真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢と覗き むちむちパンティ」(1992『痴漢と覗き 体育会系女子寮』の2006年旧作改題版/製作:新映企画株式会社/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:亀井よし子/企画:伊能竜/撮影:千葉幸男/照明:渡波洋行/編集:酒井編集室/音楽:レインボー・サウンド/助監督:高田宝重/撮影助手:片山浩/照明助手:石井克彦/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/効果:時田グループ/出演:泰葉《やすは》・英悠奈・月丘雪乃・愛川みりあ・石神一・神坂広志・久須美欽一)。オーラスに、本クレ・ポスターともに載らないもう一名が登場、後述する。
 “痴漢と覗き”とタイトルに冠されてゐるだけで、各作内容的には全く関係が―多分―ない一連の“痴漢と覗き”シリーズは、第一作「ハードペッティング 痴漢と覗き」(1989/脚本:亀井よし子/勿論未見)から現時点に於ける最終作「痴漢と覗き 尼寺の便所」(2000/脚本:岡輝男)まで、都合十三作が製作されてゐる。少なくとも後期シリーズに於いては覗きは兎も角痴漢は出て来ないことの多い、看板に偽りのありがちな連作ではあるものの、第十作目に当たる今作には、痴漢も覗きもきちんと出て来る、何がきちんとしてゐるのか。
 橘女子大学寮、鬼コーチ・神田典子(英)の指導の下、いまひとつどころでなく何の競技なのだか判らない部活の練習に杉崎アンナ(泰葉)、山桂(月丘)が汗を流す。わざわざこれ見よがしにノーブラ運動着で、霧でも吹いたかのやうにクッキリと透け上がつた乳首を押さへる律儀さは評価したい、俺は何をいつてゐやがるのだか。禁酒禁煙禁セックスの厳しい規律の中、奥手の桂はまだしも、アンナはすつかり欲求不満を持て余してゐた。そんな女子寮を木の上から覗く渡辺功(久須美)と、遅れて現れた、アラレちやんメガネにパーマを当てた前髪を顔の左半分だけ下ろした、未だ80年代を色濃く引き摺るルックスの男子大学生・浜田満(神坂)。樹上の覗きスポットは、元々浜田が見つけたものではあつたが、更に遠方から望遠鏡で覗いてゐた渡辺がそれを発見し、便乗して来たのだつた。ある日山中をジョギングしてゐた渡辺は、森の中に消える典子を目撃する。部員にはセックスを禁じておきながら、典子は森の中で鈴木時男(石神一/背丈の普通な爆笑問題の田中、と覚えた)と逢引きしてゐたのだ。そこで渡辺は、夜な夜な典子が鈴木と会ふために寮を空ける隙に、浜田と寮に忍び込む計画を企てる。
 今作の白眉、寮に忍び込んだ渡辺と浜田は桂がシャワーを浴びてゐる隙に、オナニーに狂ふアンナの部屋に侵入。ベッドの際にまで詰めた渡辺と浜田がかぶりつきで固唾を呑んでゐるといふのに、アンナがそれに気付づない底の抜けたカットも十三分にそれもそれでどうかとは思ふが、やがてアンナに気づかれてしまふや、久須美欽一がピンク映画の歴史に残る、かも知れない一世一代の名台詞を決める、「私達は、女子寮専門のボランティアをしてゐる者です」。わはははは!何だそれwwwwwwwwww!誰なんだ亀井よし子、天才に違ひない。加へて、肌も隠さうともせず「何をして呉れるの?」と尋ねるアンナに対し、渡辺は胸でも叩く要領で股間を大きく誇示し、「ナンでもします♪」。こんな台詞を決め得るのも久須美欽一ならではであらうし、斯くもいい加減な天衣無縫なシークエンスをそれはそれとして定着させ得るのも、新田栄ならではであらう。マンガ以下チリ紙の如き一幕とはいへども、だからといつて馬鹿にする者共に当サイトは問ひたい。この件を、果たして山田洋二は撮り得るか、ゴダールならば撮り得るのか。撮り得なくても全く一切一欠片たりとて、困りはしまいのはこの際ひとまづさて措く。
 配役残り愛川みりあは、自宅生でアンナにバイブを差し入れし、寮には後から合流する形の坂田伸子。他に何とも表現のしやうがない、最短距離でブタマンのやうな面をした女で、昔も今と変らぬ、エクセスライクを爆裂させる。いふまでもなく、させて下さらなくて一向構はない。
 伸子が寮に合流した夜、アンナは例によつて典子が田中との逢瀬に外出する正しく鬼のゐぬ間に、渡辺と浜田を寮に招き入れる手筈を整へる。ところが、浜田一人しかやつて来ない上に、浜田が伸子相手に文字通り孤軍奮闘してゐるところに、田中と会へなかつた典子が思ひのほか早く帰つて来る。セクロスしてゐる現場を目撃され、伸子は退部させられさうになる。とそこに、のこのこ遅れて登場した渡辺は、何故だかヒーロー然と「俺に任せろ」と皆に宣言し、典子の寝込みを襲撃。田中との逢引きの件もちらつかせると、禁セックスを解かせ万事を丸く収める。終ひまで書いてしまつたが、お話の全体があまりに下らないゆゑ見過ごされかねないところでもあるのだが、起承転結の構成自体は微妙にしつかりしてゐる。かういふ辺りも、昔と今とで新田栄は変らない。
 ラスト・ショットはアンナは渡辺と、典子は田中と、そして何時の間にかすつかり性に目覚めた桂は浜田と。それぞれお盛んな夜に励む女子寮を、「こりやあ、凄え」と冒頭樹上の覗きスポットから覗く、新たなる覗きの姿が。それが誰かと問ふならば、高田宝重である。

 さて、今作の脚本は亀井よし子。脚本が岡輝男以外の新田栄映画を観るといふのも、余程遡つた旧作改題以外にはさうさうなくもある訳だが、映画自体の出来は驚くほど変り映えしない点に関しては、最早清々しくすらある。ところでこの亀井よし子なる御仁、もしかしてこの人と同一人物


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