半分以上尺を消費する、潔いにもほどがある構成から大概ではある。


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