笑えない立場を笑い飛ばす。
傑作舞台劇の映画化との触れ込み。確かに舞台は1軒の家の中で、回想もなく2組の夫婦による会話のみ。脚本の充実度と役者の技量があって初めて成り立つ構成であるが、まあとにかくおもしろい。
ひととおり「おとな」なやり取りを交わして切り上げるつもりだったのに、個性のまったく異なる4人が唯一共有していた方向性に微妙なズレが次々に生じて収拾がつかなくなってしまう。
大人っていうのは、時間を費やす中で成長したつもりになっているものの、逆に単なる面倒な人間になってしまっていることが往々にしてある。更に悪いことには、たいていの大人がそのことに気付いていない。子供もハムスターもそんなこと知ったこっちゃないという、飄々としたエンドロールが洒落ている。
演じる4人は「さすが」という言葉がぴったりだ。体裁を繕うよそ行きの表情、でもその中にどうしても垣間見えてしまう困った要素。4者4様ながら、それぞれが非常にリアルなものだから、身につまされるを通り越して笑いがこみ上げる。
4人もそうだが、現代社会は「謙虚」の大切さが軽んじられている気がしてならない。「学びて然る後に足らざるを知る」などとは考えず、とにかく権利を主張する。何故自分が思うような方向に進まないのかと他者へ矛先を向ける。
本心にそうした思いがある限り、いくらうわべで取り繕うとしても少し掘り下げれば隠れていた刃が顔を出す。そんなひりひりした状態で綱渡りを続けるのが「おとな」の世界なのだ。原題の"Carnage"を調べると、「殺戮」や「虐殺」といったおどろおどろしい言葉が意味として出てくる。
よくよく考えれば絶対笑えない。でも、どうにもならない問題は笑い飛ばすしかない。
(85点)
傑作舞台劇の映画化との触れ込み。確かに舞台は1軒の家の中で、回想もなく2組の夫婦による会話のみ。脚本の充実度と役者の技量があって初めて成り立つ構成であるが、まあとにかくおもしろい。
ひととおり「おとな」なやり取りを交わして切り上げるつもりだったのに、個性のまったく異なる4人が唯一共有していた方向性に微妙なズレが次々に生じて収拾がつかなくなってしまう。
大人っていうのは、時間を費やす中で成長したつもりになっているものの、逆に単なる面倒な人間になってしまっていることが往々にしてある。更に悪いことには、たいていの大人がそのことに気付いていない。子供もハムスターもそんなこと知ったこっちゃないという、飄々としたエンドロールが洒落ている。
演じる4人は「さすが」という言葉がぴったりだ。体裁を繕うよそ行きの表情、でもその中にどうしても垣間見えてしまう困った要素。4者4様ながら、それぞれが非常にリアルなものだから、身につまされるを通り越して笑いがこみ上げる。
4人もそうだが、現代社会は「謙虚」の大切さが軽んじられている気がしてならない。「学びて然る後に足らざるを知る」などとは考えず、とにかく権利を主張する。何故自分が思うような方向に進まないのかと他者へ矛先を向ける。
本心にそうした思いがある限り、いくらうわべで取り繕うとしても少し掘り下げれば隠れていた刃が顔を出す。そんなひりひりした状態で綱渡りを続けるのが「おとな」の世界なのだ。原題の"Carnage"を調べると、「殺戮」や「虐殺」といったおどろおどろしい言葉が意味として出てくる。
よくよく考えれば絶対笑えない。でも、どうにもならない問題は笑い飛ばすしかない。
(85点)