弁理士の日々

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米軍海兵隊の海兵沿岸連隊(MLR)とは

2023-01-18 18:05:08 | 歴史・社会
日米、南西防衛の強化鮮明 説明は二の次、深める協力
2023年1月17日 朝日新聞
『米ワシントンで開かれた日米首脳会談と日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、台頭する中国に対抗するため、日本の南西地域の防衛力強化を進める姿勢がいっそう鮮明に打ち出された。情報収集や部隊の改編、施設整備など幅広い分野で協力を深める。一方で、国民への十分な説明は後回しとなっている。』
『米国政府は沖縄の海兵隊を25年までに改編し、離島防衛に即応する「海兵沿岸連隊(MLR)を設けると表明。防衛省は「MLR」は対艦ミサイルを備え、より強靱で機動的な体制になる」と説明する。
横浜市の米軍施設「横浜ノースドック」には今春、小型揚陸艇部隊を新たに置く。南西諸島などに迅速に部隊や物資を運ぶことを目的とする。』

上記記事によると、米軍の「海兵沿岸連隊(MLR)」は、離島そのものを敵から防衛する目的であるように聞こえます。
しかし、私が知る限りでは、米軍海兵隊は、部隊の小規模・分散展開を中心とする新たな運用指針「遠征前方基地作戦」(EABO)に基づいて作戦を展開する、と理解しています(アメリカ海兵隊の変容と日本 2022-10-30)。離島に展開した小規模な海兵隊は、その島を固守するのではなく、島から島へと転々と移動して敵の攻撃を避けながら、敵艦船を攻撃することを主目的とするはずです。決して、固守する離島そのものを敵から防衛する目的ではありません。

そこで、「海兵沿岸連隊」「MLR」「EABO」で検索したところ、以下のサイトが見つかりました。
在日米軍の態勢の最適化について 令和5年1月 防衛省・外務省
--テキストにすると以下のような内容です------
➢ 厳しさを増す安全保障環境に対応するため、日本における米軍の戦力態勢を、より多面的な能力を有し、より強靱で、より機動的なものに強化する必要。
➡ 日米両国は、沖縄を含む地元の負担に対しても最大限配慮しつつ、米軍の態勢の最適化に向けた取組を進めることで一致。

《沖縄》
➢ 現行の米軍再編計画を再調整
・第3海兵師団司令部及び第12海兵連隊を沖縄に残留
・同連隊を2025年までに第12海兵沿岸連隊(MLR)に改編
※MLR:Marine Littoral Regiment

《海兵沿岸連隊(MLR)》
➢海兵沿岸連隊(MLR)は、米海兵隊の新たな運用構想(EABO)を実行する中核となる部隊。
※対艦ミサイル部隊も含む歩兵部隊である沿岸戦闘チーム、対空ミサイルを有する沿岸防空大隊、独立した持続的な活動を可能とする沿岸後方大隊からなる部隊。
⇒より多面的な能力を有し、より強靱で、より機動的な態勢に。

EABO(機動展開前進基地作戦):事態発生前から部隊を分散展開。展開した部隊は、防空、機動・分散等の能力により、敵の攻撃から残存。また、情報収集しつつ、対艦ミサイルで敵の行動を制約するとともに、海軍・空軍を中心とする作戦を支援

従来の第12海兵連隊(砲兵)が、155mm榴弾砲 HIMARSを主装備としていたのに対し、
改編後の第12海兵沿岸連隊(MLR)の構成(イメージ)は、対艦ミサイル、低高度防空システムを主装備とした、沿岸戦闘チーム(歩兵大隊ベース)、沿岸防空大隊、沿岸後方大隊の構成となる。

《横浜ノース・ドックにおける米軍の小型揚陸艇部隊の新編について》
1.概要
◼ 令和5年春頃、横浜ノース・ドックに米陸軍が小型揚陸艇部隊を新編予定(13隻及び約280名の編成)
2.意義
◼ 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、南西諸島を含む所要の場所に迅速に部隊・物資を展開可能
◼ 小型揚陸艇の特徴:
・ ヘリや輸送機と比較して大量の物資の輸送可能
・ 港湾がない場所や港湾が破壊された場所でも接岸可能

(参考)陸上自衛隊も導入中
⇒陸上自衛隊も輸送力強化のため同種の輸送船舶を導入中
※海上輸送力の強化は、自衛隊にとっても重要な課題
《写真》陸上自衛隊で導入予定の小型級船舶(イメージ)
--以上-----------------

防衛省と外務省の上記の記事から、全体が見えてきました。
やはり、海兵沿岸連隊(MLR)は、米海兵隊の新たな運用構想(EABO)を実行する中核となる部隊なのでした。
海兵隊は敵の攻撃を阻止するため、中国のミサイル、航空機、海軍の兵器の攻撃可能範囲内で戦う部隊(Stand-in Forces)になります。海軍前方展開部隊は、米海軍の作戦を支援するために、小規模なチームに分散し、揚陸艇などで南シナ海や東シナ海に点在する離島や沿岸部に上陸し、前方展開前線基地(EAB: Expeditionary Advanced Bases)を設定します。
敵の反撃を避けるため、海兵隊は遠隔操縦できる新世代の水陸両用艇を駆使し、48~72 時間ごとに島から島へと移動します。

今まで私は、島から島へと迅速に移動するための手段が見えませんでした。今回、上記記事で「横浜ノース・ドックにおける米軍の小型揚陸艇部隊の新編」がなされることがわかりました。この小型揚陸艇が、離島から離島への迅速な移動の主な手段になりそうです。

そしていよいよ、在沖縄米軍海兵隊は、その役割・構成を一変することになりそうです。
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