真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「紅い発情 魔性の香り」(2014/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/原題:『白ゆり黒ゆり』/撮影監督:清水正二/撮影:海津真也/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/助監督:北川帯寛/監督助手:菊嶌稔章・松井理子/撮影助手:矢澤直子/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/タイミング:安斎公一/応援:田中康文/協力:ステージ・ドアー/出演:日高ゆりあ・瀬戸友里亜・沢村麻耶・酒井あずさ・津田篤・樹カズ・野村貴浩)。協力の次にクレジットされる、樹カズ自作の挿入曲曲名をロストする。
 マンションの外景と、全篇を通してフィーチャーされる割に、何を表してゐるのかいまひとつもふたつも理解に遠い新月スレスレの細い三日月。樹カズの素頓狂な歌声に瀬戸友里亜がキャイキャイ喜んでゐると、くたびれた風情の日高ゆりあが帰宅する。三十目前の地方公務員・萩原ともえ(日高)は一年前、ストーカー被害に悩む大学の後輩・高宮カオリ(瀬戸)に乞はれ以来ルームシェアする。ところがカオリはろくでもない女で常時両手に余る数の男と関係を持ち、今日も今日とてミュージシャンの岬オトヤ(樹)を連れ込んでゐた。他方こちらは五年の長き間男日照りのともえは布団をヒッ被り、カオリが憚りもせぬ嬌声に耳を塞ぐ日々。そんなカオリがストーキングされるのも当たり前だとともえが悪態をついたところで、改めて三日月を抜いてタイトル・イン。翌朝の諍ひ挿んで、例によつてカオリが連れ込んだ栗原一哉(津田)は頻りに求婚するも、欠片もその気のないカオリにはかはされる。更に翌朝、メイク中に手洗ひから出て来た一哉と顔を合はせたともえは、何てこともない会話を通して一哉に一目惚れする。うん、ポップに厄介だな。
 中盤の火蓋を切り飛び込んで来る沢村麻耶は、カオリがバイトする雑貨店オーナー・圭子。野村貴浩は、六年間の何だかんだの末の圭子婚約者・大迫優希。不脱も高い満足度を叩き込む酒井あずさは、婚期を逃しがちの娘をのほほんと案ずる、ともえ母・美津子。カオリのスマホを拝借したともえは、一哉にクソ重たい勘違ひメールを連打。遂にメアドを変更されたショックで路上過呼吸に陥つたともえに、手を差し伸べる男は菊嶌稔章。重装型田中康文ともいふべき巨漢の菊嶌稔章が、逆上したにせよ日高ゆりあに突き飛ばされるのは画的に大いに説得力を欠く。
 幻の大器・坂ノ上朝美の下駄も履き初の一般映画「おやぢ男優Z」が単館畑を席捲する池島ゆたかの、2014年第一作。自由恋愛どころかフリーにもほどがあるセックスを謳歌する女と、対照的な地味女。土台が家賃も入れない同居人なんぞとつとと追ひ出してしまへばいいのに、次第でもなく二足三足飛びに鬱屈を拗らせた地味女は、派手にブッ壊れて行く。カオリは待ち惚けを喰らはされたステージ・ドアーにて、圭子に連れられ飲みに来た大迫と出会ふ。出会つたかと思ふと現像液も乾かぬ内に、次のカットではカオリと大迫はオン・ザ・ベッド。適宜小気味よく放り込んで来る濡れ場のタイミングは頗る快調な一方、ともえが一線を跨ぐに至る過程は概ね平板なベタ足。カオリの対極に位置するともえが、いはゆる正直者が馬鹿を見る流れにしても絡みに尺を割かれ、そもそも肝心要のともえの外堀が埋まらない。不自然に口元にグラスを挟んだ一哉とともえの遣り取りは、一体何を長々と漫然とした酔狂に戯れてゐるのか。全体この時何が如何に転んだものか、元来最もよくいへば菊穴の締りのいいOPレイティングの横紙をブチ破るクライマックスのスラッシュも、演出手腕含め諸々の限界を無策に全弾被弾し清々しいほどの棒立ちぶり。と、漫然とした仕方なさに堕する寸前の始終をすんでで救ふのは、パブは一人で飾るカット毎に若いのか年食つて見えるのかよく判らない瀬戸友里亜を差し措き、蓋を開けてみると予想外のビリング・トップに躍り出る日高ゆりあ。ともえの八つ下の妹・エリ(名前が口頭に上るのみ)のデキ婚を伝へる、美津子二度目の登場時。終に堰が切れたのかともえが爆発するシークエンスでは、出し抜け具合をも力で捻じ伏せる日高ゆりあの充実、ないしは決定力にダレた襟を正せられる。憑き物を落とすかのやうに浴びた鮮血をシャワーで洗ひ流すラスト・ショットの、正体不明の爽快感も出色。女の裸はコッテリだかコテコテに楽しんだ後、マッタリしかけた頃合で日高ゆりあに目を見開かされる、さうしてみると案外満更でもない一作である。


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