Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「カメラを止めるな!」

2018年08月26日 11時53分59秒 | 映画(2018)
必殺仕掛人。


社会現象を超えて盗作問題まで発生している話題の映画が、ついにTOHOシネマズ海老名の1番スクリーンに登場。

メディアで連日のように取り上げられ、かつてない異様な盛り上がりを見せる中で、期待値のハードルをかなり上げつつも若干の不安を感じながら鑑賞した。

事前情報どおり、ゾンビ映画の撮影シーンがひととおり流された後にタイトルロール。そして問題の本篇に突入する。

まずはこの劇中映画が撮影された背景と、出演した役者たちの本当の姿が明らかになる。

彼らの出自や性格は様々で、血まみれになりながら叫んでいた主役の男女が素っ気ない若者だったり、熱くカメラを回していた監督役の男性がサラリーマン然とした低姿勢だったり、前半とのギャップに目を引かれる。

それぞれの淡々とした日常に中弛みしそうになるが、ここで丁寧にキャストやスタッフのキャラクターを掘り下げて描いたことが、後半の種明かしシーンの爽快感に繋がっていく。

伏線の回収はもちろんだが、前半の伏線の張り方にこそ勝因があると言っていいだろう。何も知識がない状況で見ても微妙に引っ掛かる場面があって、その違和感が後半までしっかり頭に残っていることで、最後に「ああ、こういうことだったのか」とすっきり消化する。

例を挙げ始めたらきりがないほど至るところに二重三重の小細工が散りばめられていて、しかもそのすべてが分かりやすく解かれていく。脚本と演出のさじ加減の巧みさに感心する。

最後に親子の感動まで持っていった点は個人的に少し甘味が強く感じられたが、前評判に偽りなしと言えるだろう。

盗作疑惑に関しては、今後この監督が作る作品のクオリティが明らかにしてくれるはずだ。個人的には、画面に映らない位置での演出や、撮影カメラを使ったネタなどは、映画オリジナルと言っていいように見受けられた。

(85点)
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「タリーと私の秘密の時間」

2018年08月19日 17時09分07秒 | 映画(2018)
偉大なる丸い背中。


オスカー女優、C.セロン。完璧とも言える美貌を持つにも拘らず、いや、持つからこそ様々な役柄に扮したときの印象が余計に強く残るのかもしれない。

今回彼女が演じるマーロは、40歳を過ぎて3度めの出産を迎えることになった母親。優しい夫、手はかかるがすくすくと元気に育つ子供たちに囲まれて一見すると幸せに見えるが、3人の小さい子供の面倒を見るのは容易ではない。出産後に襲ってきた超多忙な日常にマーロは沈没寸前の状態に陥っていた。

真面目な人ほど割を食う世の中と言われる。もちろん悪いことをしてはいけないが、すべてを完璧にしようとして自分が潰れてしまっては何にもならない。マーロを見かねた実の兄が出産のプレゼントにと考えたのが夜間のベビーシッターだった。

他人に子供を預けられるわけがないと否定的だったマーロだが、ついに限界が訪れてシッターを呼ぶことにする。自宅に現れたシッターは、自分よりはるかに若いタリーという女性だった。

あまりの若さに不安を感じるが、タリーはマーロが驚くほど物事を完璧にこなし、知識も豊富だった。マーロはひさしぶりに安らかな時間を得ることができるようになるのだった。

育児経験のある女性や、そんな女性が近くにいた人であれば、マーロの辛さは100%理解することができ、タリーのおかげで少しずつ自分を取り戻すマーロを見て、涙が出るほどうれしくなることだろう。

しかし、この作品はここから新たな展開を見せる。

もともと少し変わった女性だったタリーだが、行動の奔放さに加速度がつき始める。アルコールを飲んで、夫を誘惑して。そしてある日、突然マーロに告げる。

「私はもう来られない」

すべてを収拾しきったわけではないが、後から考えれば、タリーに感じていた違和感も含めて「そういえばそうだった」と合点がいく設定。前半の脚本に張られた伏線が波のように押し寄せてくる。

脚本以上に素直に物語を追っていけたのは、何よりもC.セロンの力量であろう。とにかく体を張って苦悩する母親を熱演している。

冒頭から終幕まで、肌も肉も弛んだ容姿を画面にさらけ出す。化粧っ気がなくとも美しい顔に、よりリアリティが浮かび上がる。あっぱれな女優魂である。

タリーは最後に日常の素晴らしさを語る。

忙しさの中でつい閉塞感に囚われそうになる中で、誰かが傍に寄り添ってくれるだけで随分と楽になれる。

かつて描いてた将来とは違う自分であることに負い目を感じることもあるかもしれない。でも、肯定的に諦めることで、明日もそれなりに前向きに生きていける。

夫婦で台所に立つ後ろ姿のラストを見て、心からそう思った。

(85点)
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「ミッション:インポッシブル フォールアウト」

2018年08月12日 21時53分24秒 | 映画(2018)
紛うことなき続篇。


ラジオで本作の紹介を聞いたときには、アクションシーンを撮ってから筋書きを考えたと言われていて、どれだけ荒唐無稽な展開になるのかと思っていたのだが、話が進むほど前作「ローグネイション」と密接に絡んでいることが明らかになる。復習しなかったのは失敗だった。

今回カギを握る重要人物は、H.カヴィル演じるCIAエージェントのウォーカー。はじめは捜査の進め方でイーサンと対立するが、そのうちイーサンが政府に対し裏切りを働いているとの疑惑を持つようになる。

誰が裏切るか分からない、敵と味方の位置関係が一瞬で入れ替わるスリリングさは本シリーズの醍醐味であり、この辺りはとってつけたとは思えない見応えに仕上がっている。

上司と対立するイーサン。正義を貫こうと上司を力ずくでねじ伏せ、仲間とともに敵陣へ向かおうとする中で、ウォーカーはどう振る舞うのか。

しかし、そこはスーパーパワーを持ちながらも街を破壊してヒールになってしまった作品に出演したH.カヴィル。ダーティーなパワーを誇示せずにはいられず(ほんとか?)、ここで作品は一気に転回する。

すべての構図が明らかになってからの一騎打ちでは、イーサンを何度も致命的な立場に追い込むアクションの連続となる。

明らかに加齢を感じさせる外見ながらも、すべての超絶アクションを一人でこなしてしまうT.クルーズにはただただ頭が下がるばかり。

「あり得ない」が幾重にも連なるヘリコプターの追跡シーンは、分かっていても手に汗握る。この時点で製作側の勝利である。

「M:I-3」以来にイーサンと再会するジュリア(M.モナハン)のシーンもうれしい。前作から引き続きヒロイン相当として登場するイルサ(R.ファーガソン)の前に現れるところは、もう一つの見どころと言っていい。

後で思い返してみると、ウォーカーの存在をはじめ、実はよく分かっていないことの方が圧倒的に多い脚本なのだが、おそらくそれなりに辻褄は合っているのだろう。そしてそれは作品を楽しむのにほとんど関係のないことである。

もうしばらく楽しませてもらえそうで、まずは安心というところか。

(75点)
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「インクレディブルファミリー」

2018年08月04日 23時40分57秒 | 映画(2018)
力を合わせて、みんながヒーロー。


ピクサー作品も続篇が多く製作されるようになった中で、ようやく登場した本作。前作の「Mr.インクレディブル」が2004年の作品と聞いて驚いた。

内容的にも続篇を作りやすそうな題材だけに、14年ものブランクが空いたのはかなり意外に感じられる。

物語は前作の直後から始まる。相変わらずヒーロー活動が法律で制限されている世界。しかし、力を合わせて戦った経験を経て、家族はそれぞれ自分に自信と誇りを持っているようだ。

そのような中で今回は、ヒーロー活動の公的な復権を持ちかけるちょっとあやしい実業家兄妹が現れる。

彼らは、活動を行うヒーローに映像と音声の記録装置を備え付けることで、彼らがいかに最善を尽くしているかを世間に知らしめる作戦を思いつく。

白羽の矢が立ったのは、最も破壊や損害を与えることなく任務を成し遂げるイラスティガール=母・ヘレン。夫のボブ=Mr.インクレディブルはヘレンが活躍する間、子供たちの世話をすることになる。

様々な能力を持ったヒーローたちが登場する中で、CGアニメの利点を最も引き出すのが、縦横無尽に伸び縮みするイラスティガールなので、この設定は必然とも言える。

さらに、ヒーローアクションと家事育児が同時進行するので、緩急があってテンポ良い画づくりに成功している。

物語に意外性はなく、個人的には優等生映画過ぎるように映ったが、世界を守ることと家族を守ることが同じくらい価値を持つという王道の世界観は、14年経ってもまったく変わりないし、変えるべきものでもない。

ここは素直に、大切な人のために生きるヒーローになろう。

(70点)
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