Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ドライブマイカー」

2022年02月14日 00時27分42秒 | 映画(2022)
自分の人生に真剣に向き合え。・・・ってことでいいですか?


史上初めて日本映画がアカデミー賞作品賞の候補になったということで、にわかに脚光を浴びることになった本作。今週あたりからは上映館数も一気に増え、感染症対策で座席を間引いている状況とはいえ、シネコンの中でも比較的大きいハコがほぼ完売するなど盛り上がりを見せている。

しかしこの作品、地上波TVでもなじみが深い西島秀俊を主演に置いているものの、メジャー系ではまったくなく、アート色が前面に強く出た作風になっている。

いきなりベッドシーンの冒頭(行為の後ではあるが)。女性がやおら語り出すが、内容は性的な表現を含むとても奇抜な物語。客席の多くを占める高齢者が果たしてついて来られるのか余計な心配をしてしまう出だしから、けだるさの雲に覆われた空気が全篇を覆う。

やがてこの男女は夫婦であることが分かる。夫は舞台俳優・演出家で、妻は脚本家。冒頭のやりとりはこの夫婦独特の様式で、妻が脚本のアイデアを性行為の途中に閃きしゃべり出すと、夫がそれを記憶し形にすると言う。

・・・。どうやらこの映画は、ぼくの世界観とは完全にねじれの位置にあるようだと気付くのに、それほど時間はかからなかった。

芸能の世界で生きる人たちの日常、アンティークな外国産車への愛情、多言語文化を採り入れた意識高い系の演出と、舞台装置のすべてが、ことごとく外れている。

そのためか、夫婦をはじめとした出演者たちの意識や行動にも共感することができない。眼前から聞こえてくる言語を聞き取ることはできるが、何一つ響いてくるものがない。

ただこうした作品を高く評価する人たちが一定程度存在するだろうということは理解できる。

公式HPを見ると、「妻を失った男の喪失と希望」とある。

結婚して20年余りのある日、妻は突然夫の前から姿を消した。しっかりとした愛情で結び付いていると思っていたけど、それは真実だったのだろうか。

別離から2年、仕事で長期滞在した広島で専属運転手の女性に出会う。複雑な家庭事情で育った彼女と少しずつ心の交流を深めていく夫。彼らが辿り着いた答えとは。

客観的によく練られた脚本とは思えるが、この辿り着いた先が「希望」?

夫婦の数だけ愛情の形があるのだから、夫が納得したことを否定しても始まらない。そう思うしかない。

本作がアカデミー賞作品賞を獲れるかって?村上春樹がノーベル文学賞を受賞するくらいの確率はあるのでは。

(25点)
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「ゴーストバスターズ/アフターライフ」

2022年02月06日 12時26分30秒 | 映画(2022)
泣けるゴーストバスターズ。


80年代の代表的ハリウッド映画といえば個人的には「BKTF」一択なのだが、その1年前に公開された「ゴーストバスターズ」も、映画と主題曲が大ヒットでポジティブ系という、共通点を持ったレジェンド作品である。

もちろん公開されたときはいち早く映画館に駆け付けた。ただ実は、当時の作品に抱いた印象はあまり良くなかった。

原因は分かっている。

昔は日米同時公開なんていうのはあまりなく、超大作でも米本国から半年くらい遅れて公開を迎えるのが普通であった。だから基本的にはニュース先行。しかし、多様とは言えない媒体から知り得た情報は必ずしも正しいものとは限らず、米国で大ヒットしたコメディ映画がやって来ると思い込んでしまっていた。

何しろ主演がB.マーレイD.エイクロイドである。記憶の中で「パラダイスアーミー」でB.マーレイにはかなり笑わせてもらったことになっており、否応なしに期待はマックスに膨らんでいたのだった。

しかし蓋を開けてみれば、声を出して笑えたのはマシュマロマンの登場場面くらい。その年の正月映画は3G対決などと言われ盛り上がっていたのだが、断然「グレムリン」支持であったのは言うまでもない。

今回、地上波で第1作、BSで第2作を放映してくれたおかげで、久しぶりに見返すことができたのだが、正直なところやっぱりそれほど印象は変わらなかった。大作としての存在感や、主役たちのキャラ立ちは評価するが。

そこまで思い入れがない作品の続篇を何故観に行こうと思ったか。それは本作がJ.ライトマン監督作品だということによる。

ジェイソンは、第1・2作を監督したI.ライトマン監督の実子である一方で、これまで作ってきた作品は「JUNO/ジュノ」「マイレージ、マイライフ」といった、どちらかと言えば繊細な人間ドラマのイメージが強い。これは今までの「ゴーストバスターズ」シリーズに感じていた不満を埋められるのではないかと思ったのだ。

冒頭、オクラホマの田舎町で1台の車が何かから逃げるように高速で走っている。同じ速度で姿の見えない何かがその車を追って行く。運転手は、1軒の農家に着くと玄関先で追っ手が来るのを確認してから足元のペダルを踏む。すると家の周囲に電磁波のような光が灯り出す。

この時点で観る側は、この運転手がかつてのゴーストバスターズの誰かだということを感じ取る。しかしここですぐにネタバレはしない。

本作の主人公は、この運転手の孫に当たる小学生のフィービーである。祖父譲りの科学的知性を持つが、そのことも手伝ってか周りと馴染むことができない。そんなフィービーの一家は、祖父が遺した唯一の遺産とも言える田舎の家に引っ越して来た。

かつてぼくが「ゴーストバスターズ」に爆笑コメディを期待して裏切られたと思ったように、この作品に快活アクションお気楽映画を期待したらがっかりするかもしれない。

しかし、J.ライトマンに期待していた人間ドラマとしては、丁寧に描かれていて好印象を持った。フィービーの母親、兄、そして町の人たちそれぞれがしっかりしたキャラと背景を持っていることがシンプルながら確実に描かれていた。

フィービーの常識外れた頭脳という微妙な要素もあるが許容範囲。なにより彼女を演じたM.グレイスが美しさと凛々しさを兼ね備えており、思わず応援したくなってくるというのが一つの上げ要因となっている。

ゴースト側に話を移すと、今回フィービーたちが暮らす田舎町を狙おうとしているのは第1作でNYを混乱に陥れた破壊の神・ゴーザ。昔と対比できる箇所がいくつも現れるのが楽しいが、それ以上に30数年前からの映像技術の進歩を感じることができる。

丁寧なだけでなく、過去作品を知る人たちのツボを確実に押さえているところは最大のポイントである。それは最近観た「スパイダーマン:ノーウエイホーム」とも重なるのだが、過去のあのレジェンドたちの活躍はほぼ期待どおりで思わず涙があふれた。

かつてのゴーストバスターズを演じた一人、H.ライミスは2014年に他界している。少し前にシリーズの第3弾の製作が決まっていながら企画が中止になったのは彼の死が原因とも言われていたが、現代の映画に不可能はない。むしろ彼の他界が本作をある種の感動へと導いてくれている。そしてそこには、本作のメガホンを取ったのが息子のジェイソンであったことが必然のように事実として存在している。

世界は混沌としているけれど捨てたものじゃない。若い人たちは優秀で、先人たちは時にはサポートしつつスムーズに道を譲ることが望まれる。それでもB.マーレイたちにはまだまだ元気な姿を見せてもらいたいと思うけれど。

(90点)
コメント (2)
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