Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「プリズナーズ」

2014年05月25日 00時33分46秒 | 映画(2014)
人生を囚われたこどもたち。


信仰心への失意から転じた神への挑戦。心の闇に囚われた者たちの所業がどす黒く広がっていく。

P.ダノ演じるアレックスは上手くしゃべることができない。

彼を誘拐犯と思い込んだ父親ケラーはとりつかれたようにアレックスを締め上げる。

ただ一人客観的かつ丹念に捜査を続けるロキ刑事がいたが、実は街の至る所に事情を抱えた容疑者候補が潜んでいた。

犯人が誰なのか、アレックスが時折口にする言葉の意味は何か、謎が二転三転して長時間の割りに飽きは来ないが、解決に至っても正直あまりすっきりしない。

たとえ命が助かったとしても被害者の心には深い傷が生涯残り続けることは想像に難くない。冒頭の感謝祭で無邪気にはしゃいでいた女の子たちの表情を思い出すと悲しい気持ちになった。

もちろんアレックスはもっと悲惨だ。そして彼を痛みつける選択肢しか持ち合わせなかったケラーも、悲しみに打ちひしがれるばかりの他の家族も囚われし者だった。

最後の場面、囚われの世界から解放されるキーワードは「愛」であり、家族愛を象徴する存在として顔を出していた小物が満を持して登場する。

直前に予想がついたものの、それを差し引いても十分にきれいな終わり方だと思った。

(70点)
コメント (4)
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「ブルージャスミン」

2014年05月24日 16時09分42秒 | 映画(2014)
虚構の城郭が消え失せてもなお。


コメディではないW.アレンはひさしぶり。彼自身が出てこないこともあって、会話の洪水は鳴りを潜めているが、その代わりにC.ブランシェットの表情がすごい。

もちろん脚本や演出がこなれているのも事実だが、この救いがたい転落女性を奇抜なメイクや体形変化なしに体現しているC.ブランシェットがやはりすごい。

華やかな美人であるからこそ、追い詰められたときの鬼気迫る表情が生きてくる。

脚本も容赦ない。冒頭からジャスミンの頭のネジはおかしいまま。

周りの人が差し向けてくれる救いの手を嘘と見栄でことごとく葬り去る。

元夫・ハルの犯罪へ無意識に関与していたものの決して悪人ではない。ただ、絶望的に愚かな女性なのである。

並行して描かれる、血のつながらない妹・ジンジャー。

彼女も男運が良いとは言えないが、現実の環境を受け入れてそれなりの幸せを味わえる生活を送っている。

2人の違いは何か。DNA? もちろん答えは違う。

ハルとの出会い以降、嘘で塗り固められた人生。

嘘が次の嘘を招く。つかなくてもいい場面でも、嘘をついた方が楽だと思ってしまう。まるで薬物だ。

ジンジャーの家を飛び出したのも、結局は嘘。嘘の人生のケリを嘘でつけると言えば聞こえはいいが、ジャスミンの前途には何の光もない。

それにすら彼女は気づかず、ただ過去に囚われて独り言を発するだけ。

冒頭に「コメディではない」と書いたが、彼女の人生はもはや悲喜劇の域だ。

(85点)
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「アメイジングスパイダーマン2」

2014年05月05日 17時23分08秒 | 映画(2014)
USJアトラクションの拡大版。


今年の正月はUSJで年越しをしました。あのアトラクションのスパイダーマンは旧シリーズをベースに作られたもの。

やっぱり「スパイダーマン」というと、T.マグワイアの印象が強いこともあって、実は「アメイジング」の前作は観ていない。

A.ガーフィールドのスパイダーマンは、T.マグワイアと比べると「陽」に感じた。

前作は違ったのかもしれないが、内省的に閉じこもることがあまりなく、悩みごとは恋人グウェンのことばかりである。苦悩するヒーローが続出する中でこれは珍しい。

でも、それはそれで悪くない。ぜい肉と言うと言い過ぎかもしれないが、物語を単純化することでメインのアクションに存分に注力することができる。

そんな今回の敵は、J.フォックス演じるエレクトロ。怪物と化す過程は、ヒーローものによくある悲しい巡り合わせであるが、それはそれとして、NYを舞台とした電流デスマッチが派手に繰り広げられる。

過充電がどうのといろいろ言って闘うが、この手の映画に綿密な辻褄合わせは求めないので、まさにアトラクションのようにバチバチと立ち回ってくれればそれでいい。

そういう意味では、電気のおかげでアクションシーンが暗くて見づらいということはなかったし、適度に無敵ぶりも発揮していたし良かったのではないだろうか。

ただ、宣伝でうたっていた複数の敵というのは少し盛り過ぎで、ライノなんてまったくの脇役だし、グリーンゴブリンも本番はこれからという感じが満載だった。

特に残るもののない娯楽映画なので、気分転換として割り切って観るのがいちばんかな。

エンドロールのおまけ映像は驚いた。本篇と関係ないでしょ。

(65点)
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「そこのみにて光輝く」

2014年05月05日 16時42分54秒 | 映画(2014)
ささくれ立った心が向かい合うとき。


原作者の佐藤泰志氏は1990年に40そこそこの若さで自殺。人の心の奥に迫る作業を続けるうちに過敏になるのか、そもそも繊細な心の持ち主だからこそ小説を書くのか。

本作は、その佐藤氏が遺した唯一の長編小説。函館を舞台に、もがき続ける人たちの出会いと挫折と希望を描いている。

主人公たちが暮らす函館だが、本作の風景は夏の北海道である。冬の厳しさとはまた違う暑苦しさが冒頭から漂ってくる。

仕事で挫折を味わった達夫、前科持ちで保護観察中の拓児、そして家族のために身を粉にして働くが何一つ成果に結びつかない千夏。

それぞれが傷ついて疲れ切っている。誰かの力を必要としていることが分かっていても、がさがさの心は簡単には近づけず、かえってお互いを傷つけてしまう。

世界の中ではましな方と言いながらも確実に存在する格差。一度はまると抜けられない負の連鎖ということも言われて久しい。

家族で出かけた子供のころの思い出を話す千夏が痛々しい。目の前にいる父親にかつての面影はない。

それでも彼女が健気に働き続けるのは、やはりかつての家族の愛に包まれた生活を憶えているからに相違ない。

義務なんかじゃない。愛がほしいだけ。報われることのない不倫を続ける理由もそこにあるのかもしれない。

達夫が彼女にひかれたのは決して同情でも劣情でもなく、そんな愛を求める姿に何かを感じたからではないか。

全篇を通して印象的な海の場面は、達夫と千夏が雑念から離れて素直に向き合うことができる場所として描かれる。

決して明るい先行きではないのに、太陽の光に照らされる二人の顔に自然と笑みが溢れるラストが印象深い。

綾野剛という俳優は、世の中で言われるほど二枚目ではないと思うが、独特の味があることは間違いない。

おそらく本人も理解しているのだろう。大作ではない映画や舞台で経験を積むことは、きっと将来の財産となるはずだ。

(70点)
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「映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」

2014年05月05日 08時04分11秒 | 映画(2014)
突然のコロッケ無双。


以前は放送時間をころころ変えていたテレビ版は、ここしばらく「ドラえもん」とコンビの金曜19:30で固定。確か監督も長い間変わっていない。

映画版はといえば、原恵一監督が手掛けた2作品ほど絶賛を浴びるわけではないが、ばかばかしいながらも大人でも笑って泣けるシリーズとして安定している。

パターンは単純といえば単純で、根底に「家族愛」という普遍のテーマが流れる中に、現代の社会事情を味付けに加えるというレシピだ。

これは、「昭和」の風景が染み付いている「サザエさん」「ちびまるこちゃん」「ドラえもん」にはできない。現代の核家族家庭を舞台にした「クレしん」の強みと言えよう。

今回描かれたのは「父性の失墜」とでも言おうか。子供が対象のアニメなのに、しっかり大人を意識した舞台設定をしているのが心憎い。

そしてもう一つ、本作を特徴付けているのが、父親ひろしが改造されてしまうロボットである。

ロボットといえば近未来映画のアイコンとして様々な作品で活躍してきたが、本作のロボとーちゃんは、それらをうまく踏襲して味のあるキャラクターに仕上がっている。

特に、中盤を過ぎたころに明らかになるロボとーちゃんの事実と、そこから連なる二人のとーちゃんのやりとりは、冒頭に述べた「泣ける」要素を大きく膨らませることに成功している。

そしてもちろん泣けるだけじゃない。とてもくだらない、おバカなクライマックスバトルを盛り上げたのは、なんとコロッケであった。

それもコロッケ本人ではない(コロッケは科学者の声あてだったらしい)。コロッケのものまねネタが巨大化して登場したのだ。

そうか!ロボットといえばコロッケなんだ。まんまと食わされたというか、そう思うのもばかばかしいほどのくだらないバトルが繰り広げられる(ほめ言葉)。

これ、いいのか?五木ひろし。笑えるのか?子供たち。

でも考えてみれば、ものまね番組なんて元ネタ分からなくても雰囲気で笑っていることが実は多い。

渡辺直美が、Beyonceを知らないであろう層からも受け入れられたことを思えば、「契り」もまったく問題ないわけだ。

点数には反映されてこなかったかもしれないが、本当にここ数年の「クレしん」はいい感じで安定している。

大勢の子供に混じって50近い大人が一人で観るのは抵抗がないわけではないが、GWの楽しみはしばらく続きそうだ。

(85点)
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「白ゆき姫殺人事件」

2014年05月05日 08時02分02秒 | 映画(2014)
真央といえば、断然井上。


明るく元気な印象が強い井上真央が、ひたすら地味なOL役に扮しているという本作。

別にオスカー俳優のように物理的なアプローチをしているわけではない。それでいて、同僚役の奈々緒と並ぶだけでその立ち位置に説得力を持たせているのは、やはり人というものは見た目+αの部分が大事だということにほかならない。

普段の表情で口角を下げてみる。つまらなそうだな。おどおどした態度をとる。この人、自信がないのかな。

地味なOL・城野美姫が笑顔になれるただひとつの瞬間は、自らの空想の世界に浸っているときだけ。「そのうちいいことあるかな」と呟きながら、ほとんど報われることなく大人になってしまったとてもとても悲しい物語なのである。

それは彼女の性格に問題があることは確かなのだが、この映画、出てくる人物の誰もがどす黒くて嫌になる。

後輩OL、チャラいテレビ局の派遣職員、大学時代の親友や実の両親まで、必ずしも美姫を守ろうとはしてくれない。湊かなえだから仕方ないのか。

それでもたった一人の味方、引きこもりになってしまった小学校時代の友達の存在が、彼女を再び明日へと歩ませる。真犯人が分かってもどす黒く腐った世界は何一つ変わることないのに。

表現は大げさな部分が多いけど、思い当たる節がないわけではない。便利になっているはずなのに、より良い世界にしようとしているのに、何故かとても生きにくく感じる。

空想とは違うけど、井上真央は一服の清涼剤だ。笑顔は少なかったけど、違った一面を十分に堪能することができた。

(65点)
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