レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

なに食べ カル物 セスタス マルゴ

2013-12-30 14:22:36 | マンガ
よしながふみ『きのう何食べた?』8巻
 シロさんがケンジを誘って京都旅行、彼らの食べている料理が気乗りするもの満載で羨ましい、フレンチトーストにプリン(これはふつう和のものではないのでこの文脈で出てくると違和感あるだろうが)、ああ食べたい・・・。
 多くの場合、ヒトがごちそう食べている図なんて見せられてもぜんぜん嬉しくないけど(少なくとも私はそうだ)、それを興味深い場面として描いているのは作者の腕だろうか。
 「ブラウニーって何?」
 「えーヤダ シロさん 赤毛のアン読んだことない!? アンがマリラと一緒に作ってたじゃん!」
 一般的な男の子が『アン』読んではいないと思う。いや私はモンゴメリは全部読んでいるし『アン』も2回はシリーズ通読したけどそれは覚えていない。
 思いがけず飛び込んできた依頼が、夫をかばう相談だったのが即座に離婚に切り替わるのが愉快であった。そうだそうだ、痴漢する夫なんて別れろ、浮気の何倍も許しがたいぞ。


TONO『カルバニア物語』15巻
 なかなか怒涛の展開。
 エキューが仕事で留守の間にカイルとナタリーの子供は誕生。男の子かと思っていたけど両方の双子。名前はまだない。
 前巻で、元王妃の行先があんなに知られていないものだろうか?と思ったけど、シークレットサービスが見張ってまたは見守っていたということが判明。
 タニアのパパが書いたという童話に出てくるセリフ「やりたいことをやるのは やらなければならないことをやるのと同じくらい大切」、これで思い出すのは『七つの黄金郷』(略称エルド)。作者がヘンなことになって中断が惜しまれていた大河物語、エリザベス1世の時代が舞台で、「結婚するまで世間に性別を明かさない」名門侯爵家の海賊一族の双子男女が主人公。性別不明の一族で双子の男女(もちろん美形)という設定で、TONO『砂の下の夢』が一緒に連想される。しかしジェンダーの点で『エルド』はかなり保守的な面があり、時代のせいなのか作家じたいの性質なのかは注目に値する。
 そしてその『エルド』に、人間にはしたいこととしなければならないことがあり、したいことばかりしているとろくな結果にならない、しなければならないことをすることが尊い、というような台詞が重要な場面に出てくる。たいへん崇高なものであるのだが、私はどうもこれに抵抗があった。「したいこと」と「しなければならないこと」は必ずしも別だろうか、「したいこと」のほうが価値が低いと決められるのか、世で為された立派なことが「したいこと」でなかったと言えるのか等々。だから、上記の『カル物』のセリフがアンチテーゼのように見えていっそう興味深い。
 エキュー、幼児のころにはちゃんと女の子の格好をしていたのか。そのうちおばさまも諦めてシンプルな服にさせて、やがて本人が男の子の服を選ぶようになっていったのだろうか。
 着飾ったエキューにも浮浪児みたいになったエキューにも態度の変わらないタニアって大物。


技来静也『拳奴死闘伝セスタス』4  白泉社
 このタイトルをいまだに正確に覚えていない。『拳闘暗黒伝セスタス』が終わってその続編がコレだけど、確実に覚えているのが「セスタス」部分だけなので新刊が出るたび、なんだったっけ?と思う。
 本筋について言えば、勝負でお互いに認め合って別れたことが爽やかな印象になっている。
 ブリタニクスを始末したことから開き直ったのか、ネロがあくどさを発揮しつつある。


萩尾望都『王妃マルゴ』
 先日出た2巻までをまとめて読んだ。
 王女として、そしてきれいに生まれた身の上で、すてきな王子との結婚を夢見るマルゴの心理はごく平凡な女の子そのもの、しかし境遇はぜんぜん平穏でなく、ふつうの夢など許されない。ギーズ家のアンリに夢中だけど、それは実るはずもない。
 ナヴァールのアンリ(のちの4世)が、田舎者ぶりと太っ腹ぶりとを感じさせて、未来の名君にふさわしいキャラになっている。

コメント
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