真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「尼寺の痴漢 便所を覗け!」(2000『痴漢と覗き 尼寺の便所』の2008年旧作改題版/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/助監督:加藤義一/スチール:佐藤初太郎/音楽:レインボー・サウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:島浩/照明助手:藤森玄一郎/録音:シネキャビン/効果:中村半次郎/現像:東映化学/出演:赤坂美月・林由美香・里見瑤子・杉本まこと・やまきよ・丘尚輝・都義一)。出演者中都義一は、本篇クレジットのみ。
 尼寺・大成山愛徳院の尼僧・浄光(赤坂)が小用を足すのを、寺男の佐竹達也(やまきよ)が開き戸下の隙間から覗き見る。いいぞいいぞ、開巻早速“痴漢と覗き”の覗きはクリアだ。村娘の春日未散(ミチル:里見瑤子)が病気の母のために愛徳院を訪れるが、未散の目的は、実は達也と情を交すことにあつた。その模様を目撃した浄光は、僧服の下に隠した熟れた肉体を思はず疼かせる。一方、借金返済に競馬の大穴を狙ふ田代利尋(杉本)は、浄光の女性器を拝むと御利益があるとかいふ、何処からさういふ発想が出て来たのか藪から棒な噂話を思ひ出し、愛徳院を目指す。林由美香は、田代の妻・静枝。巨大なお世話だが、そんな男とは、別れておしまひなさいといはざるを得ない。話戻して、大胆にといふか破天荒にも汲み取り式便所の浄化槽内に忍び込んだ田代は、勇猛果敢に目的を果たす。勇猛果敢にといふか、頭に、“蛮”もつかうが。そんな田代が漏らす感嘆、「ほう、これがあの尼さんの」、「まるで観音様だ」。下らないにもほどがあるのは、実は全然序の口。仏の道と己が未だ捨てきれぬ煩悩、加へて男達が自らに向ける淫欲の狭間で苦悩する浄光は、邪念を振り払はうと仏教図画を紐解きながらも、結局自慰に溺れてのける。流れろ、もつと低きに流れろ、人間なんて、所詮は四捨五入すれば全部水だ。低きに流れるのと、熱し易く冷め、もとい醒め易いのはそれは仕方のない道理なのだ。そこに大成山の高僧・照輝(丘)が現れる。師長僧侶の選挙を控へた照輝は、照輝も照輝で浄光女陰の噂を頼りに、浄光を手篭めにする。よくいへばアナーキーな展開に、もう大感傷仮面に変身でもしさうな気分だが、ところが、まだまだこれでも五合目。
 処女の陰毛をギャンブルのお守りにする類の、取つてつけられた破廉恥御利益の都市ならぬ山村伝説を軸に、一昨日から明後日へと滑り転がりつつある物語は、ここから画期的なハード・ランディングを撃ち抜く。さめざめと泣く浄光の前に、意欲以前に振るバジェットに欠く映像効果の施された、

 菩薩様登場。

 何処の宗教法人の製作したプロパガンダだよ、因みにトンチキな衣装の菩薩様は、赤坂美月の二役。菩薩様の啓示を受けた浄光が、悩める衆生を救済すべく自らの肉体を開放するとかいふラストは、ピンク映画だからだとかどうだとかいふ地平も遙か高くか低くに超えた、まるで不意に極楽浄土を眼前にしたかの如き、圧倒的な素晴らしさである。素晴らしいか、これ?何だかもう、言葉を探す意欲も十万億土の彼方に消え失せた。傑出してゐるなどとは腕を極められてもいへぬが、これをケッ作と呼ばずして何と呼ぶ。何でもいいよ、それをいつては実も蓋もない。
 足かけ十二年、都合十三作製作された、連作といへるものやら否かは甚だ疑問ながら一応一連の“痴漢と覗き”シリーズの、今作はひとまづの最終作となる。といふ訳で、わざわざ酔狂にも休む予定を翻し足を伸ばしたものであるが、例によつて、詰まるところ今作にも覗きは兎も角、狭義の痴漢は登場しない。

 未だ、今ひとつ掴みかねる存在ではある都義一はオーラス、結婚祈願に愛徳院を参拝する竹内。参拝者の願ひ事の記された絵馬は、あらうことか浄光が用を足す手洗ひの個室内に奉納―最早奉納といへるのか、それは―され、竹内はといふと、浄化槽の中といふかあるいは下から、放たれる尿越しに浄光の観音様を、「南無女体観音菩薩様」と拝む。晴れやかな馬鹿馬鹿しさに対しては、ツッコンだら負けだとかいふのも通り越し、いつそストレートな清々しささへ覚えてしまひかねないが、そこはさて措き。よくよく冷静に考へてみると、田代の場合は、浄光の意は無視し明確に覗いてゐたものであるので仕方もないとして、菩薩様の意も受けたこの場合、要は実は別に放尿は要らなくね?そもそも、何をよくよく冷静に考へてゐるのか俺は、といふ気も我に返ればしないでもないが。


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