さんちゃんは猫穴をくぐって帰ってくると、
途中に人がいても目もくれず、ドドドドと猫らしからぬ足音をたてて
まっすぐ台所へ直行して小テーブルにとびのり、
ボクのゴハンは?…という顔で待っている。
缶詰とドライフードを混ぜて入れると、入れ終えないうちに顔をつっこみ、
がつがつと勢いよく食べるが、半分ほどでやめてしまい、
いつのまにかストーブの前で顔をあらっている、と思ったら、
またすぐ猫穴をくぐって出て行く。
遊びに夢中の男の子のようだ。
どんな楽しいことがあるんだろう。
昔の中国のような服装をした小さい子どもが夢に出てきた。
ふくらんだ絹の綿入れのようなものを着て、
両手を広げてくるくる回りながら、きゃあきゃあと変な声で笑う。
回りながら姿が薄くなって消えていき、笑い声だけになる。
目が覚めたら、外でよその猫が鳴いていた。
さんちゃんは布団の上で熟睡中。
よそ猫を追い払いに出て行く様子はない。
何やら協定ができたらしい。