2012年、世界は滅亡しませんでした。
わが国を含め、混沌を極める一方の世の中ですが、それでも日々の暮らしの中に生きていく糧を見出しながら、一歩ずつ進んでいくしかないことを実感しています。
映画も生きていくことも、過剰な期待をしないことがうまくいくための秘訣かなと思いはじめています。
少なくとも、得られた結果を他者の責任として不満を言い続けるのは、何の解決策にもならないし、何より楽しくない。
悪い結果の中にも、次へと進むための何かを見つけられるような生き方をしていきたいと思うのです。
まずは1位から30位まで。
1.
「アルゴ」(11月14日)
物語のおもしろさ、臨場感を引き立たせる演出、何をとっても群を抜いて素晴らしいの一言。今年観た中で、時間を割いてでももう一度観たいと思った作品は、95点の2作品のみだった。
B.アフレックの作品にはこれからも注目である。
2.
「桐島、部活やめるってよ」(8月17日)
今年の上位作品のキーワードは、恥づかしながら「懐古思想」である。学校にべったりと張り付く抵抗しようのない差別社会をまざまざと、そしてある意味では活き活きと描き切った快作。このクラスにいたら自分はどの立場になるのか、考えただけでもおそろしい。
3.
「アーティスト」(4月7日)
いろいろな意味において巧い。企画が巧い、演出が巧い、そして演者が巧い。犬までも巧いから、さりげなく温かく、そして楽しい。年末にヨーロッパ関連の作品を多く観たけど、五輪を含めて今年は存在感があったということかな。
4.
「ロックオブエイジズ」(9月21日)
作品の出来はこき下ろされることが多かったみたいだけど、それはまったく関係ない。よみがえるあの頃。80年代中心に流行ったパワーバラードの数々。ああいう曲がまたヒットする時代が来ないかなー、とここでも「懐古思想」なのである。
5.
「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」(9月12日)
今年は、「ヒューゴ」や「レ・ミゼラブル」など役者としての需要の高さも見せた
S.バロン・コーエン。キワモノのように振舞いながら、やっぱりそれなりに賢いということだろう。今回の作風は波長がぴたりと合った。
6.
「TIME/タイム」(2月18日)
予想外のヒットとなった本作。時期的にもジャンルとしても、うまく隙間を突いた形になったというところか。そういう意味では年明けの「Looper」にも期待できるかな。
J.ティンバーレイクは、今年晴れて
J.ビールとご結婚。おめでとう。うらやましいです。
7.
「メンインブラック3」(6月3日)
これは
J.ブローリンにやられたって感じ。「トロン:レガシー」の
J.ブリッジスのような処理を敢えてしないところがよかった。でも、やっぱりこれで最後かな。
8.
「ファミリーツリー」(6月27日)
意欲的な活動を続ける
G.クルーニーが、ここではちょっと情けないオヤジを演じるのがミソ。娘との付き合い方は少し参考にしてみよう。長女役の
S.ウッドリーは今後が期待される。
9.
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(3月3日)
ファンタジーにはならない、現実を見据えながら生きていかなければいけない少年の運命を真っ直ぐに描いた良作。残された母親が、自分だって辛いのに広い心で見守っていることに深い感動。親は常に子供の幸せだけを考える生きものなのだ。
10.
「最強のふたり」(9月1日)
文字通り最強のフランス映画となった。単なるいい話ではなく、楽しい場面がふんだんに盛り込まれており、年齢や性別を問わずすべての人に勧められる作品に仕上がっている。リメイクはしない方がいいと思うけど。
11.
「もうひとりのシェイクスピア」(12月22日)
まさかの
R.エメリッヒ監督の転身。事実は小説よりも奇なりという言葉があるが、これはその逆。物語を詰めるほど、つくり話の信憑性が増してくる感じがしたところも良かった。
12.
「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ(前編)(後編)」(12月1日)
本篇記事でおとなのプリキュアと書いたが、かわいらしい画で過酷な物語を綴るギャップがうまくハマった。大みそかのTOHOシネマズでは年忘れ特別上映をするらしい。ヱヴァンゲリヲンの年越しイベントとどちらが集客力があるかが見もの。
13.
「おとなのけんか」(3月10日)
こういうちょっとした作品をさらっと出せてしまう
R.ポランスキー監督ってすごいなと思う。達者な4人の俳優陣も良かった。
14.
「ヒューゴの不思議な発明」(4月12日)
この邦題は原作どおりだからある意味仕方がないんだけど、思い切って変える手もあったのではないか。春休み公開だと特にそう思う。子供向けじゃないよね。
15.
「ロボット」(6月10日)
懐かしのインド映画ブームが再び?と思わされるような快作、いや怪作か。それにしてもまだまだ元気な
ラジニカーントに驚かされる。大勢でレンタルで盛り上がるのにも向いてる作品。
16.
「ドリームハウス」(11月24日)
この映画の騙しは、題名から呪われた家と主人公が対峙するのではないかと思わせといて実は・・・というところ。「主人公が実は」タイプ(勝手に命名)は相当出てきてはいるものの、使いようによってはまだまだいけると思った次第。
17.
「ダークナイトライジング」(7月28日)
前作でジョーカーが伝説になってしまったから、それはそれはやりにくいことだったと思う。
C.ノーラン監督には、とにかくお疲れ様でしたと言いたい。
18.
「君への誓い」(6月8日)
日々できることを積み重ねることで何かが生まれると信じているけれど、それがたった一瞬の事故でフイになってしまうとしたら。無力感の中で立ち上がろうとする主人公に共感するとともに、戸惑いながらも逃げることなく向き合うヒロインに好感。
19.
「テルマエロマエ」(4月28日)
ソース顔としょうゆ顔が流行ったのは、もう20年以上前のことだと思うが。顔の濃さがこんな大ネタに化けるとはびっくり。そのネタに余裕で付き合う面々に感服。
20.
「トワイライトサーガ/ブレイキングドーンPart1」(3月3日)
Part2への前座とはいえ、ベラの衰弱ぶりが下手なマンガよりよほど面白い。プライベートではまさかのゴシップで沸かせるも、わが国ではもはやファン以外へのアピールはまったくしないと決めた様子。
21.
「砂漠でサーモンフィッシング」(12月8日)
本作の妙味は、鮭を持って来いというアラブ人が人格者として描かれていること。どこか一つ意外性を持たせるだけで作品の印象は大きく変わる。この人のためなら、ちょっと無理してもという思いを抱くことに違和感は感じない。
22.
「ヤング≒アダルト」(2月25日)
C.セロンはあれだけ美しいのに、正当な美人の役をなかなか演らないイメージがある。でも、人は誰でも悩みや負い目を持っていると考えれば、それは極めて普通のことなのかもしれない。
23.
「崖っぷちの男」(7月14日)
米国がいま直面しているのは財政の崖。本作の主人公が実際に立っているのはビルの外壁。いまの世の中、実はみんな気分は崖っぷちなのかも。中国もね。
24.
「レ・ミゼラブル」(12月21日)
ひさしぶりの日劇の大画面。良かった。おそらく舞台とは違う圧倒感を感じることができるのではないか。それにしても、魂のこもった歌は心に真っ直ぐ入ってくる。
25.
「恋のロンドン狂騒曲」(12月5日)
恵比寿ガーデンシネマ亡き後、
W.アレンを何処が引き継いでくれるのかと心配したが、彼自身のキャリアが上昇しているみたいで心配は無用になった模様。本作もどうしようもないおとながいっぱい。
26.
「少年は残酷な弓を射る」(7月18日)
この少年はもはやダミアン。母と子の愛情を考えるにはあまりにも重い物語。でも、コネティカット州の事件なんかがあると、こういうことって決して大げさなつくり話じゃないと思ってしまう。
27.
「フランケンウィニー」(12月15日)
これが
T.バートンの起点なのかな。最近ちょっと首を傾げる作品が多かったけど、こんな感じの小ネタがいちばん楽しめる。
28.
「ミッドナイトインパリ」(5月27日)
学が乏しい故に出てくる著名人が分からないという不利があったが、後になって、この作品の流れって「カイロの紫のバラ」の唐突感に近いかもと思うようになった。目の前に急に広がる夢の世界を描きながら、人生のスパイスを小気味良く効かせることも忘れない。
W.アレンの職人芸だ。
29.
「カラスの親指」(12月8日)
なんてことない作品なんだけど、
能年玲奈、
石原さとみがね。とにかくいいんだ、これが。来年のNHK朝ドラ、見ちゃおうかなと本気で思っています。
30.
「マリリン 7日間の恋」(4月18日)
原題に「恋」の字はありません。マリリン「に」恋したと解すれば、騙されたと責めるほどではないか。
L.オリビエも恋しかけてえらい目に遭ったというおはなし。