4月5日(月)
関西で暮らしていてうれしいことの一つは、気の向いた時にいつでも甲子園球場に行けることです。
逗子にいると、このカードは球場で直に見たいと思っても、行くのには半日は優にかかるし、宿泊の手配も必要です。
それにしても、今年の春は天候不順が並大抵ではありませんでした。二月の半ばに沖縄から戻ってから、春だなあと思われる麗らかな日和には、全く、いや、数えるほどしか出合いませんでした。
今年のセンバツ高校野球にしても、開幕の日は黄砂がひどく、春らしい陽気の中で行われたのは、二日目の3月22日と決勝戦の4月3日しかなかったように思います。
3月22日に、いったん帰っていた逗子から明石へ戻りましたが、翌日からは雨まじりの寒い日が続き、寒空の下での試合をテレビで眺めてイライラしているだけでした。あげくの果てに、20何年振りかの二日連続雨天順延ということにもなって、この時期が来るのを楽しみにしていた明石暮らしだったのに、ちょっとばかり気が滅入ってしまいました。
3月26日。気温は低かったものの珍しく朝から日が差していました。この日は、興南の島袋投手、岡山関西(カンゼイ)の堅田投手、神戸国際の岡本投手が登場する日です。神戸国際の相手の帝京も強豪で好投手3人を擁しています。
ということで、今春初、甲子園の銀傘の下に。
第一試合。興南はノーアウトのランナーを確実に進め着実に加点、終盤の追加点も効果的。投げては島袋投手が14奪三振で4-1で快勝。関西は5回に2塁打と3本のヒットを放つも1点しか得点できずに終わりました。
次の試合は
神戸国際が序盤の2回・3回ともに2アウト2塁からタイムリーが出て優位かと思いきや、後半に帝京に逆転されあっさり敗退という結果に。
センバツは、「負けても夏がある」という気持ちがあるのか、敗者の表情の中に、どこかさばさばした雰囲気が見えてしまいます。
第一試合、関西の5回の攻撃、先頭バッターが長打を放ちましたが、2点ビハインドの状況で3塁まで走ってアウト。
次の試合の神戸国際も、岡本投手が7回2アウトまで零封に抑えていたのに、投手交代であっさり失点、次の回には逆転を許しました。
敗退した両校とも、のびのびやろうという雰囲気がありましたが、ベンチにも選手にも「絶対に勝とう、勝ってやる」という執念が見えませんでした。
もっとも、気合いが入り過ぎて悔しさのあまり暴言を吐き、墓穴を掘った情けない監督が一人いましたが、これは論外。
三日後の29日は、広陵の有原投手と中京の森本投手に注目。
1-0、2-1と二試合とも1点差の好試合になりました。
ともに緊迫した投手戦の様相ですが、バッターのボールに食らいついて行く気迫がもう一つの感、豪腕投手の投げ合いという印象ではありませんでした。
続く第3試合は終盤までは写真のとおり
島袋投手擁する今回の興南はなかなか強い。この写真のシャッターを切った直後の8回の裏に、タイムリーのあと2ランホームランが出て智弁和歌山を突き放し7-2で快勝。
翌々日の31日、もしかしたら事実上の決勝戦かもしれないと思って、準々決勝の興南-帝京戦に駆けつけました。結果は、興南の島袋が5安打完封。攻めても7回に2アウトから足を絡めて4連続安打で3点取るなど5-0で文句なしの勝利でした。
ところで、この試合はどこかすがすがしい気分で観戦していました。
下の写真は、帝京の攻撃、ランナー1塁の場面です。
両チーム選手のストッキングに注目
今や、プロ野球では、ほとんどの選手がストッキングを見せない昔のことばで言えばトレパン姿です。イチローをはじめとする何人かの俊足系の選手がクラシックスタイルとか言ってストッキングを見せていますが、そのストッキングはローカットと言って、白いアンダーストッキングを隠す履きかたです。昔はそうではなかった。ハイカットと言って、脛の下のほう、後ろはふくらはぎの下半分からくるぶしの上部にかけてのあたり、この部分はアンダーストッキングを見せていたのです。
野球着に桜の下にて着替へしや 弁人
高校野球では何か指示があるのかどうか、いわゆるトレパン姿は皆無ですが、今や、ほとんどのチームがクラシックスタイルに近いローカットストッキングです。そんな中で、(これは去年の夏の大会で気付いたのですが、)帝京高校は昔ながらのハイカットを守っている。そしてこの春、もう一校アンダーストッキングを見せているチームがありました。それが興南高校です。
ストッキングの履きかたに機能的な違いがあるとすれば、野球関係者はファンにそういうことも伝えてほしいと思っています。「そうか、それであの選手はこういうスタイルなのだな」と思いながら観戦するのも一興ということです。しかし、そういう話を耳にしないということは、やはり単なるファッションなのでしょう。だとすれば、それぞれの好みということになりますから、帝京や興南のスタイルが爽やかだと思うのも私の勝手です。
そんなこともあって、センバツが始まる前から、今年は帝京の試合を中心に見に行きたいと思っていたわけです。
もう一つ、帝京の応援団の少なさ
優勝候補の一角。準々決勝です。でもですよ、華やかな応援もいいですが、やはり野球はプレーの中身が問題です。いいなあ、こういう風景。
私は甲子園といえども、学校単位の応援はこの程度で十分だと思っているのです。さらにこの応援席の回りが、純粋に野球を観戦しに来ている客でいっぱいになれば申し分ないのですが。
ベスト8に入った北照高校の応援席も
北海道代表ですから応援に来るのも大変でしょう。でも、このくらいの人が駆けつけてくれれば十分にありがたいのではないでしょうか。
決勝戦の興南高校側のアルプススタンド
これ、全部が興南高校独自の応援団ではないでしょう。沖縄出身の人も、そうではないが興南を応援しに来たという人もいるはずです。もしかしたら、内野席がいっぱいでアルプスに来て、成り行きで沖縄勢を応援しているという人もいるかもしれません。
さて、その決勝戦。正直なところ私は興南を応援していました。ここまでほぼ完璧に勝ち進んで来ていましたから。対する日大三校も強い勝ち方で決勝まで進出して来ましたが、その前の準決勝が泥仕合ならぬ雨中の泥試合となり、命拾いをした感が否めませんでしたし。
閑話休題、大会を通じて「所詮センバツなのかぁ」と思ったりもしていたのですが、今年の決勝戦、そんなものを全て吹き飛ばしてくれるような素晴らしい試合になりました。両チームとも「ここは負けられない」という気迫に満ちていて、エラーも勝ちたいという思い入れから生まれたと思わせるものばかり、結果は10-5で興南高校が延長戦を制しましたが、試合開始から延長12回の表に5点入ったあとの最後の攻撃までずっと緊迫感が漂っていました。「あっぱれー!」
あれは何年前のことになるのでしょうか、同じような展開の決勝戦がありました。原辰徳が東海大相模の主砲だった時、春のセンバツの決勝戦で高知高校と相まみえ、延長10何回かの表に、高知の杉村(現ベイスターズコーチ)の決勝打(原三塁手の前でのガッツポーズが思い出されるので、たぶん3塁打だったような・・・)が出て、今回と同じ10-5のスコアで高知に軍配が上がった試合です。
そんな昔の思い出を彷彿とさせてくれる好ゲームに、桜の写真を撮りに行く時間も忘れて見入ってしまいました。
思ひ出も桜色なり甲子園 弁人