真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「若妻不倫 乱れてくねる」(1997/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:図書紀芳/照明:秋山和夫/助監督:井戸田秀行/音楽:OK企画/編集:㈲フィルムクラフト/脚本:水谷一二三/監督助手:片山圭太/撮影助手:高場秀行・田宮健彦/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:神無月蘭・工藤翔子・泉由紀子・久須美欽一・杉本まこと・神戸顕一)。謎の位置に配された脚本の水谷一二三は、小川和久(現:欽也)の変名。
 王冠開巻、赤バックにフレーム左から神無月蘭の横顔の影が倒れ、顔の天地が反対を向いた、久須美欽一の影が上から下りて来てタイトル・イン。照明が当たるとともに、カメラが引いてクレジット起動。タイトルバックは69、スタッフ先行の俳優部も全て通り過ぎた上で、正常位を一分強の暫し見せて監督クレジット。それだけ、感覚的には明らかに時機を失するほど引つ張るのであれば、いつそ完遂させてしまへばいいのに。
 摩天楼がカウンター右手でなく背中にあるゆゑ、何時もの仮称「摩天楼」ではなく、関根和美がよく使つてゐた印象が強い「美風」、バーテンダーは恐らく演出部。カメラマンの小山(久須美)が、夫が家を空けがちにつきテレクラで遊ぶ男を探す、人妻の麻紀(神無月)をヌードモデルとして口説く。頭の中身が髪の色よりも軽さうな麻紀が二つ返事で小山の誘ひに乗る一方、場面変つて沈痛な面持ちで書類を手にした泉由紀子が、「矢張りあいつ私達を騙してゐたのね」と飛び込んで来る。麻紀同様、小山の甘言に乗つたばかりに、顛末がてんで見えないが泡風呂に沈んだ真弓(泉)が、恋人で探偵の山内(杉本)に小山の身辺調査を依頼。報復の機運を高めつつ、四分半の大熱戦を最後まで完走する。劇伴がハーモニカが咽いでみたりなんかして、気持ち探偵物語調。
 配役残り神戸顕一が麻紀の配偶者で、家には限りなく土産と洗濯物を落としに来るに近い出張アディクト。風邪でも引いてゐたのか、大人しくアテレコしろよといふくらゐ声がガッサガサの工藤翔子は、小山の妻でモデルの山岸ユリ。二人で女を食ひ物にしてゐる格好の毒夫婦であるのだが、さういふ設定ならば、小川真実の方が一層適役に思へなくもない。
 気づくとex.DMMに残り弾も殆ど残つてゐない、小川和久1997年第二作。新作の配信が途轍もなく遅いのは、百歩譲らずとも津々浦々の小屋小屋との兼合ひもあれ、世辞にも積極的とはいひ難い風情を見るに、あまり売れないのかも知れないがもつと旧作も放り込んで欲しい。量産型娯楽映画は、手当り次第、遮二無二数こなしてからが本番。
 麻紀も入る小山のセカンドハウス兼ハウススタジオを、目出し帽マシーンと化した山内がガチ襲撃。ユリを菊まで散らせた挙句、パンティに捻じ込んだダイナマイト―ホントは発煙筒―で脅す形で、銀行口座から七八百万を強奪する。如何にもな焼き直しスメルは、単なる未見に過ぎないやうにも思へるものの今回は不発。小山とユリが吠え面をかく一方、真弓と山内は奪つた要は汚い金でバラ色の新生活、締めの濡れ場もこの二人で担ふ。ところで肝心要のヒロインはといふと、結局神顕との関係も生活に関する不満も一欠片たりとて変化のないまゝに、相変らずテレクラにうつゝを抜かす―テレクラ氏の声の主不明―のが、最早清々しいまでに底の抜けたラスト。今上御大の映画の底が抜けるのはこの期に驚くにも呆れるにも嘆くにも匙を遠投するにも値しないにせよ、裸映画的にはとりあへず安定、も微妙にしないんだな、これが。泉由紀子・工藤翔子と後ろにオッパイ部が控へてゐながら、顔面はデカい割にお胸は然程でもない主演女優が、如何せんノリきれない急所。誰かに似てゐる気が終始してゐたのは、最後の最後に漸く辿り着けた。この人、布袋寅泰と同じ顔をしてゐるんだ。


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