Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「NY心霊捜査官」

2014年09月22日 10時00分10秒 | 映画(2014)
霊感捜査官。


霊感が強い人というのをよく聞く。ぼくはまったくその類の才には恵まれていないが決して否定もしない。言ってみれば、晴れ男雨男のようなものかなと思っている。

本作はそんな霊感の強い捜査官が悪魔に見入られて対決し追い払うまでの攻防を描いている。ただ「事実に基づいて」というのが、どこまで事実なのかよく分からないところで、映画的な演出をかなり採り入れているのだろうとやや斜に構えて観ていた。

邦題の「心霊捜査官」というのは実は完全なミスリードで、主人公のサーキ捜査官は神の存在を信じていない単なる一署員である。

しかし彼には神の贈り物である霊感が備わっていて、それが根源的な悪である悪魔に目を付けられる原因となるのであった。

話としては悪くないし、目的もなく世の中に害悪をもたらす悪魔の存在と宿主となった人間のおどろおどろしい風貌もよくできている。

でもあまり引き込まれなかったのはどうしてだろうと考える。

一つはサーキ捜査官に感情移入しにくかったことだろうか。

多忙な仕事で家族との時間がとれず、原因が分かっていながらもすれ違う。しかし苦悩している割りには行動に家族を気遣う様子があまり見られない。妻からの電話を切ってその後何も連絡をしなかったり、子供が怖がっているにもかかわらず構わず同じ部屋に寝かせ続けたり。

あとは肝心かなめの悪魔と神父の闘いが中途半端なところか。

聖職にありながら決して聖人ではないという神父のキャラクターはいい。しかし、悪魔祓いの途中で簡単な挑発に乗っかりそうになって、サーキ捜査官に突っ込まれているのには唖然とした。

二の矢三の矢を討たずにあっさり追い払われる悪魔には更に落胆した。神父が「出て行った・・・」と言って、憑依されていた人間が十字架を手に取っても、「いや、この後何かあるはずだ」と思い続けたのだが、場面はあっさりエンディングへ。

サーキ捜査官はその後NY市警を辞めて神父と行動を共にしているというエピソードにいたっては、これは信仰心を強くするのを求める新手の宗教勧誘ではないかと思ったほどだ。

(55点)
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「ガーディアンズオブギャラクシー」

2014年09月21日 06時13分57秒 | 映画(2014)
爽快さを堅実に追求した娯楽良作。


今回、鷹の爪団の吉田くんが「1本スプーン」だの言って盛んに宣伝していた、TOHOシネマズ日本橋のTCX+DOLBY ATMOSのスクリーンで観たので、まずはその感想を。

正直TCXは単に大きめのスクリーンというだけで特に感動はなく。あれなら海老名の1番だって十分だし、より上位にIMAXシアターがある中でこれで100円課金というのは中途半端な感が拭えないところ。

DOLBY ATMOSは良かった。音の違いが明確に判るほど耳が敏感なわけではないが、ひさしぶりに観たDOLBY社のトレイラー。音を聴かせる意志を感じ取れる数秒間のデモンストレーションが映画館で映画を観るときの楽しみの一つだったので、これを観ただけで個人的には100円以上の価値があった。もちろん劇中の音も楽しめた。

さて本篇。

MARVELの新シリーズは、スーパーヒーローが集まったアベンジャーズの対極もいえる寄せ集め集団が銀河を救うという設定。となると、一にも二にもキャラクターにどれだけ魅力があるかに作品の浮沈がかかる。

世界観がいくつもの天体を股にかける構成になっていることもあって、矢継ぎ早に出てくる登場人物の整理で頭がこんがらがりそうになるが、そこをひととおりくぐり抜けると、ひとりひとりの個性が少しずつ掘り下げられおもしろみが増してくる。

主人公はトレジャーハンターのピーター。彼だけは主人公らしく地球で生まれた普通の人間だが、仲間になるのは異星人や遺伝子改造されたアライグマや植物のヒューマノイドというしっちゃかめっちゃかさ。

しかもそのいずれもが、はじめはピーターに対峙する立場として登場する。それが話の流れとともに仲間として結びついていく様子が楽しく気持ちいい。

また仲間以外のキャラクターも、かつての雇主・ヨンドゥなどは単なる悪役にとどまらない曲者が巧く配置されていて、シリーズの今後にも期待がかかるところ。

もちろん本作1本でも観応えは十分だ。結局は小物に終わってしまったものの今回最大の敵であるロナンの力は強大で、打ち負かすために凸凹でまったくそりが合わなかったガーディアンズが結束するクライマックスは感動ものである。

冒頭に紹介されたピーターの幼少期の辛い思い出がよみがえるなど、シンプルだけど小気味いい脚本もよく利いている。

そして忘れていけないのは音楽の存在だ。ピーターの幼いころの思い出の深さを言葉よりも雄弁に語るのが、カセットから流れる70年代の音楽の数々である。

明るく前向きな曲調の陰に悲しい過去。すべてをひっくるめて更に前へ進む勇気を与えてくれる。ピーターがロナンにダンスバトルを挑もうとする場面は傑作だ。まさに勇士・ケヴィンベーコン。

これほど楽しい作品に仕上がったのはJ.ガン監督の手腕も大きいのかと思う。これまでの作品も期待以上のものが多かった。

間違いなく続篇が作られることになると思うが、パワーアップするのか収束してしまうのか、監督や配役は続投するのか。「アベンジャーズ」シリーズとの融合の話もあるらしいし、楽しみにしながら待ちたいと思う。

(85点)
コメント (2)
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「フライトゲーム」

2014年09月17日 21時32分05秒 | 映画(2014)
本当の犯人が別にいるような気も。


本作の肝は、主人公である航空保安官・ビルがハイジャック犯人に翻弄されるだけでなく、逆に犯人に仕立てられて乗客を含めたすべての人を敵に回してしまうという斬新な設定にある。

サスペンスものは数多くあるが、航空機は、その狭さと一つ間違えたときに死に至る確率の高さから、緊迫感の演出という観点では並び立つものがない舞台である。

特に9.11を経験してしまった世代にとって、テロリストは命を懸けてでも阻止しなければならないものという意識が極めて強く、本作の設定は逆ばねとしてビルの苦境をいっそう引き立てている。

ビルが目を放している隙に乗客たちが話し合い逆襲の算段を始める。真犯人の検討がつかないまま、味方は一部の乗客のみ。それも本当の味方なのか確証はまったくない。

ここまで追い込む積み重ねは見事だった。

特に、「20分ごとに1人殺す」という脅迫を自分の姿を見せずに実行するアイデアと、ひとつひとつをビルの人間的な欠陥と巧妙に結びつけてくるやり口にすっかり翻弄された。

誰が犯人なのか、その前にどうすれば危機的状況を改善できるのか、まったく見当がつかない中でついに乗客がビルに襲いかかる。

そこからビルの反転攻勢が始まるのだが、ここまでの完璧な話の運びから比べると少し作りが雑だった気がする。

攻撃を返り討ちにした後でビルが乗客全員に自分の身の上を包み隠さず語ると一気に信頼を取り戻す。

そして意外な犯人が登場しこれまでの謎が解けていくのだが、上で見事な積み重ねと書いたシナリオが果たして犯人の思惑通りの展開だったのか少し怪しいという印象になってしまった。

犯人が何故ビルの個人情報を知り得たのか、トイレとコックピットの関係を事前に知っていたのかなど、個人のレベルとは思えない所業に対して納得のいく描写もなかった。

一滴の水も漏らさない計画というのは難しいが、前半の展開に少し期待し過ぎてしまったのかもしれない。

(75点)
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「TOKYO TRIBE」

2014年09月17日 20時43分16秒 | 映画(2014)
地獄ではまったくない。


別に避けていたわけではないけれど、初めての園子温監督作品だった。

過去作品のチラシなどから、血なまぐさく陰湿な世界観を勝手に想像していたのだが、本作は見事なまでにライトな娯楽作品だった。それも片足コメディに突っ込んでいるくらいの。

なにしろラップミュージカルである。原作は知らないが、コミックという枠の中でミュージカルの表現は想像がつかないから、監督自身の感覚で相当アレンジされたものなのだろう。

グループ間の抗争とミュージカルといえば「ウエストサイド物語」の系譜であり愛称は悪くない。現代または近未来のトーキョーということで、ラップを軸に据えたというところか。

言葉のまくしたてが脈々と続くラップを好んで聞くことはないのだが、よく聴いてみると、ベースとなるリズムやビート、ラッパーの声質などで、個性がはっきり分かれてくるところがおもしろい(「練マザファッカー」は特にいい)。

物語はトーキョーという荒廃した架空の街を舞台にしたおとぎ話で、地底を這うような音のうねりに合わせて漫画的な闘いが繰り広げられる。派手でばかばかしいほど画的にハマる。

朝ドラで全国区になった鈴木亮平が「知ったこっちゃない」と熱い役を演じれば、周りを囲む個性的な面々も負けじと歌い、舞い、はじけ飛ぶ。

LOVE&PEACEを唱えファミレスにたむろするのが「ムサシノSARU」。らしいと言えばらしい。最後はTRIBEが団結し、予想外に爽やかなエンディングを迎える。

多彩な演者を揃え、好き勝手できる舞台と脚本をこしらえてばら撒いた感じ。余裕で世界を楽しむベテランに雑じって、清野菜名などの新星が伸び伸びと演じている。これも監督の技量がなせる技だろう。

(80点)
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「超高速!参勤交代」

2014年09月07日 16時54分59秒 | 映画(2014)
重要なのは地方の元気。


時代劇と勧善懲悪は切っても切れない関係。かつてテレビのゴールデンタイムで流れていた時代劇ドラマはいずれも「正義が必ず勝つ」であった。

高齢者が相対的に増加する中で地上波のテレビが時代劇を流さなくなったのは不思議な気がする。年齢に関係なく、見てほっとできる時代劇はあってもいいと思うのだけど。

そんな現状を寂しく思っている人にはぴったりの作品かもしれない。

現在のいわき市の外れに位置する湯長谷藩。

農民はまじめに作物を作り、藩主は厳しい財政の中でも年貢を上げず質素倹約に勤しむ。藩士たちは武芸の鍛錬を怠らない一方で、明るさも失わない。

彼らに因縁を付けるのが江戸の家老。田舎を徹底的に差別し、自分の得点稼ぎのために地元に戻った湯長谷藩に再度の江戸詣でという無茶な用務を命じる。

善良+地方+貧乏という強力なコンボは、全篇を通して時には笑わせ、時にはほろっとさせる。

どの登場人物も愛すべきキャラクターだが、際立つのは西村雅彦演じる家老である。知恵者なのに切れ者には見えないのはご愛嬌。

しかしながら、彼が出す突拍子もないアイデアで少しずつ不可能を可能に近付けていく様は痛快だ。

最短距離を走る。余計な荷物は持たず、アリバイのための行列はチェックポイントのみ、しかも外注で。金がないなら頭を使えというのは、現代の地方活性化にも通じており、心憎い設定に感心しきり。

とってつけたようなヒロインや、すべて分かっていたらしい将軍など、首を傾げたくなる展開もところどころ見られたが、基本的にはこの先どうなるのかを肩肘張らずに楽しめる優良娯楽作品であった。

(80点)
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「LUCY/ルーシー」

2014年09月01日 09時49分21秒 | 映画(2014)
今までのS.ヨハンソンは10%しか機能していなかった?


S.ヨハンソンは「セクシー女優」と呼ばれることをいやがっているという報道を見たことがあるが、独立事象として彼女が「セクシー」であり「女優」であることは、ほぼ万人が疑うことのない事実だから仕方がないといえば仕方のないことである。

L.ベッソン監督の作品と聞いても動かない食指が、S.ヨハンソンが主演となると話が変わるのは正にそういうことで、特に主演女優を大きく際立たせる作品が多いイメージがあるので、なおのこと期待することになる。

話は、人間は脳の10%しか使っていないと、どこかで使われたことがあるようなネタを目一杯広げる。広げまくる。

脳の機能を引き出して仲間同士のコンタクトをとっているイルカの例に倣ったのか、S.ヨハンソン=LUCYがひとたび能力開花すると、彼女の細胞が活性化し自由に動き回るようになる。

物を操り、人を操り、ついには時間までも思いのままにできるという、一言で言えば荒唐無稽なのだが、事が巨大化し過ぎるとむしろ楽しくなってくるところが不思議だ。

さも真面目っぽく動物や自然の営みの映像を合間に挟んでくるのも、もっともらしいM.フリーマンの科学者も、確信犯以外の何物でもない潔さがかえって好感が持てた。

そして何よりLUCYである。

はじめは、お遊び気分で台北に来ていた大学生として登場。無防備ゆえに危ない組織の活動に巻き込まれてしまう。

予告や宣伝では覚醒した後の無敵LUCYしか見せていないが、ビフォー版のLUCYは思慮が浅く限りなく無力である。得体の知れないコリアンマフィアに怯える様子をしっかり植え付けておくことによって、後半のカタルシスは増加するし、多面的なS.ヨハンソンの姿を楽しむことができる。さすが女優の撮り方を熟知している。

体内に埋め込まれた薬物が漏れ出し、LUCYが発作に陥る渾身のひとりパフォーマンスを楽しんだ後は、いよいよ覚醒LUCYの誕生である。

存在がもはや神の領域へ向かうので、マフィアへの復讐は早々に済ませ、あとは時間との闘い、自分との闘いになる。落としどころは「まどか☆マギカ」風とも思えるが、悪くない。

セクシー女優を否定どころか、王道の作品と言えるだろう。

(75点)
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