真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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な行
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2024年03月20日
「
⦅超⦆淫力絶頂女
」(昭和54/製作:幻児プロダクション作品 昭54.7/配給:ミリオンフィルム/監督:中村幻児/脚本:水越啓二/撮影:久我剛/照明:森久保雪一/助監督:岡孝通/編集:竹村編集室/音楽:山崎憲男/記録:平侑子/演出助手:広木隆一/撮影助手:倉本和一/照明助手:西池彰/効果:ムービー・エイジ/録音:ニューメグロスタジオ/現像:ハイラボセンター/出演:日野繭子・笹木ルミ・青山涼子・野上正義・吉田純・竜谷誠・水瀬勇・土屋信二・山口正・楠正通)。
御馬様の発走で開巻、双眼鏡を覗くa.k.a.喜多川拓郎を一拍挿む。同棲相手でスーパー店員のサチコ(日野)を伴ひ、今日も今日とて競馬に負けた工員の長尾ヒロシ(楠)は、さりとて性懲りもなく、あるいは臆面もなく。最終レースを前に、サチコを女子手洗に連れ込んだヒロシが、「これでツキが呼べるんだ」とか無理矢理及ぶ後背立位にタイトル・イン、往時の便所が汚い。そのまゝタイトルバックを賄つての佳境、サチコは競走風景のカットバックに、劇伴もキラキラ鳴らす正体不明の予兆に囚はれる。結局12レースも外したヒロシに対し、「何となく1-5がいゝと思つたのよね」、漠然と馬券を買つてゐたサチコが的中。後日、5レースに2-8が入るとのサチコが再び得た予兆に従ひ、ヒロシは一万突つ込む可処分所得的には十分大博打。幸か不幸か、諸経費サッ引いて二十万四千四百円の純利益を得たヒロシは、忽ち調子に乗る。
配役残り、組んず解れつのキャットファイトで飛び込んで来る笹木ルミと青山涼子(ex.青山涼子で愛染恭子)は、亭主を寝取られたスナック(屋号不詳)のママ・ユミと、寝取つたホステス・ミドリ。野上正義が、劇中仕事をしてゐる風の一切窺へない、よしんば籍を入れてゐたにせよユミの多分ヒモ。後述する、役柄の全く読めなかつた読める訳がない、吉田純からは一度だけタケ?と呼ばれる。こゝからが、登場する頭数と、クレジット俳優部の人数が五つも合はない壮絶な藪の中。ヒロシの同僚・木村と、嬉しさうな顔をするのは無理な、薄い給料袋を手渡す社長。ユミの店に興味を示した、サチコの願望を叶へようと秘かに物件を探すヒロシに、居抜きを紹介する和田不動産の男がまづ不明。売店舗代四百万を狙ふ、軍資金にヒロシが三十万借りる―正確には借りさせられる―サラ金の、若い衆は水瀬勇で竜谷誠が社長、そこはどうにかなる。スナックカウンター席のベレー帽と、サチコの同僚とスーパーの客はノンクレで別に事済むとして、改めて吉田純が、棹に埋め込んだタケ(仮名)の真珠に惹かれたヒロシに零式鉄球、し損ねる真珠師。これで腕はよかつたらしい、ものの、今や完全に酒浸りのへべれけ、妙にリアルに映るのは気の所為かいな。どの映画が最終作となるのかは知らないが、吉田純にとつてこの頃がキャリアの最後期。閑話休題、紹介したタケも呆れる元名人から派手に仕出かされたヒロシに、苦言を呈しながらも手術して呉れる泌尿器科の中山先生と、ヒロシが何処からか連れて来る、謎の買春紳士の二人がまた判らん。整理すると辿り着けないのが順に木村と社長に和田(仮名)、中山先生と謎紳士の―三人無視してなほ―計五名。ところが特定不能のクレジット俳優部が、土屋信二と山口正の二人分しか残らないんだな、これが。この中で、jmdb検索してみたところ土屋信二には美術部の項目が出て来る、昭和43年に、何の参考にもならぬ。かたや五名中、女優部の恩恵に与るのは謎紳士たゞ一人、その他台詞の多さで比較的大きな役だと中山先生。土台この辺り、別作で邂逅するラックに頼るほかない出たとこ勝負の運任せ。
封切られたのが九月初頭ゆゑ、七月撮影といふのは末と思しき、中村幻児昭和54年第十作。以前に軽く首を傾げた、
山崎箱夫なる人を喰つた名義
に関しては、単に山崎憲男の他愛ない戯れであるまいかといふ気もしなくはない。
ガミさん―と堺勝朗―が力の主となる「
セミドキュメント オカルトSEX
」(昭和49/監督・脚本:山本晋也)の“ポルノパシー”同様、今回は“超淫力”と銘打つた、要は腰から下で司る超能力を題材とした一作。ESP乃至PKの発動条件に、濡れ場を必須とする点が実に裸映画的で麗しい。尤も、所詮自堕落なギャンブル狂である上に、ユミから膳を据ゑられるやホイホイ浮気しようとする。端的にクソ男でしかないヒロシに、エクストリームに可憐なサチコが健気に添ひ遂げる。感情移入に甚だ難い類型的な物語に、匙を投げるのも億劫になりかね、なかつたところが。パチンコ屋の表にて、タケに―ユミと寝かけた―ヒロシが捕獲。すは痛い目に遭ふのかと、小躍りしてゐたら。ユミとタケが致すのを、タケの希望でヒロシが見させられる。木に竹を接ぐのも大概にせえよ、かと思はせた素頓狂な一幕を起点に。一旦失効した超淫力、真珠、見られての情事。そして、そもそも端からキナ臭かつた、ドラゴンバレー金融(仮称)から貸しつけられた三十万。気づくと重層的に張り巡らされてゐた、布石の数々が見事に収斂。絶体絶命の危機を豪快に蹴散らかす、鮮やかな一発大逆転劇への道筋は整つた整へてみせた!これは結構な名作にお目にかゝつたのかと、思ひきやー。娯楽映画に殉ずるもとい準ずる気さへあれば幾らでも力技で捻じ込めた、にも関らず大団円を事もなげに放棄。虚無と紙一重のストイシズム吹き荒ぶ、全てを打ち捨てる途轍もなく乾いた結末を、最早アナーキーなほどの、昭和の大雑把さよ。令和の目には治安の崩壊した騒乱状態とすら映る、レース後の競馬場に底の抜けた量ゴミの舞ふ、盛大な紙吹雪のラスト・カットが徹底的な突き放しぶりで締め括る。
備忘録<スケコマすばかりの、ヒロシの「地獄だなあ」から間髪入れず紙吹雪エンド
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