閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

聞きなし

2008-05-17 09:17:36 | 日々

川筋でオオルリが鳴いている。
少しずつ場所を移動しながら、はっきりした声で鳴いている。
木々を見上げても眩しいだけで、姿はいっこうに見えない。
オオルリのオスは名前のとおり青い鳥なのだが、
この青は光の加減でほとんど黒に見えることが多いし、
たいていは逆光でシルエットしか見せてくれない。

鳥のさえずりを日本語におきかえて表現するのを
「聞きなし」といいます。
ウグイスの「法~法華経」とか、
ツバメの「土食って虫食って口渋~い」とか、
ホトトギスの「特許許可局」「てっぺんかけたか」とか。
そう思って聞けばだいたいそのように聞こえます。

ヒバリは「日一分、日一分、利ィ取る、利ィ取る」
お日様に金を貸して催促しているという昔話つき。
メジロは「長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛」
早口言葉で3回くらい言うと雰囲気が出ます。

コジュケイは大声で「ちょっと来い! ちょっと来い!」
これは初めて聞いてすぐコジュケイとわかりました。
(いばって呼びつける奴の顔を見てやろうと行ってみたら、
やぶの中でたいそう難儀しましたが…)
「ピープルプレイ!」という英語版もあります。
プレイは「遊べ」じゃなくて「祈れ」のほうだとか。
うーん、あれはLじゃなくてRの発音なのか。
わたしの耳では聞き分けられません。

ホオジロは「一筆啓上仕り候」が有名ですが、
最近では「サッポロラーメン味噌ラーメン」とも。
同じ個体でもバリエーションが多いです。
同じのをしばらく繰り返すと飽きるのかな。
ある年、うちでオリジナルの聞きなしを書きとめてみたら、
「ちょっぴりスケッチ」から始まって、
「備中備前月見好き」「一品一枚ずつのベスト」
などなど、意味のあるようなないようなフレーズが並び、
最後は「ちょっぴりつまんなくなっちゃったわよ」に至る
ずいぶん長いリストが出来上がりました。

さて、それで、オオルリ。
オオルリの聞きなしは、調べてもあまり見当たりません。
特徴ある節回しの、よく響く声で、聞けばすぐわかるのですが、
どういうわけか日本語にならない…だけでなく、
「コケコッコー」のようにカタカナでも書けないし、
こんな感じ、と口真似することすら困難。
何度聞いても聞くはしからすり抜けていってしまう、
なんとも不思議な声です。

メモの用意をして出直すと、オオルリはどこかへ行ってしまい、
かわりにイカルがのんびり鳴いている。
「お菊かァ? お千代来ーい。お千代と千代も来ーい」
それが突然「さんちゃん来ーい」と聞こえだす。

さんちゃん?
そういえば…
いませんよ。

 

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