Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「そして、バトンは渡された」

2021年11月14日 18時37分54秒 | 映画(2021)
だまされました、泣きました。


お人好しというのはあまり褒められたことではない。世知辛い世の中、人が良過ぎて損する例は枚挙に暇がない。

しかし、こと映画に関しては、伏線や仕掛けに気付かないまま観続けて、ある場面で「これはこういうことだったのか!」と驚かされることに醍醐味を味わえる分、素直な人の方がより楽しめるのかもしれない。

ただ人によって感度は違うからさじ加減は難しい。仕掛けは簡単過ぎず、複雑過ぎず。「シックスセンス」とはいかないまでもどのくらいの人を思惑通り誘導できるのかは脚本や監督の腕の見せどころである。

本作は、主要人物4人の紹介で幕を開ける。みぃたんは、正義感が強いが泣き虫の女の子。梨花は、社交的な一方で目的のためには手段を選ばない積極的な女性。優子は、辛いことがあっても笑顔を絶やさないが、その笑顔を誤解されて友達がいない高校生。そして森宮さんは、人と争うことが苦手でやさしいサラリーマン。

優子は森宮さんと一緒に暮らしているが呼び方は「森宮さん」。本当の父と娘ではないらしい。みぃたんにも一緒に暮らす父親がいるが、ある日梨花が家にやって来て、これからは自分が母親になると言う。

しばらくの間、2組の血のつながらない親子の話が並行して描かれる。多感な時期に実の親と離別した子供の人生は波穏やかではない。特にみぃたんは、奔放な梨花に振り回されて家と父親が次々に変わっていく。

2組の親子の話はどう絡んでいくのか。そして、みぃたんと優子に幸せは訪れるのか。シンプルな構成に散りばめられた印象的なエピソードが後半キレイに回収されていく様は、多少のツッコミどころがあるにしても心地良い涙を誘う。

前半の布石は、後から振り返るとかなりのミスリードがあったことに気付く。梨花は何故みぃたんの母親になったのか。あれだけ娘を可愛がっていた実父から何故便りが来なかったのか。観ながらでも違和感を覚えていた場面で、熟考すれば違う考えを展開させることができたのかもしれないが、映画の展開は早く、あっという間にみぃたんは母親大好きっ子になり、こちらもその流れに乗ってしまった。

2組の親子を結び付けるアイテムはピアノだ。みぃたんはピアノのおけいこをする友達に憧れて、梨花にピアノが欲しいと告げる。優子は高校の卒業式で披露される合唱のピアノ伴奏者に指名される。昔少しだけ習ったことがあるらしいが今の家にピアノはなく、森宮さんにピアノが欲しいと言うことができない。

梨花はみぃたんのためにとにかく動いて、資産家の泉ヶ原氏と再婚し念願のピアノを手に入れる。しかしすぐに裕福な生活に飽きたらしく、みぃたんを置いて家を出て行く。次の再婚相手を探すと言う梨花はついに森宮さんと接触。森宮さんも梨花と旧知の仲の様子。しかしこれも後から振り返ればちょっとしたミスリード。

そして山場の卒業式の場面。演奏する優子の姿がある場面と重なり、最大級に鈍い人間がやっと物語の仕掛けに気付く。これは気持ち良かった。

しかし映画はこれで終わらない。優子の新たな旅が始まり、本当のクライマックスへと向かって行く。そこで待っていたのは、理解困難で奔放な振る舞いを続けた梨花の本当の姿であり、再び溢れ出る涙に襲われるのであった。

奔放な梨花の石原さとみ、心やさしい優子の永野芽郁、みぃたんの子役(稲垣来泉)。男性陣も含めて、それぞれが持っている魅力を十分に発揮し愛情のバトンをつないでいく良い配役だった。

(85点)
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「エターナルズ」

2021年11月07日 13時18分34秒 | 映画(2021)
多様性、ここに極まれり。


アベンジャーズが人類の存亡を賭けて戦っていたその裏で、7000年以上も地球で秘かに暮らしていた宇宙種族・エターナルズがいたと言う。

彼らは常に陰から見守ってきた。高度な文明をもたらすとともに、邪悪な生命体・ディヴィアンツの捕食から救うことで、人類の発展は栄華を極めた。

ディヴィアンツの根絶をもって役割を終えた彼らは、組織としての行動を停止し、それぞれが自由な意志で人間社会の中で暮らしていくことを選択した。しかしある日、ロンドンの街に突如ディヴィアンツが蘇ったことで彼らは再集結を迫られることになる。

スケールの壮大さではマーベル作品の中でも群を抜いて最大であろう。なにしろ裏にいるセレスティアルズは、神も宇宙も超越した存在なのだから。

現代社会で人間として生きるエターナルズたちは多種多様だ。性別、人種、世代の違いにとどまらず、聴覚障害者までいる。原作がどうなっているのか知らないが、現代らしいといえば現代らしいし、キャラクターに個性があるとすぐに見分けがつくので観る側に対して親切であるとも言える。

彼らは思想も様々だ。人間社会の一員として暮らしていくうちに、無益な争いに血道を上げる人間たちに愛想をつかす者がいれば、人間との間に恋愛関係を芽生えさせる者もいる。

やがて話は彼らの存在意義へと行き着く。エターナルズは何のために生まれたのか。突きつけられた事実を彼らはどう受け止めたのか。

多様性の話を持ち出すでもなくエターナルズは我々の投影であり、それはこれまでのスーパーヒーロー映画で描かれてきたことと基本的に通底する。大切なものを護るために戦う姿は尊い。

脚本は非常に丁寧に書かれている印象を受けた。人物紹介に時間を取らざるを得ないシリーズ初作だけに上映時間は長いのだが、お披露目だけに留まらず、アベンジャーズでは「シビルウォー/キャプテンアメリカ」で見られたキャラクター同士の対立の構図までこの1作で描いてみせる。

しかもシリーズ初作のデメリットを逆手に取り、キャラクターの不安定さを先の展開の読みづらさ=面白さを深める効果につなげている。

以降のシリーズにも期待したいところだが、話によるとほかのMCU作品との連携の予定は今のところないとか?それでも、ポストクレジットでの大物ミュージシャンの登場を見れば期待しないわけにはいかない。

あとギルガメッシュはもう出ないのだろうか。ドクターストレンジの片腕になるものとばかり思って見ていたのだけど。

(80点)
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