弁理士の日々

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「炉心溶融、使うな」東電社長が指示

2016-06-17 21:26:18 | サイエンス・パソコン
<福島原発事故>「炉心溶融、使うな」東電社長が指示 ◇第三者委が報告書
毎日新聞 6月16日(木)20時33分配信
『東京電力福島第1原発事故で、核燃料が溶け落ちる「炉心溶融(メルトダウン)」の公表が遅れた問題で、東電の第三者検証委員会(委員長・田中康久弁護士)は16日、清水正孝社長(当時)が「炉心溶融」の言葉を使わないよう指示したとする報告書をまとめ、東電に提出した。指示は電話などで広く社内で共有していたと認定。首相官邸の関与については「炉心溶融に慎重な対応をするように要請を受けたと(清水氏が)理解していたと推定される」と指摘した。
・・・
清水氏の記憶はあいまいで、第三者委は当時の官邸にいた政治家には聞き取りを実施しておらず、「官邸の誰から具体的にどんな指示、要請を受けたかを解明するに至らなかった」としている。
東電は今年3月に弁護士3人による第三者委を設置し、経緯や原因を調査。事故対応に関わった社員約60人からヒアリングした。』

報告書の内容を、当時の時系列で並べ直すと以下のとおりです。
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2011年3月13日午後2時ごろ、清水氏らは官邸で菅直人首相、枝野幸男官房長官(ともに当時)らと会談。清水氏がその後、報道発表については事前に官邸の了解を得るように幹部に指示していた経緯があった。

14日午後8時40分ごろ、清水氏は記者会見していた武藤栄副社長(当時)に対し、社員を経由して「炉心溶融」などと記載された手書きのメモを渡し、「官邸からの指示により、これとこの言葉は使わないように」と耳打ちした。
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この内容は、当時、原子力安全保安院の記者会見をずっとフォローしてきた私の印象と合致しています。

このブログで今年2月、「炉心溶融の判定基準発見」として記事にしました。以下のとおりです。
2011年3月12日午後2時、原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官は、福島第一原発1号機で原子炉の心臓部が損なわれる「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と会見で発表しました。発電所の周辺地域から、燃料の核分裂に伴うセシウムやヨウ素が検出されたことによります。
ところが、同じ12日、17時から始まった会見で、官邸との協議を終えた中村審議官の口ぶりは重かったのです。
「詳しいことについて、東京電力に確認できていないので何も申し上げられない」「(炉心溶融が起きているか)予断をもったことを申し上げるのは適当ではない」
ある記者は「これまでは今後の可能性も含めて詳しく説明してくれていたのに、まるで別人のようだ。何か官邸に言われたのか」といぶかしんでいました。

以上から、早くも3月12日の14時から17時の間に、原子力安全・保安院に対して官邸は、「炉心溶融とはいうな」ときつく言い渡していたことが目に見えるようです。
ですから、その翌日の13日午後2時に、東電の清水社長(当時)が官邸で会談すれば、官邸から同じことを言われていて当然です。

東電第三者委員会の今回報告を聞いて、当時の菅直人首相、枝野幸男官房長官はともに、「そんなこと言っていない」と憤激しているようですが、すべての証拠は、「そう言っていた」ことを物語っております。
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