真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「義母の近親相汗 乳繰り合ふ」(2005/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二/撮影:千葉幸男/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:小川隆史/音楽:レインボーサウンド/監督助手:都義一/撮影助手:前井一作/効果:梅沢身知子/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/出演:山口真里・葉月螢・横須賀正一・丘尚輝・久須美欽一)。
 開巻いきなり岩原茂(横須賀)は仰天する、茂が未だ幼い頃に妻を喪つた父・孝夫(久須美)が、茂と歳もさほど変らぬ花(山口)と再婚するといふのだ。母さんの若い頃にソックリだらう、などと御満悦の孝夫の言葉に対し、茂は確かに花に亡き母親の面影を見る。とかいふ次第で早速、茂の部屋に声が洩れ聞こえるのも厭はず、花と孝夫の夫婦生活。美しい山口真里の裸がタップリと拝めるのはそれはそれで結構なことではあるのだが、まあこの初戦の闇雲に長いこと長いこと。何とはなしに、映画に暗雲が立ち込める、桃雲といふべきか。
 一夜とカット明け、佳子(葉月)が血相を変へ岩原家へとズンズン歩いて来る。孝夫の弟・育夫(丘)の未亡人、即ち茂からは叔母に当たる佳子は、十五年前死去した育夫の遺言に従ひ、以来男寡の義兄父子の面倒を見て来たのだ。その為佳子は自分の再婚も諦め、肉体の乾きは専ら自ら慰める侘しい日々を送つてゐた。それが故に、義兄再婚の報に立場をなくし、冗談ではないと激昂した訳である。・・・・・ところで、十五年前?一体佳子の劇中設定年齢は幾つなのか。
 俄かに姑然と、佳子は岩原家の家事のしきたりを花にスパルタ指導する。見かねた茂が花を庇ひ立てすると、これまで育ての母のつもりで茂に接して来た佳子は、茂の心が花に奪はれたものと愕然とする。場面変へて私は貴方の母親のつもりだつたのだから、私の乳を吸つて呉れ、血は繋がつてはゐないのだから、と佳子が積極果敢に雪崩れ込む茂との絡みには、事前に佳子の忍び難い心身の乾きが一応敷設済みのこともあり、まだしも肯ける。ところが、花も花で、佳子とは全く別個に茂と関係を持つに至る件は些か飛躍が過ぎる。直截にいへば、粗雑にも甚だしい。後日佳子が茂が好きなケーキを持参しての、三人の喫茶。扇でいふと要の位置に座る茂が、俄かにモジモジ悶え始める。テーブルの下では、花が足の指で茂の男根に愛撫を加へてゐた。孝夫が勃たなくなつてしまつたから、といふ理由にも実も蓋もないが、そもそも出し抜けに一体何処から球を放つて来るのか、岡輝男節とはいへ程がある。
 最終的に佳子と花が揃つて茂に詰め寄り、私達の何れを選ぶのか、と叔母と義母とで女の戦ひを繰り広げるといふプロット自体は、攻めの山口真里と葉月螢に対し、受けるのは横須賀正一といふ配役の構図に説得力が豊かなこともあり、力強く成立を果たしはする。とはいへそれが開陳されるのが、尺も3/4を概ね経過した時点といふのは流石に展開上のペース配分ミス、といふ謗りも免れ得まい。結局、事の最中に帰宅し息子と義妹と後妻の乱交を覗き見た孝夫も、男性自身を回復しつつも終に宴に参戦することはなく。下に山口真里上に葉月螢といふ、後背位を縦に二つ重ねた絡みには攻撃的な意欲が感じられはするものの、要は花×茂×佳子といふ3Pが延々延々繰り広げられるばかりの残り十五分。女優部門の余計な三番手は潔く排した布陣は実は磐石ではありながら、限度を超えて薄い脚本に徒に長い濡れ場が連ねられ倒すに終始した、幾多の観客を眠りの沼に沈めて来たであらうことも想像に難くはない一作。叔母と義母とに挟まれた茂の、「ああこの先、僕はどうなつてしまふのだらう?」といふ苦悶の叫びで映画は幕を閉ぢる。率直な気分でいへば、この先も何も、そもそもそれまでが物語としてどうにもかうにも形を成してはゐない。詰まるところは、女優ツートップといふソリッドな陣形を敷いたまでは良かつたが、その癖に最終的には全員が殆ど単なる濡れ場要員に堕してしまつてゐる。幾らピンクとはいへ映画なのだから、物事には限度といふものがあるのではないか。


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