弁理士の日々

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トランプ大統領が在日米軍撤退命令

2016-03-31 20:26:35 | 歴史・社会
トランプ氏「在日米軍撤退も」=安保改定、日本の核保有容認―米大統領選
時事通信 3月27日(日)5時43分配信
『米大統領選の共和党指名争いで首位を走るドナルド・トランプ氏(69)は、大統領に就任した場合、日本が駐留経費の負担を大幅に増額しなければ、在日米軍を撤退させる考えを示した。
日本による核兵器の保有を容認する意向も示した。
トランプ氏はインタビューで、日米安保条約について「片務的な取り決めだ。私たちが攻撃されても、日本は防衛に来る必要がない」と説明。「米国には、巨額の資金を日本の防衛に費やす余裕はもうない」とも述べ、撤退の背景として米国の財政力衰退を挙げた。』

2011年10月、私は『小川和久著「日本の戦争力」』を記事にしました。

日本の戦争力 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

日本が他国から攻撃されたらアメリカが守ってくれますが、アメリカが他国から攻撃されても日本は武力で助けることはしません。これを日米条約の「片務性」「非対称性」と賞することが多いですが、小川氏は「これは錯覚に過ぎない」といいます。

日米同盟の実態を克明に観察すると、日米同盟は決して片務的ではなく、逆に日本はアメリカの最重要同盟国であることが浮き彫りになるといいます。
米軍が日本に置いている燃料の備蓄量は膨大です。アメリカ本土東海岸に置いている量が最大で、日本の備蓄量はそれに次ぐ世界第2位です。
米陸軍が日本に備蓄している弾薬量も膨大で、米陸軍の5個歩兵師団を1ヶ月間闘わせることができる量です。佐世保には米海軍、海兵隊の弾薬庫があり、これは第7艦隊が行動する範囲(ハワイからインド洋まで)で最大の陸上弾薬庫です。
嘉手納にある米空軍の弾薬庫は米軍で最も重要な弾薬庫の一つです。

第7艦隊はハワイからインド洋までを作戦海域とします。第7艦隊の旗艦は横須賀を母港とするブルーリッジです。第7艦隊の戦力の中心は、横須賀を母港とする原子力空母ジョージ・ワシントンの機動部隊(10隻)です。

米軍にとって日本に置いている基地は、「アメリカの戦略的根拠地」あるいは「パワー・プロジェクション・プラットホーム」(戦力投射のための根拠地)といえます。パワー・プロジェクション能力とは、「多数の戦略核兵器により敵国を壊滅させ得る能力」「数十万人規模の陸軍を海を越えて上陸させ、戦争目的を達成できるような構造を備えた陸海空の戦力」と定義されます。日本に常駐する海兵隊は1万5千人ですから、アメリカ本土から地上軍が来なければ上陸作戦はできません。しかし、いざというときに使う燃料や弾薬が日本に備蓄されており、日本が第7艦隊を支えていることと相まって、まさに日本が戦略的根拠地となっているのです。

米軍が日本から出て行かざるを得なくなったら、アメリカは世界のリーダーの地位から滑り落ちるかもしれない。それほどまでに(米国にとって)日米同盟は重いのです。
このように重要な日本における米軍基地ですが、米軍自身はこれら日本の基地を防衛する能力を持っていません。米軍基地の防空は自衛隊が担当しています。

以上のとおりですから、世界中に米国軍隊を展開させる米国の世界戦略を“世界平和を維持するための戦略”と理解するのであれば、日米同盟はその米国の世界戦略を実現する上での欠くことのできない同盟であり、日本はその戦略に不可欠のパートナーとして寄与している、と言っていいでしょう。

大統領候補のトランプ氏は、以上のような状況を現時点でどれだけ理解しているでしょうか。全く理解せずにしゃべっている可能性があります。万が一トランプ大統領が実現したとき、大統領は幕僚から詳しい説明を受けるでしょう。そこで、トランプ大統領が「在日米軍は米国のためにこそ重要だ」と理解すれば、日本からの米軍撤退を思いとどまる可能性はあるでしょう。

そうではなく、「アメリカは世界平和を維持するために国力を使うことはしないのだ」との主義を貫徹したらどうなるでしょうか。あるいは、何も知らない人たちを幕僚に選出したら、そもそも本当のことが大統領に伝わらず、初志を貫徹する可能性もあります。

2014年8月、私は『飯柴智亮著「2020年日本から米軍はいなくなる」』を記事にしました。
2020年日本から米軍はいなくなる (講談社+α新書)
飯柴智亮
講談社

『今回、飯芝氏の元米陸軍情報将校としての能力と、ミリタリー・アドバイザーのコネクションを駆使し、在日米軍が撤退する可能性とその時期について、米国内において、政府・軍関係者、および軍産複合体関係者に広く取材を敢行した。』
『米軍は、敵の先制攻撃圏には軍を置かない。』

この本で著者の飯芝氏は、以下のような状況が発生したら、米軍は日本から撤退するだろうと予測しています。
○「台湾が中国のものになったあと」
○「中国空軍が保有するスホーイ系戦闘機が2000機を超えたあと」
○「中国海軍が潜水艦発射型弾道ミサイルJL-2のような長距離高性能ミサイルを200発、実戦配備したあと」
○「中国が衛星撃墜能力を持ったあと」

そしてさらにそのあとに、以下の場合も付加されていました。
○『そして、最後の可能性は、米国大統領に、「在日米軍の撤退」を掲げている共和党のロン・ポール元連邦下院議員のような人物が当選した場合は、大統領命令で即撤退します。』

ロン・ポールをトランプに置き換えたら、まさにこれから起きようとしている状況ではないですか。
これは、本気で「在日米軍が撤退した後」のことを考えないといけないですね。

「日本の戦争力」に記述されているように、在日米軍は決して日本の防衛のためにいるのではありません。東アジアからインドまでを含めた地球の半分の平和を維持するためにいるのです。その在日米軍がいなくなるわけです。一体何が起きるでしょうか。

アジアには突然、力の空白が生まれます。抑止力が失われるわけです。
習近平中国がこれを見逃すはずがありません。
まずは、台湾を攻略し、自分のものにするでしょう。
南シナ海は当然ながら中国の内海となります。
東シナ海で尖閣諸島に出てくるのは時間の問題でしょう。
ロシアも、指をくわえて習近平中国の跳梁を眺めていることはないでしょう。

そのとき、日本はどのようにして抑止力を確保し、平和と独立を維持したらよいのでしょうか。ふたたび「2020年日本から米軍はいなくなる」から拾ってみます。
《在日米軍撤退後に日本自衛隊が具備すべき軍備》
今、中国の戦闘機ははJ-11B(中国版Su-27)で、能力はF-15を超えているかもしれない。さらにSu-35になると完璧にF-15を凌駕する。これに自衛隊が対抗するには迎撃能力を高めるしかない。衛星、グローバルホーク、AEW早期警戒機、レーダー、次に優秀なAWACS早期空中警戒管制機の運用。必要なのが長距離・高速で敵機を撃破できるミサイル。中国機2000機に対して、我が方は700機必要。
米国の専門家は、日本はF-15SEが最適だろうといっている。ミサイルが機内に内蔵され、正面からのレーダー反射面積はF-22と同じ。F-35を待つ間、F-15SEで,繋ぎを買うべきだとの意見。

海自は、いずも型(26000トン)、ひゅうが型(19000トン)のヘリコプター搭載護衛艦に、F-35Bを搭載して4個軽空母機動部隊を造る。搭載機数は合計で40機。対潜哨戒機も増強する。
中国空母が日本近海に現れたら、F-2戦闘機に対艦ミサイルを搭載して出撃する。
海自の軽空母は何隻かやられるが、中国空母を最低1隻撃沈し、艦載機のほとんどを撃墜すればよい。そのあとに米軍が出てくる。

対中国は統合空海戦闘だから、陸上兵力の出番はない。もし陸上兵力が必要な状況に陥ればその時点でもう、100%勝負はついている。

Jマリーン水陸両用団は、1500名でよい。
陸自で本当に使えそうなのは、宇都宮の中央即応連隊、九州の水陸両用団の基幹連隊になる西部方面普通科連隊、習志野第1空挺団、松本の山岳レンジャーであり、あとは要らない。
日本に戦車は1台も要らない。
ストライカー(機甲車両)旅団がアメリカに3個あるので、その1個旅団分の装備を買い取るのだ。日本の国産車両より安くて性能は上だ。しかもC-130輸送機で空輸できる。
日本の陸自に必要なのは機動力と展開力だ。米軍の第160特殊作戦航空連隊ナイトストーカーズのような航空部隊が必要。さらにMV-22オスプレイ。
旅団には、CAS(近接航空支援)能力と、JTAC(統合末端攻撃統制官)が必要。1個小隊に2名ほしい。
各方面隊に沖縄を含めて6個旅団必要。オスプレイは各旅団に10機、補用2機の計12機。1個旅団で兵員が600名。
第1空挺団などを含め、全体で7200人。陸自はこれで十分。これに戦闘支援、後方支援を含めると、総兵力は5万人。

これにより、日本は中国にとって攻めがたい国になる。中国は勝てると判断するまでこない。絶えず日本が準備して、中国が勝てない国になっていれば、来ない。

こんな事態が必要にならないことを願うばかりです。
コメント
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