弁理士の日々

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ザッケローニ監督

2011-02-06 19:02:48 | サッカー
アジアカップの余韻は醒めつつあります。
今大会で、ザッケローニ監督が注目されました。私も、便乗するわけではありませんが、今大会でのザッケローニ監督の印象を一言語りたい気持ちです。

今までの代表監督の発言からの知識では、監督というのは、選手と若干の距離を置くことが必要なのだと感じていました。コーチは選手の兄貴分でいいが、監督となると一段上に立って采配しなければならないのだと。
ところがテレビ映像でザッケローニ監督を見ていると、選手にとって父親、それも厳父ではなく慈父のようです。監督の風采が“気の良いおじさん”に見えるせいもありますが。
試合後、決勝点を挙げた伊野波がテレビインタビューを終えたすぐ後、すれ違ったザッケローニ監督が伊野波選手の頭をぽんぽんと叩いてにっこり笑った姿が印象的でした。

選手一人一人とのコミュニケーションも飛び抜けています。特に控え選手に対するケアが秀逸でした。李忠成選手には大会期間中ずっと声をかけていたといいます。それがあの歴史に残る決勝弾につながったことは間違いないでしょう。李選手に限らず、今大会で先発組と控え組とが気持ちの上で一体になれたのは、半分は監督のお陰と思います。
先発組に対しても、例えば本田圭佑選手がインタビューで「監督から自信を与えられた」と語っているように、ずいぶんと力を与えていたようです。
ザッケローニ監督は就任してからJリーグの試合を見て回り、今回招集した選手たちのプレーをそこで確認しています。監督は選手たちに「Jリーグでのプレイを見てお前を信頼している」と信頼を伝えていたようで、選手には励みになったことでしょう。

ザッケローニ監督がインタビューで選手批判を行ったのは唯一、カタール戦でのゴールキーパー川島選手についてでした。次の韓国戦で誰がキーパーに起用されるか注目していましたが、結局川島選手でした。そのとき監督は、「川島選手を信頼していると(本人に)伝えてある」と話しており、川島が自信喪失しないようにケアしていたのでしょう。

カタール戦後の監督インタビューでは、韓国人記者から「次の試合は韓国とイランのどちらがやりやすいか」と聞かれ、「まず、この場を借りて岡崎選手の2人目のお子さんが生まれたことについて、おめでとうと言いたい。」と答えて質問をはぐらかせたのはザックさんらしいですね。

帰国後の記者会見で「一番嬉しかったことは」と聞かれ「期間中に3人の選手が誕生日を迎えて、それをお祝いしたのが楽しかった。岡崎、永田に子供が生まれて、期間中に祝ったこともうれしかった。」と答えたのもザックさんらしいです。

決勝のオーストラリア戦での最初の選手交代については、その後いろいろな情報が伝えられています。
試合のライブにおいてはアナウンサーが
「交代で岩政が入るようです」
「今野が今『バツ』を出しました」
「監督は岩政の交代を取りやめたようです」
と次々コメントし、一体何が起こっていたのかわけが分かりませんでした。
その後の情報によると、まず監督は今野を中盤の底にアンカーとして入れることを考え、岩政交代前にその戦術を周知させようとしました。ところが今野が(怪我をしているし中盤は不安があるということで)『バツ』をベンチに送りました。そこで監督は考えを変え、岡崎を左から右へ、長友を左サイドバックから左サイドハーフへ、今野をセンターバックから左サイドバックへ、という布陣に変更したというのです。報道によると、この布陣変更については、ピッチ内で選手たちが相談した上で監督に意見具申した、ともいわれています。
試合中にピッチ上の選手とベンチの間でこのような濃密なコミュニケーションが可能だなどと、私は想像したこともありません。イタリア語と日本語の壁もあったはずです。監督と選手のコミュニケーション、ピッチとベンチのコミュニケーションという意味で、今回は本当に驚かされました。


ついでにアジアカップの試合で印象に残った場面について。
最初のヨルダン戦でかろうじて引き分けた後、松井の呼びかけで長谷部キャプテンが話し合いを招集したことが大きな転機になっているようです。普段温厚なザッケローニ監督がこのときは初めて言葉を荒げたといいます。それまで「お客さん感覚」だった若手選手も、ようやく自分たちのやるべきことに気づいたといいます。
監督は、そこでベテランと若手の融合を効果的に図った長谷部のリーダーシップを大いに褒めていました。

カタール戦での伊野波決勝ゴールに至るパスワーク
中盤の長谷部からシュートのように速いパスが香川に渡り、香川が密集するディフェンスを振り切ってペナルティエリアに侵入し、敵のファウル性アタックで倒されたところを伊野波がゴールしました。
まずは、長谷部の弾丸パスの精度が高く、香川の足元に通ったのが1点目のポイントです。その弾丸のようなパスを一発のトラップで自分の制御下に置いた香川のトラップが2点目、そこから瞬発力で香川が抜け出しました。そして“なぜか”あそこに伊野波が詰めていたのが3点目です。1点目、2点目いずれも、優れた個人技でした。

オーストラリア戦での李忠成の決勝ゴール
長友からのセンタリングを受けるときの李忠成はフリーでした。「何であんなフリーになれたのか」とびっくりしたものです。
その後のリプレーで解説を聞いて納得できました。センタリングの直前、李をマークするディフェンスがちらっと李を見た瞬間、李はニアに行くそぶりで足を踏み出しました。それを見たディフェンスがニアへ進み出すとともにボールウォッチャーになったのを見届け、李はすっとファー側に身をかわし、まさにその場所に長友のセンタリングが供給されたということでした。そしてこのような戦術についても、試合前から選手間で打ち合わせされていたようです。

湯浅健二氏によると、今大会の試合をビデオでリプレーすると多くの発見があるようです。残念ながら私は試合のビデオを収録していないのでそれができません。

カタール戦後監督会見
韓国戦後監督会見
決勝前日の監督コメント
オーストラリア戦後監督会見
ザッケローニ監督帰国会見
ザックジャパンの成長と課題
コメント
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