真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「パイズリ熟女・裏責め」(1995/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:五代暁子/撮影:柳田友貴/照明:渡部和成/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワ・プロ/録音:シネキャビン/現像:東映化学《株》/出演:冴島奈緒・桃井良子・吉行由実・白都翔一・坂入正三・樹かず・港雄一)。
 早朝の思ひきり民家に構へられた「今井探偵事務所」、出勤した調査員の真理子(冴島)が未だ眠る所長の今井(坂入)のズボンを下ろしてタイトル・イン。贅沢にも当初今井は二の足も踏みつつの一戦終へたタイミングで、調査依頼の電話が鳴る。ちやうど真理子が脱ぎ終るのに合はせるオープニング・クレジットも併せて、開巻は何気に完璧。そんなこんなで真理子が出向いたミサトニックな滝沢邸、依頼者は一人息子の慎司(白都)。資産家の父親が六十五にして何と二十歳の小娘と再婚、そんな女に遺産をカッ浚はれては堪らないので年下の義母・エミ(桃井)の浮気を暴き、離婚に持ち込んで欲しいといふのだ。そこに慎司の妻・ミドリ(吉行)が現れ、自分たちはテニスに行くの不自然な一点張りで、真理子に床に伏せる滝沢(港)を一時間押しつけ外出する。となると当然何だかんだで元気な滝沢にも跨つた上で、やつとこさ探偵らしい行動開始。真理子はエミをプリプリユッサユッサ尾行、無論、プリプリするのは尻で、ユッサユッサするのは乳だ。日本語の歴史の中で最も、無意味な一文を書いた気がする。真理子に尾けられてゐることに気付きながら、エミは平然とマコト(樹)と合流する。
 大御大・小林悟の1995年ピンク限定最終第十作、薔薇族がもう二本。要は脚本に五代暁子を迎へた―だけの―ことが最大の勝因といへるのか、これといつた中身は特にないにせよ一本の物語をつつがなく消化して下さつただけで、有難い有難い気持ちにすらなつてしまへるのは一体如何なる相談か。根本的に間違つてゐるやうに思へなくもないが、細かいことは気にするな、エモーションはエモーションだ。三本柱が超絶であるだけに、お話さへそれなりに整つてゐればひとまづ裸映画としては完成する。小林悟は絡みに際して仕出かすことはなく、柳田友貴のカメラも四次元に動かない。下手に放置すると作品世界を木端微塵に粉砕することもある冴島奈緒大先生のガッハッハ系の豪胆な自キャラも、これで案外大御大が御し得たのか単に濡れ場の比重の高さゆゑ羽目を外す間もなかつたのか、兎も角今作に関してはおとなしく親和する。冴島奈緒は男優部を総嘗めし、桃井良子は二戦目は真理子も引き込んでの二回、吉行由実は順当な夫婦生活の一度きりといふ、綺麗な黄金比は矢張り磐石。一件終着後、相変らず尾行の下手糞な真理子が相変らず男運に恵まれるエミと再会するオーラス。奮起を期した真理子は無駄話をしてゐる内に調査対象(誰だこれ?)を見失つてしまふものの、「ま、いいか」と元気に歩き出した背中にズンチャカ適当な劇伴が鳴り始める終幕は開巻に続き改めて完璧、頭と尻が堅いと映画は強い。


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