弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

NHK「社員みんなで会社を買った」

2008-03-12 21:11:54 | 歴史・社会
3月10日のNHKスペシャルは「社員みんなで会社を買った~地方発 “EBO” の挑戦~」でした。

MSKという太陽電池の中堅メーカーがあるのですね。
MSKは平成18年8月、中国企業の買収を受け入れ、中国企業傘下となりました。これで皆が幸せになれるはずと思っていたのに、平成19年になってからですか、突然大牟田にあるMSK福岡工場が閉鎖されることになったのです。福岡工場の従業員は全員解雇されました。この工場は、Si基板製のセルを購入し、太陽電池スタンダードモジュール(1m×1.5m程度の大きさ)を組み立てる工場です。最新の技術を保有していると考えられていました。

途方に暮れた従業員たちは、元工場長(60歳)の下で相談し、「自分たちで工場を買えないだろうか」と発想します。
元工場長が家計から1千万円をやりくりし、元従業員たち合計で25百万円を集めました。しかし、必要な資金は30億円です。

MSKで財務部長をやっていた西堀氏(まだ若い)は、都銀出身でMSKに転じ、中国企業との提携話を進めました。皆が幸せになると考えて進めたのにこの結末です。責任を感じ、MSKを辞めて単身福岡に馳せ参じました。
九州の銀行廻りの末、従業員たちの夢が叶うことになりました。銀行が金を出すことを決心したのです。
元工場長が会長、西堀氏が社長です。

去年の秋、工場が再稼働しました。
しかし、以前は高品質の製品を製造し世界に受け入れられていたといっても、販売はMSKのブランド力のお陰、営業力、資金力、技術力なども本社の力があったからこそです。地方工場の現場だけで会社経営を軌道に乗せることは至難だと思われました。
実際、去年の11月頃はなかなか良品が生まれません。発電能力200W以上の世界最高水準を目標とするところ、195W程度のそこそこの成績です。

生産現場を任された若者は、そこそこの成績でもいいじゃないかとのスタンスですが、会長は「これじゃだめだ」とOKを出しません。経営と現場の間にギャップが生じます。

福岡で太陽電池のフェアが開かれます。そこを視察した工場の若者たちは、世界の進歩の速さに驚かされます。ここで目を覚ました若者たちは変わります。皆が死に物狂いとなり、成績は徐々に向上します。そしてとうとう、優秀製品として出荷できるレベルに到達したのです。

番組では、今年になってから次々と出荷される製品の映像が流れました。
たった数ヶ月前には頼りなさげだった若者たちが、すっかりたくましくなった様子が画面から見て取れます。やはり人は逆境の中で育っていくのですね。


以上がNHK番組の内容です。ついでにネットでも調べてみました。

従業員たちが再開した会社、YOCASOL株式会社というのですね。1年前の新聞記事「MSK福岡工場閉鎖へ 太陽電池メーカー EBOで存続模索も2007年03月29日」、MSKによる紹介記事(下記)、サイト「ソフトエネルギー」の記事などが見つかりました。

MSKによる紹介記事「従業員による福岡プラント買収(EBO)について」によると、
「株式会社MSKと株式会社ドーガン・インベストメンツは、平成19年10月10日迄に、MSKの福岡プラントにおける太陽電池スタンダードモジュール事業をYOCASOL株式会社(ドーガンが運営管理する投資事業組合等が出資する受け皿会社)に事業譲渡することに合意し、9月14日に事業譲渡契約書を締結いたしましたので、下記の通りお知らせいたします。」
「YOCASOLは、九州事業継続ブリッジ投資事業有限責任組合(無限責任組合員株式会社ドーガン・インベストメンツ)及びYOCASOL経営陣、福岡プラントの主要な従業員等の出資並びに外部からの借入資金等により、本事業を譲受することとなります。
また、丸紅株式会社から出資および非常勤役員を受け入れ、協力関係を構築して事業を展開することで、MSKの経験、国際的にも高い評価を得ている技術水準を継承して参ります。」
「*EBO(Employee Buy-Out):一般的に、従業員が金融投資家と共同して所属する企業や事業部門を買収する取引をいいます。」
「社名:YOCASOL 株式会社
資本金:420百万円(譲渡日時点予定)
主要株主:九州事業継続ブリッジ投資事業有限責任組合 83.00%
丸紅株式会社14.00% (譲渡日時点予定)」

元従業員の出資は結局総株式の3%ということでしょうか。必要金額30億円のうち、42千万円をベンチャーキャピタル等からの投資でまかない、残りを銀行からの融資で賄ったのでしょうね。


九州事業継続ブリッジ投資事業有限責任組合への出資について」によると、「九州事業継続ブリッジ投資事業有限責任組合(九州ブリッジファンド)は、(株)ドーガン・インベストメンツを無限責任組合員とする投資事業有限責任組合です。」とあります。
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