11月3日(休)
交通の便を考えると、白浜と熊野三山を巡れば三日間は当然の感ですが、せっかくここまで来たからには、和歌山の名湯を訪れないわけにはいきません。
若いころ、信州のスキー民宿で、小さいお風呂に冷えて疲れ切った身体を沈めている時の快感。
やがて、「スキーへ行くなら温泉のスキー場でないと」という指向から、「雪がなくても、とにかく温泉」というふうに気持ちが変化して、いつの頃からか、すっかり温泉好きになってしまいました。
有馬、道後、湯田、別府、雲仙・・・と西日本にもたくさんの有名な温泉がありますが、温泉通が好む秘湯とか一軒宿とかになると、東北、北関東、信越、飛騨・・・と、圧倒的に東日本が多いのです。
そんな中、温泉に夢中になった30代の頃から、行ってみたいと思っていた西日本の温泉といえば、岡山の美作三湯(湯原・奥津・湯郷)と、和歌山の山あいにある川湯、湯の峰の二つの温泉でした。
この二つの湯では、どちらかというと、小栗判官の伝説が残る湯の峰温泉のほうがテレビ番組などでよく紹介されて有名になっています。
昔、地獄から現世に餓鬼阿弥の姿で送り返された小栗判官が元の姿に戻るために浸かったという「つぼ湯」が有名です。若い頃は、変わった温泉はなんでも興味津々だったので、湯の峰温泉にはぜひともと思っていましたが、歳を取ってからは、川の脇の小屋の中にある小さなつぼ湯には、わざわざ入るまでもないかと思うようになって、今回は、川湯温泉に宿をとりました。
その川湯温泉。熊野本宮大社から車で数分、熊野川の支流の大塔川の畔にあります。木造の温泉宿もありますが、最近は、テーブル席の食事のほうが気楽と思うようになって、鉄筋の大きな旅館にしました。
8階の部屋からの、
大塔川沿いの温泉の眺め
河原を掘ると露天風呂になるとかですが、
下に見えるのは宿専用の風呂
部屋から丸見えですが、腰にタオルを巻いてよしずの下に行けば問題なし。女性には風呂専用の浴衣があります。
川の少し下流に、水量が少なくなる冬場、ブルドーザーで川を堰止めて巨大な露天風呂ができるそうです。「仙人風呂」と言って、その写真も見たことがありますが、今回は10月下旬ということで、時期が合いませんでした。
川湯名物の風呂には入れませんでしたが、対岸の深い緑の森とゆるやかな川の流れを前にして浸かる湯は、まさに仙境に入ったかのような快感。温泉の魅力をたっぷりと味わうことができました。
秋の香も溶けて熊野の河原の湯 弁人
本当に気持ちの良い温泉だったので、朝食後もゆったりと湯に浸かって、チェックアウト時間までゆっくり過ごしました。
あとは、宿を出て新宮駅へ戻ってレンタカーを返すだけという気分だったのですが、もう一つの湯の峰温泉もそんなに遠くはないので、温泉の雰囲気だけでも見ておきたいと、ちょっと回り道をして立ち寄ってみました。
小栗判官ゆかりのお寺の脇に
公衆浴場があります
手前の川の少し上流に
「つぼ湯」がありました
河原には野菜もゆでられる湯槽。
玉子がいくつか
山あいの湯にひとひらの落ち葉かな 弁人
ちょっと湯に浸かって、ゆで玉子でも頬張る余裕があればよかったのですが、時間がなく、温泉の雰囲気だけを味わって新宮駅へ向かいました。
ということで、二泊三日の旅も、あとは帰途の列車に乗るだけとなりました。とはいえ、まだ南紀一周は終わっていません。もしかしたら、まだ半分なのかもしれません。これから乗る特急、名古屋まで4時間近くかかるのですから。
新宮駅12時44分発
「ワイドビュー南紀」
紀勢本線の東半分は電化されていないのでディーゼル特急です。列車は、発車してまもなく熊野川を渡りますが、
橋梁に入る所から
架線がなくなりました
列車は、尾鷲市の先、紀伊長島辺りまでの1時間余りは海沿いを進みますが、そのあとは山間部に入ります。さらに1時間ほどで、伊勢から来る参宮線と合流する多気駅に到着します。
ここから北へ、松阪、津と大きな町を通って行くので、そろそろ電化区間になるのではと思っていましたが、松阪に来ても津に来ても架線はなく単線のままでした。隣にはJRとは対照的に、複線で頻繁に特急電車が走っている近鉄の線路が平行していて、紀伊半島の東岸、伊勢方面はどう見ても近鉄の独壇場という感じです。
津駅を出ると、特急「南紀」は亀山へ向かう紀勢本線と別れて、鈴鹿を通って関西本線の河原田駅まで、第三セクターの伊勢鉄道の線路を通ります。この伊勢鉄道も電化されていませんが、途中から複線になっていました。
複線化されているのに
架線のない鉄路
単線でも電化されている路線はいくらでもありそうですが、その逆はあまり記憶にありません。もしかしたら珍しいのではないでしょうか、どうでしょう。
秋草の揺れて気動車すれ違ひ 弁人
河原田から関西本線に入ると、さすがに名古屋までは電化されていましたが、四日市近辺を除いて、基本的には単線区間がほとんどなのです。この辺りは、今まで近鉄しか乗ったことがなかったので知らなかったのですが、名古屋という大都会の駅を発着する「本線」と呼ばれる路線なのに、すれ違い用の信号場があったりするのには、ちょっとびっくりしました。
さて、南紀から紀伊半島の東半分を巡った特急「ワイドビュー南紀」は16時10分に名古屋駅に入線しました。
ここで紀伊半島一周の旅が終わり、新幹線に乗り換えて西明石に戻りましたが、改めて新幹線の速いことに感心してしまいました。まったく、明石と逗子との往復の時に退屈してしまう時があったりするのですが、反省しなければなりません。
交通の便を考えると、白浜と熊野三山を巡れば三日間は当然の感ですが、せっかくここまで来たからには、和歌山の名湯を訪れないわけにはいきません。
若いころ、信州のスキー民宿で、小さいお風呂に冷えて疲れ切った身体を沈めている時の快感。
やがて、「スキーへ行くなら温泉のスキー場でないと」という指向から、「雪がなくても、とにかく温泉」というふうに気持ちが変化して、いつの頃からか、すっかり温泉好きになってしまいました。
有馬、道後、湯田、別府、雲仙・・・と西日本にもたくさんの有名な温泉がありますが、温泉通が好む秘湯とか一軒宿とかになると、東北、北関東、信越、飛騨・・・と、圧倒的に東日本が多いのです。
そんな中、温泉に夢中になった30代の頃から、行ってみたいと思っていた西日本の温泉といえば、岡山の美作三湯(湯原・奥津・湯郷)と、和歌山の山あいにある川湯、湯の峰の二つの温泉でした。
この二つの湯では、どちらかというと、小栗判官の伝説が残る湯の峰温泉のほうがテレビ番組などでよく紹介されて有名になっています。
昔、地獄から現世に餓鬼阿弥の姿で送り返された小栗判官が元の姿に戻るために浸かったという「つぼ湯」が有名です。若い頃は、変わった温泉はなんでも興味津々だったので、湯の峰温泉にはぜひともと思っていましたが、歳を取ってからは、川の脇の小屋の中にある小さなつぼ湯には、わざわざ入るまでもないかと思うようになって、今回は、川湯温泉に宿をとりました。
その川湯温泉。熊野本宮大社から車で数分、熊野川の支流の大塔川の畔にあります。木造の温泉宿もありますが、最近は、テーブル席の食事のほうが気楽と思うようになって、鉄筋の大きな旅館にしました。
8階の部屋からの、
大塔川沿いの温泉の眺め
河原を掘ると露天風呂になるとかですが、
下に見えるのは宿専用の風呂
部屋から丸見えですが、腰にタオルを巻いてよしずの下に行けば問題なし。女性には風呂専用の浴衣があります。
川の少し下流に、水量が少なくなる冬場、ブルドーザーで川を堰止めて巨大な露天風呂ができるそうです。「仙人風呂」と言って、その写真も見たことがありますが、今回は10月下旬ということで、時期が合いませんでした。
川湯名物の風呂には入れませんでしたが、対岸の深い緑の森とゆるやかな川の流れを前にして浸かる湯は、まさに仙境に入ったかのような快感。温泉の魅力をたっぷりと味わうことができました。
秋の香も溶けて熊野の河原の湯 弁人
本当に気持ちの良い温泉だったので、朝食後もゆったりと湯に浸かって、チェックアウト時間までゆっくり過ごしました。
あとは、宿を出て新宮駅へ戻ってレンタカーを返すだけという気分だったのですが、もう一つの湯の峰温泉もそんなに遠くはないので、温泉の雰囲気だけでも見ておきたいと、ちょっと回り道をして立ち寄ってみました。
小栗判官ゆかりのお寺の脇に
公衆浴場があります
手前の川の少し上流に
「つぼ湯」がありました
河原には野菜もゆでられる湯槽。
玉子がいくつか
山あいの湯にひとひらの落ち葉かな 弁人
ちょっと湯に浸かって、ゆで玉子でも頬張る余裕があればよかったのですが、時間がなく、温泉の雰囲気だけを味わって新宮駅へ向かいました。
ということで、二泊三日の旅も、あとは帰途の列車に乗るだけとなりました。とはいえ、まだ南紀一周は終わっていません。もしかしたら、まだ半分なのかもしれません。これから乗る特急、名古屋まで4時間近くかかるのですから。
新宮駅12時44分発
「ワイドビュー南紀」
紀勢本線の東半分は電化されていないのでディーゼル特急です。列車は、発車してまもなく熊野川を渡りますが、
橋梁に入る所から
架線がなくなりました
列車は、尾鷲市の先、紀伊長島辺りまでの1時間余りは海沿いを進みますが、そのあとは山間部に入ります。さらに1時間ほどで、伊勢から来る参宮線と合流する多気駅に到着します。
ここから北へ、松阪、津と大きな町を通って行くので、そろそろ電化区間になるのではと思っていましたが、松阪に来ても津に来ても架線はなく単線のままでした。隣にはJRとは対照的に、複線で頻繁に特急電車が走っている近鉄の線路が平行していて、紀伊半島の東岸、伊勢方面はどう見ても近鉄の独壇場という感じです。
津駅を出ると、特急「南紀」は亀山へ向かう紀勢本線と別れて、鈴鹿を通って関西本線の河原田駅まで、第三セクターの伊勢鉄道の線路を通ります。この伊勢鉄道も電化されていませんが、途中から複線になっていました。
複線化されているのに
架線のない鉄路
単線でも電化されている路線はいくらでもありそうですが、その逆はあまり記憶にありません。もしかしたら珍しいのではないでしょうか、どうでしょう。
秋草の揺れて気動車すれ違ひ 弁人
河原田から関西本線に入ると、さすがに名古屋までは電化されていましたが、四日市近辺を除いて、基本的には単線区間がほとんどなのです。この辺りは、今まで近鉄しか乗ったことがなかったので知らなかったのですが、名古屋という大都会の駅を発着する「本線」と呼ばれる路線なのに、すれ違い用の信号場があったりするのには、ちょっとびっくりしました。
さて、南紀から紀伊半島の東半分を巡った特急「ワイドビュー南紀」は16時10分に名古屋駅に入線しました。
ここで紀伊半島一周の旅が終わり、新幹線に乗り換えて西明石に戻りましたが、改めて新幹線の速いことに感心してしまいました。まったく、明石と逗子との往復の時に退屈してしまう時があったりするのですが、反省しなければなりません。