良くも悪くも、てーげー。
なでしこジャパンが2大会ぶりのオリンピック出場権を獲得した真裏でこの作品を観たというのは、水曜日がTOHOシネマズの割引日だったことと、上映時間がちょうど良かったというのが重なったからに過ぎない。
アカデミー賞の発表に合わせるように興味深い作品が最も多く公開されるこの時期だが、最近の映画はとにかく上映時間が長く、平日の夜に観るのはなかなか厳しい。そうした中で、上映時間が104分で内容も明るい娯楽作品は貴重である。加えて安定した品質の作品を届けるSearchlight Picturesの配給ということもあって19時台の回に足を運んだ。
W杯予選史上最大の失点での敗戦という黒歴史を持つ米領サモアのナショナルサッカーチーム。半分諦めにも似た感情に、南国特有のおおらかでのんびりした気質が加わって、選手たちのモチベーションは上がらず、対外試合で1点も取れない不名誉な記録が継続していた。
その空気を何とか変えようと、協会長(といってもご近所の町内会長レベル)が一念発起して米国本土に新コーチの求人を募集。そこにやって来たのがトーマス・ロンゲンであった。
ロンゲンは決して自ら希望して南太平洋のへんぴな土地に来たわけではなく、彼は彼で大きな問題を抱えており、この役職を引き受けない限りサッカー業界から追放されると言われて渋々受け入れたという経緯を持っていた。
いわゆる負け犬同士がめぐり会って化学反応を起こすという非常によくできた話である。しかも「実話に基づいた」という冠が付く。よく今まで映画化されてこなかったとすら思う。
しかし、これは上映時間が短かったためなのだろうか。コーチや選手、協会長など個性があって魅力的なキャラクターを配置した割りには、話の流れがぶつ切りで、コーチと選手の衝突から和解に至る経緯、コーチングによる技術面の上達度合などが伝わってこず、結果的にクライマックスの盛り上がりやカタルシスが中途半端なものになってしまった。
冒頭とラストに登場するT.ワイティティ監督の下りもおすべり気味で、これまでそれほど悪い印象は持っていなかったのだが、今後は少し割引になりそう。
ただ、ロンゲンを巡る話として、娘との関係の描き方は良かった。遠く離れて携帯の電波も入りにくいという状況を見せた後で、娘からの伝言メッセージを聞く場面が何度も流れる。その真相がクライマックスの直前で明らかになるのだが、他の人物もこのくらいきっちり描ければ良かったのにと思う。
失意に堕ちた人がどう再生するか。序盤でロンゲンが米領サモア行きを促される場面で登場する「悲しみの5段階」=否認、怒り、取引、抑うつ、受容。
彼自身もチームも、自分だけでこのステップを上がっていくことは難しかった。お互いに、そして時には別離した妻などの支援を得ながら現状を受け入れて前へ進みはじめる。バランスが良い作品とは言えないけれど、ポジティブなメッセージは伝わってきた。
(65点)
なでしこジャパンが2大会ぶりのオリンピック出場権を獲得した真裏でこの作品を観たというのは、水曜日がTOHOシネマズの割引日だったことと、上映時間がちょうど良かったというのが重なったからに過ぎない。
アカデミー賞の発表に合わせるように興味深い作品が最も多く公開されるこの時期だが、最近の映画はとにかく上映時間が長く、平日の夜に観るのはなかなか厳しい。そうした中で、上映時間が104分で内容も明るい娯楽作品は貴重である。加えて安定した品質の作品を届けるSearchlight Picturesの配給ということもあって19時台の回に足を運んだ。
W杯予選史上最大の失点での敗戦という黒歴史を持つ米領サモアのナショナルサッカーチーム。半分諦めにも似た感情に、南国特有のおおらかでのんびりした気質が加わって、選手たちのモチベーションは上がらず、対外試合で1点も取れない不名誉な記録が継続していた。
その空気を何とか変えようと、協会長(といってもご近所の町内会長レベル)が一念発起して米国本土に新コーチの求人を募集。そこにやって来たのがトーマス・ロンゲンであった。
ロンゲンは決して自ら希望して南太平洋のへんぴな土地に来たわけではなく、彼は彼で大きな問題を抱えており、この役職を引き受けない限りサッカー業界から追放されると言われて渋々受け入れたという経緯を持っていた。
いわゆる負け犬同士がめぐり会って化学反応を起こすという非常によくできた話である。しかも「実話に基づいた」という冠が付く。よく今まで映画化されてこなかったとすら思う。
しかし、これは上映時間が短かったためなのだろうか。コーチや選手、協会長など個性があって魅力的なキャラクターを配置した割りには、話の流れがぶつ切りで、コーチと選手の衝突から和解に至る経緯、コーチングによる技術面の上達度合などが伝わってこず、結果的にクライマックスの盛り上がりやカタルシスが中途半端なものになってしまった。
冒頭とラストに登場するT.ワイティティ監督の下りもおすべり気味で、これまでそれほど悪い印象は持っていなかったのだが、今後は少し割引になりそう。
ただ、ロンゲンを巡る話として、娘との関係の描き方は良かった。遠く離れて携帯の電波も入りにくいという状況を見せた後で、娘からの伝言メッセージを聞く場面が何度も流れる。その真相がクライマックスの直前で明らかになるのだが、他の人物もこのくらいきっちり描ければ良かったのにと思う。
失意に堕ちた人がどう再生するか。序盤でロンゲンが米領サモア行きを促される場面で登場する「悲しみの5段階」=否認、怒り、取引、抑うつ、受容。
彼自身もチームも、自分だけでこのステップを上がっていくことは難しかった。お互いに、そして時には別離した妻などの支援を得ながら現状を受け入れて前へ進みはじめる。バランスが良い作品とは言えないけれど、ポジティブなメッセージは伝わってきた。
(65点)