閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

同じ空の下

2012-11-04 14:34:27 | 日々


たとえば、同じ雲、同じ虹を一緒に見ることができるのは
どれくらいの範囲だろうか。
ほら、いま、あの雲がきれいだよ・・と教えてあげられる人は
何人くらいいるだろうか。

人との距離は3通りある。
ふつうに声をかけて届く人と、
電話やメールや手紙の届く人と、
何もとどかない人。
それは必ずしも地理的な距離と一致するとは限らない。


 

『嵐が丘』をまた読み始めた。
「1801年」という年号から始まる。
日本でいえば江戸時代の話である。
とにかく、この時代の人はよく歩く。
なにしろ馬に乗る以外は歩くしかない。
電話も郵便もないのだから、直接出向いて行くしかないのである。
スラシュクロス屋敷のロックウッドは、雪の降りそうな寒々とした午後、
「気軽な食後の散歩」の感覚で4マイル歩いてヒースクリフを訪ねる。
いちばん近い「お隣」が彼の家なのだ。
もっとすごいのはアーンショー氏で、リバプールまで片道60マイルを
徒歩で3日で往復している。
1マイルが約1.6キロメートルだから、60マイルは96キロメートル。
熱海か小田原くらいから東京まで歩いて行って帰ったことになる。
マイルやポンドの換算はおっくうでつい飛ばして読んでいたが、
あらためて考えてみると大変な旅だ。
この人、リバプールに何の用事があったのかな。
馬を何頭も持っているのに、なぜ乗って行かなかったんだろう。
読み古した小説だけれど、読むたびにまた違うところに目がとまる。
面白い。
読んでしまったら『ジェーン・エア』もまた読もうっと。

 

 

いつもの空、いつもの場所。
雲釣り師、まだ飽きる様子がない。

 

 

たまにはこんな複雑雲も釣れるし。

 

 

こんな光もすくえるし。


 

わあ、右から何か変なのが来たよ~。
と騒いでいるうちに・・

 

 

どっしりとひろがって居座ってしまったのでした。

 

 

本日のお持ち帰り品。

赤く色づいたカラスウリ。
BSアンテナのケーブルにいくつもぶらさがっている。
後ろには黄色い実のピラカンサの木。

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に出てくる「烏瓜の燈火」は
「青いあかり」と書かれている。
子どもの頃は、青=ブルーと思って疑わずに読んでいた。
ブルーのカラスウリが存在しても不思議ではない世界ではあるけれど、
この「青」は、おそらくグリーンの意味だろう。
夏の夜の話だから、カラスウリの実はまだ熟していない。
未熟な緑の実をくりぬき、かぼちゃランタンのように内側から照らせば、
光が透けてあざやかな緑のあかりになることが想像できる。

しかし、その想像と、実物のカラスウリが、いまひとつ結びつかない。
これでは小さすぎるのだ。
バースデーケーキ用のろうそくでも入らない。
本当に火をともすなら、もっと実の大きい「キカラスウリ」でないと。
(それとも、そういう風習そのものが、賢治の創作なのだろうか?)
キカラスウリの実が手に入れば、一度ためしてみたいけれど、
このあたりで自生しているのは見かけたことがない。
苗を取り寄せることは可能だが、これ以上強力なつる植物をふやすと、
そこらじゅう大変なことになってしまう。

 

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