真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「桃尻娘のエッチな大冒険」(2015/製作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:吉行良介/スチール:小櫃亘弘/編集:有馬潜/録音:シネキャビン/監督助手:大竹修平/撮影助手:大友徳三/照明助手:榎本靖/選曲:山田案山子/効果:東京スクリーンサービス/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:青山未来・緒川凛・円城ひとみ・竹本泰志・柳東史・山本宗介・なかみつせいじ)。吉行良介のピンク映画参加は、2005年第三作「しつとり熟女 三十路の昼下がり」(主演:松雪令奈)以来と結構な久方振り。
 適当に表から撮つた画に音声情報のみで、粗相ばかりのヒロインが、スーパーのアルバイト(店長の声は吉行良介?)を馘になる。学費込みの一切を自力でどうにかする条件で上京した、女子大生の真木紗彩(青山)が家賃を滞納する自宅にトボトボ帰り着くと、正しく死人に鞭打ち、三百万の借金をこさへた父親が蒸発したとの母親からの電話(電話越しの声は多分亜希いずみ/a.k.a.関根靖子)を着弾する。無責任にも債権者に娘の連絡先を教へたとの母電話を切り、東北弁で「わたすが死にて」と紗彩が薄暗い自室でベッドに倒れ込みタイトル・イン。タイトル明けるやデリヘル「ゴールデンメンバー」事務所、紗彩は社長・佐伯浩輔(なかみつ)に当然軽く脱がされる面接を受ける。
 配役残り、贅沢にも二番手で大蔵初上陸の緒川凛は、源氏名はクリステル―紗彩が頂戴する適当な源氏名はラブ―の先輩デリ嬢・横山愛美。この人のデリは副業で、本業はフリーの公認会計士といふ設定の欠片も意味もなさは、幾ら何でもあまりにも関根和美過ぎて流石に吃驚する。関根組初登場の山本宗介は、出会ひは客としての愛美彼氏・高瀬次男、加藤義一2015年第二作「巨乳狩人 幻妖の微笑」(脚本:筆鬼一=鎌田一利・加藤義一/主演:めぐり)とまるで同じやうな造形の、イケメンを笠に着た性質の悪いヒモ。一方こちらは何時ものサーモン鮭山のやうな造形の竹本泰志は、紗彩の初陣客・後藤健一。いんらんな女神たち第一弾「いんらんな女神たち」(2014/監督:金沢勇大・中川大資・矢野泰寛=北川帯寛・江尻大)・関根和美2014年第三作「奥様は18歳 超どきどき保健室」(脚本:金沢勇大/主演:きみの歩美)に続きぼちぼちしたペースでピンク第三戦の円城ひとみは、浩輔の妻・妙子。妙子が元泡姫で、浩輔が元文学青年のヒモといふ関係。何と十六年ぶりの関根組帰還後三作連続参戦の柳東史は、紗彩を酷い目に遭はせる変態客・山崎徹。
 サイケデリックではない方のNSP(ニュー・関根和美・ピンク)こと関根和美2015年第三作は、前作「不倫美姉妹 白衣のあへぎ」(主演:倉沢いちは/ex.菅野いちは)に於いて主演女優を喰ふ輝きを披露した、青山未来を主演に据ゑた待望作。ところがこれが、まんじりともせずに最後まで観通せた己が不思議になるほどの、漫然とした出来栄え。青山未来が一体どんな大冒険を繰り広げて呉れるものかと思ひきや、竹本泰志相手に水揚げ。これ見よがしに悪い男に騙される緒川凛挿んで、柳東史に痛い目に遭つた挙句に家賃を滞納した家を閉め出される。転がり込んだ先で夫婦生活をアテられたなかみつせいじと遂に関係を持ちつつ、手切金を渡され何となく放逐、されるだけのロケーションから貧しい粒の小さな物語は、腰骨を砕く破壊力にも欠く始末。とりあへず借金苦を発端に不用意にウェットな人情ドラマが、青山未来に眉根に皺を寄せさせるばかりで、若々しい魅力を削ぐ方向にしか概ね機能してゐないのが厳しい。加へて、そんなショッパイ映画の中身もさて措かせる勢ひで、兎にも角にも暗い!何がといつてお話よりも画面が。山本宗介と二戦戦ふ緒川凛は、的確に当てられる照明に辛うじて救はれぬでもないものの、隣で家を閉め出された紗彩が寝てゐるにも関らず、浩輔主導で夫婦生活をオッ始める佐伯家寝室が、カメラ位置が円城ひとみ視点で左から右に変るまでがどうしやうもなく暗い。デジタル・オーピーも公開順に十九作目にして、それなりに経験値も蓄積されてゐよう筈なのに、ここまで暗くすると小屋で上映しても何も見えない見本かと見紛ふくらゐに暗い。キャッキャキャッキャ青山未来が弾ける、ナベや絶好調時の国沢実とも互角に殴り合へるキュートな一篇を期待したのは当方の勝手にせよ、キャッチ―な公開題も清々しく期待を裏切る、全方位的に改めてあまりにも関根和美過ぎる一作ではある。

 ひとつ気になるのが、当然九州着弾するのはまだ当分先の関根和美次作ことNNSP(ネクスト・ニュー・関根和美・ピンク)の助監督も、今作同様吉行良介である件。もしかして、金沢勇大は足を洗つたのか?


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 団地妻 W ONAN... 愛獣 悪の華 »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。