Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ひるなかの流星」

2017年03月26日 21時24分57秒 | 映画(2017)
本当にあったら怖い話。


外国、特にハリウッド映画に正統派恋愛映画が見られなくなって久しい。他方、わが国はといえば、男女の恋愛を描いた少女漫画や小説を原作とした映画がひっきりなしに作られている状況が続いている。

と思えば、テレビに目を向けると、こちらはこちらで恋愛モノを基軸に一時代を築いた「月9」ドラマが瀕死の状態に喘いでいる。これらは一本の線で繋げることができる現象なのだろうか。

今回の映画館の客層は、こちらの肩身が思いっきり狭くなるくらい若年層女子がほとんどを占めていた。どうやら白濱亜嵐というEXILEグループの男性を目当てに来ているようだ。そんなに人気があるんだ。

このところの青春映画の乱発のカギはどうやらここだ。EXILEだけじゃなく、ジャニーズであったり、若手女性俳優であったり、コアなファン層に働きかけることでそこそこの収支を見込めるコンテンツになっているのだ。

ファン度が深いほど複数回観たり関連グッズを購入したりと儲けは上がる。一度流れて終わるテレビと比べて効率的だから、視聴率にすれば5%程度の人気度でも十分勝負に打って出られるという算段なのではないか。

かくして情報に疎い人たちにとっては、主演俳優が回転ドアのように入れ替わるだけの似たような作品が次々に作られていくのである。

本作の主人公を演じる永野芽郁は、「俺物語!!」以来のヒロイン役であるが、最近はUQのCMで抜擢されるなどまさに伸び盛り。今後回転ドアの一員となるかの試金石である。

前置きが相当長くなったが、本作。少女漫画の恐ろしさを見せつけられた。

漫画の中のキャラクターであれば線が細くて夢の王子さまなのが、実写化した途端に倫理観の崩壊が前面に出てきてしまう。

これは決して教師役の三浦翔平の外見が怪し過ぎるからだけではない。主人公のすずめに対する所作のすべてがあり得ないのである。

すずめだから呼び名が「ちゅんちゅん」。鳥肌が立ちそうだ。二人の関係は食堂のおばさんでも知ってるって、それで学校としていいのか。

すずめもすごい。先生から、友達を積極的に作るようアドバイスを受けて向かった先がいきなり異性の馬村である。これは同級生からはどう映るのか。

まあ、怖いもの知らずの田舎娘という設定と繋がるものとはいえ、おそらく原作ではもう少し丁寧に描かれているものと信じたい。

その点では、きらきらともっさりが混ざり合う永野芽郁の表情は役柄にハマっていたと言えるだろう。最後の落とし方も健全で無難であった。

でも最近の映画に出てくる高校生活って、あまりうらやましく感じられない。

(50点)
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「パッセンジャー」

2017年03月25日 23時54分48秒 | 映画(2017)
宇宙は荒唐無稽に溢れてる。


人工冬眠から90年早く目覚めてしまった男女の物語って設定はおもしろそうなのに、先に公開された北米ではえらく評価が低い本作。

百聞は一見に如かずで観てみたが、原因がはっきり分かった。

良くできたSF映画は、元々作り話であることを承知の上にも拘らず、「とんでも」な部分をもっともらしく見せることに長けている。

しかし本作は肝心なところで微妙に外してしまっているのだ。

例を挙げればきりがないが、クライマックスの極限の危機にど素人の2人が立ち向かっていく下りはあまりに無茶な選択だし、なんでもいいからとにかく蘇生をという場面はもはやコメディであった。

主人公であるジムとオーロラの関係も否定する人は多いだろう。不道徳な出会いもさることながら、一度冷え切った後の展開はちょっとあり得ないのではないか。

とは言いながら、個人的には結構面白く観ることができた。不道徳の部分は意外性に驚かされたし、J.ローレンスが全篇通して体を張っていたことも大きい。

また、少しずつ変調を示す宇宙船の描写は興味深かった。機械のちょっとしたバグが重篤なエラーの予兆であるというのは我々の日常と同じなのだが、そう考えると120年もエラーなしで自動運転なんて相当な無理筋と思わざるを得ない。もう一度人工冬眠に入っていいよと言われても、おちおち寝ていられないのが正直なところだ。

無理筋が出発点なのだから、まあ荒唐無稽がどれだけあったとしても割り切ってしまえば結構許せるものである。「タイタニック以来」を盛んに宣伝に使っていたからどうなることかと思っていたが、好き嫌いでいえばこちらの方が好きかもしれない。

歴史に残るなど大層なことは期待せずにお気楽な娯楽映画だと思って臨めば、支払った料金分は楽しめる作品である。

(75点)
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「SING」

2017年03月25日 12時25分31秒 | 映画(2017)
テーマパークだけじゃないユニバーサルの強さ。


ラジオ日本の「全米トップ40 THE 80's」の放送が3月で終了とのこと。懐かしい音楽に浸って過ごす時間とのお別れは寂しい。

「SING」には懐かしい曲も出てくるが、現役のTeylor Swift、Sam Smithから往年のFrank Sinatra、果ては00年代初頭の一発屋Crazy Townまで幅広い年代とジャンルの音楽が全篇を彩る。それだけでとても楽しい。

「ララランド」の成功がミュージカルの復活などという向きもあるが、過去を振り返るとミュージカルに限らず音楽を題材にした映画は常に一定程度あり、そのどれもがお気に入りであることに改めて気が付く。

昨年の「シングストリート」、もう少し前だと「ピッチパーフェクト」「ヘアスプレー」も良かったし、一般にはあまり評価が高くなかった「ロックオブエイジズ」でさえ個人的には大好きである。

結局、映画と音楽のコラボに弱いんだ。単純だけど認めざるを得ない。

ただ、本作はそれだけではない。なにしろ最近絶好調のユニバーサルのアニメである。

ミニオンのシリーズ以降はずっと安定していて、今回もキャラクターの外見と個性は魅力十分。本作は「ズートピア」よろしく動物に当てはめていく手法をとっているが、比較しても特に見劣りしない出来栄えである。

もう少しキャラクターのことを詳しく書こうと思っていたら、あることに気が付いた。それは、本作には悪役が登場しないということだ。

様々な環境にあるキャラクターのエピソードが並行して描かれるが、いずれも生きていく中で障害を持った普通の動物(?)たちが奮起して一つのことを成し遂げる一本道に絞っている。

物語の上で転換点となるのは悪役による妨害ではなくて自身の弱さが招くトラブルとなっている。これは地味だけどとても好感が持てる脚本である。

自分の至らなさの原因を誰かに押し付けて非難ばかりする光景が日常絶え間なく流され続ける中で、自分を謙虚に見つめて立ち上がる動物(?)たちの姿に素直に感動することができた。

音楽に戻ると、最も良かったのはゴリラのジョニーが魂を込めて歌うElton Johnの"I'm Still Standing"。洋楽を聴き始めて間もないころに大好きだった曲でもあり、この選曲がいちばん痺れた。歌ったTaron Egertonもお見事。

(90点)
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