Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ハッピーデスデイ」

2019年06月30日 22時48分30秒 | 映画(2019)
繰り返せない我々は、今日を大事に生きろということ。


映画や小説の演出に繰り返しの描写というものがある。「バンテージポイント」では、一つの事件を角度の違う複数の視点から映すことによって深みを与えるという効果があった。

そこにタイムトラベル的なSF要素を加えたのが、「ミッション:8ミニッツ」であり、「オールユーニードイズキル」である。記事で引用している「魔法少女まどか☆マギカ」もそうだ。

これらの作品に概ね高い評価を付けていることからも、どうやらこのジャンルは好物のようである。本作はこれに、これまた好物の「スクリーム」的な学園ホラー要素を付加した作品なのだから、気に入らないわけがない。

自分の誕生日に殺されてはその日の朝に戻ってしまうを繰り返す女子大生・ツリー。1度めの誕生日、ツリーはとにかく高飛車で性格の悪い女子として描かれる。感情移入どころか、ちょっとお灸をすえた方がいいと思うくらいなので、最初の殺害が意外なほどすんなり受け入れられる。

そこから始まるタイムリープのループ。単なる繰り返しではなく、その度に驚き、恐怖、飽き、呆れとツリーの感情が目まぐるしく変化する様がおもしろい。と同時に、ツリーが自らの生き方を正そうとする姿勢が見られるようになり、徐々に彼女を応援する気持ちがも芽生えてくる。

ツリーの殺され方も多彩だ。刺され、殴られ、爆破され、挙句の果てには自ら絞首刑と、これほど殺害シーンが多いのに被害者がごくわずか(さすがにツリーのみというわけにはいかなかったが)というのは記録かもしれない。

最初に犯人を確信する場面がやや不自然に感じたが、テンポの良さと真犯人に辿り着く展開が帳消しにしてくれる。万事解決と思った直後にまた朝に戻っていたときの絶望ぶりは最高の見どころと言っていい。2度めはやり過ぎに感じたけど。

2年前にヒットを記録した北米では第2弾が既に公開済みで、こちらでも再来週に連続封切りとなるらしい。この手のネタはまだまだ話が作れるでしょう。チラシには「泣ける」の文字があったけど本当だろうか。

(80点)
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「スパイダーマン:ファーフロムホーム」

2019年06月29日 11時17分29秒 | 映画(2019)
インフレじゃなくても盛り上げることはできるんだ。


アベンジャーズが終わるという触れ込みの「エンドゲーム」であったが、MSUの第3フェーズのラストを飾るのは実は本作。それだけに、どのような世界を見せてくれるのか期待が膨らむ公開であった。

「エンドゲーム」で後見人でもあったアイアンマンを失ったスパイダーマンことピーターパーカー。日常に戻って高校生活を楽しもうとしていた矢先に、ニックフューリーから世界を救う戦いに手を貸すように要請される。

修学旅行先のヴェネツィアに突如現れたエレメンタルズという脅威。サノスとの戦いがきっかけで次元の扉が開かれたとのことで、これまた別の次元からやって来たミステリオという謎の男を紹介される。

異なる系列の作品ながら、奇しくも「スパイダーマン:スパイダーバース」が公開されて間もないこともあり、なるほど次のフェーズは異なる次元を取り入れて発展していくのかと理解していく流れだ。

ところが初登場のミステリオ。どうやら原作ではヴィランだったらしい。設定を変えてピーターと共に戦う?それともどこかで裏切って敵として立ちはだかる?このあたりの興味を掻き立てる手法は上手い。

本作はスパイダーマンの映画ということで日常の学園モノ的な話がベースにあるから、全体としてトーンは明るく楽しい。半熟英雄であるピーターが悩んだり過ちを犯したりする場面も微笑ましく見られる。

そして何より、ミステリオを集中して見ていたら、もっと大きい仕掛けがあったことが明らかになり、これはきれいに騙されたと思わず手を叩いてしまう展開。確信的な宣伝から意図しない世の中の空気までがミスリードになっていた。お人好しなピーターじゃなくともこれは信じてしまう。

次への繋ぎだけではなく、「エンドゲーム」の回収や後日談もふんだんに盛り込まれている。他のヒーローは出てこないが、失われた5年間が人々の生活をどのように変えたのかが「親愛なる隣人」の視点を通して描かれる。これまた「エンドゲーム」の後に本作を据える必然と言える。

サノスの次は何が来るという問いに明確な答えは出ていないが、視覚の脅威、科学技術の暴走、個人の葛藤、そして今後大きくなるかもしれない社会的圧力と、世の中は強大な敵になる可能性を有する様々な事象に満ち溢れていることを、本作は分かりやすい形で示してくれた。これは別の意味で次元の扉が開かれた、まさにフェーズ4への繋ぎにふさわしい作品だと言っていいだろう。

それにしても、スパイダーマンほど安定したコンテンツもなかなかない。T.ホランドのキャラクターとのマッチングも最高だ。

(95点)
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「X-MEN:ダークフェニックス」

2019年06月27日 21時24分03秒 | 映画(2019)
終焉というより崩壊。


マーベルの好敵手といえばDCコミックスであり、ことあるごとに興行成績や作品のデキが比較されるが、映画の歴史を塗り替える勢いが続くMCUのあおりを最も受けたのは、実は同じマーベルのX-MENシリーズだったのかもしれない。

そもそも「エンドゲーム」が絶賛公開中のタイミングに新作を公開するというところが、いかに会社が違うからといっても悪策と言わざるを得ない。更には、時系列で繋がりが深い「アポカリプス」から3年も経ってからの公開というのも、世の中の移り変わりのスピードを考えれば時機を逸している。

X-MEN最大のスターであるH.ジャックマンのウルヴァリンもいない。X-MENシリーズ=ウルヴァリンのイメージは強く、多くの観客は「LOGAN/ローガン」で大きな区切りを終えていたのではないか。

そのような中で、また若返ったプロフェッサーXをはじめとしたX-MENたちが動いてもどうにも違和感が拭えない。ましてや物語の中心が、以前にも描かれたジーン・グレイの覚醒というのも新鮮味がない。

と作品の感想以前のネガティブな要素ばかり書き連ねてしまったが、映画の方も微妙な感じで、X-MEN界のキャプテンマーベルともいえる圧倒的な強さのジーンを前にして、プロフェッサーXもマグニートーも見せ場がない以上に力不足で物足りない。

ジーンの強大な力を見せつける映像は迫力がある。列車の車両が銀河鉄道のようにひねりを加えながら空に舞い上がる様子は、おそらく本作を代表する場面と言ってよい。

ただ、やはり派手にやり合うだけが映画じゃないというのが改めてよく分かった。今後、MCUへの統合がうわさされ、FOXが製作するX-MENシリーズはあと1作あるとかないとか。

次の展開が決まっている中で最終作といって有終の美を飾れる作品を生み出せるとは思わないのだが・・・。H.ジャックマンが出てくるくらいしか起死回生はないかな。

(65点)
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「メンインブラック インターナショナル」

2019年06月16日 21時08分09秒 | 映画(2019)
雷神様ほどド派手ではない。


第1作が公開されたのがもう20年以上前。敢えてそのときと同じ映画館へ観に行った。

2012年の「メンインブラック3」からも既に7年。タイトルの字体そういえばこんなんだっけなどと懐かしく観る以外は、配役も完全に変わってシリーズと言いながらも基本的に別作品となっていた(なにしろW.スミスは裏番組ともいえる「アラジン」で大忙しだから)。

観る前の印象として、タイトルの「インターナショナル」が不思議だった。宇宙人を相手にするMIBが「国際」って何よと。物語が地球上の各国を跨いで繰り広げられるのは確かだけど、逆にスケールダウンを感じさせてマイナスではないかと思った。

新たな主役となるC.ヘムズワース(エージェントH)、T.トンプソン(新米エージェントM)は悪くない。これまた20年の変化であろう、"MEN"の違和感への言及をさりげなく含ませたのもよかった。

ストーリーの中では、Hの武勇伝の裏に隠されたからくりが明かされる流れが意外性があっておもしろかった。ニューラライザーは究極の兵器とも言える。

しかし20年はやはり長い。第1作の公開当時は様々な造形のエイリアンをわくわく感満載で観ていたものが、今や多少の映像技術では驚かなくなってしまった。

多少味のあるキャラクターがいることにはいるが、映画のイメージ全般を決定づけるようなインパクトを持つ登場人物がいないから、それなりに面白いけどおそらく2~3日で記憶から抜けてしまってもおかしくない程度になってしまった。

そう考えるとT.リー・ジョーンズのエージェントKは偉大だった。彼が未だにCMで地球を調査しているのはすべてMIBのイメージから派生したものなのだから。

ちなみに、旧作からおなじみの地球に馴染んでいるエイリアンとしてはAriana Grandeの登場を確認。時代的にはトランプ大統領でも絡めるかと思ったが、彼は世界に馴染めていないから却下されたのかな。

(65点)
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「愛がなんだ」

2019年06月09日 00時16分53秒 | 映画(2019)
動けなくなってしまった。


「愛」という言葉は複雑だ。いろいろな場面で様々な対象に対して使うことができるから、小説にも歌の歌詞にも頻繁に登場するし、肯定的な響きを武器に人の心を動かす道具としても有用である。「愛」の文字を兜に付けた武将もいた。

その一方で、それぞれが考える「愛」の意味は一致していないから、その隙間に驚きや争いが生まれ、時には悲劇に結び付くことも少なくない。LOVE&PEACEが声高に叫ばれても未だに実現しないのは、「あれも愛、これも愛」を受け入れられないからである。

しかし、本作のタイトルはそんなあいまいな「愛」を徹底的に突き放す。「愛がなんだ」という言葉には疑問も葛藤も挟まる余地がない。そこは「愛」を超えた執着だけが残る世界だ。

冒頭から主人公のテルコは片思いの相手・守に振り回されている。

「会社から帰るところだったら何か買ってきてくれるとうれしい」。相手に選択の余地を残す形をとりながら、実際には相手が必ず応じてくれると分かっている。官僚答弁のような狡猾さで呼び込んでおきながら用事が済んだらさっさと追い返す。

友人は当然憤る。そんな男はやめた方がいいと。しかし当事者はそうはいかない。好きだから。会いたいから。

テルコの近くには、同様に報われない片思いに身を焦がす仲原がいる。仲原の思いを聞くテルコは言う。「気持ち悪いね」

半ば同類だと気付いているし、好きな人をただ追いかけ続けることがおかしいことも理解している。でもやめるわけにはいかない。やめられない。

あるとき守から友人の女性・すみれを紹介される。年上でテルコとまったく異なるタイプのすみれに守は好意を持っている。

はじめはやり場のない怒りに襲われたテルコだが、傍からすみれと守の関係を見るうちに違う感情が芽生えてくる。自分に対してあれほど心のない対応をしていた守がすみれとの関係ではまるっきり逆になっているのだ。やがて守はすみれへの思いが届かないもどかしさをテルコに打ち明けるようになる。

これまた客観的に見ればあり得ない話である。でも、それでも、テルコにとっては違うのだ。テルコを傷づけていることに気付いた守に対し、嘘をついてでも守とのつながりを手放そうとしない背景には、守がいない人生が存在し得ないという現実がある。

対照的に仲原は片思いに自らピリオドを打つ決心をする。テルコにとっては自分の生き方を否定されたようにも映るから戸惑う。

そこで至った結論が、もはやこれは愛ではないということだった。正しいかどうかは別として、夫婦だって恋愛から結婚を経て家族になっていくように人間同士の関係は形を変えていくことに不思議はない。

ただ、テルコにとって明らかに問題なのは、自分の思いを表す言葉を換えただけで何一つ進んでいないことにある。得体の知れない感情に囚われて前に進めない。若いうちに多くの人が経験する道かもしれないが、どこかでシフトチェンジをしなければならない。

男女を中心とした囚われの感情が痛いくらいに詰め込まれていて非常におもしろかった。演者も、その人物の長所短所をリアリティたっぷりに表現していてよかった。特にかわいく見えるときと煩わしいときが行ったり来たりする岸井ゆきのの好演が光った。

(85点)
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「パラレルワールドラブストーリー」

2019年06月01日 21時46分32秒 | 映画(2019)
山手と京浜東北、毎日そこまできっちり並行して走るかな。


映像化は極めて困難だったという話を聞いた。パラレルワールドを同時進行させることで主人公の困惑を伝えなければならないけれど、本当に訳が分からなくなっても困るというところか。

映像なのであからさまに色味を変えるなどの手法も取れたはずだが、そこまであざとい演出ではなく、かと言って並行する世界観が不要に入り混じることもなく、その辺りは上手く整理して描かれていたと思う。

主人公・崇史とその友人・智彦は何やら脳科学関連の研究会社に勤めているようであり、二人の会話には一聴では理解できない専門用語が飛び交う。この時点でパラレルワールドのからくりが脳に何か働きかけることによって生じるものだと分かる。

原作もこのくらい親切なのかどうかは分からないが、謎解きの面白さやどんでん返しの醍醐味を味わうことはできない。少なくとも宣伝文句にある「驚愕の108分」というのは言い過ぎだ。

目まぐるしく主人公の立ち位置が変わる演出は飽きが来るのを一定程度防いでいる。しかし、相反する記憶に振り回されて苦悶の表情に終始する崇史を中心に全体的に映画の空気は重い。

ミステリーだからシリアスなのは構わないのだが、クライマックスを迎えて事の真相が判明した後も空気感が変わらないから、鑑賞後の充実感につながらない。ヒロインの麻由子が陰気ではっきりしないのも良くない意味で後押ししている。

玉森裕太はアイドルと違う姿を見せることができてキャリアアップにつながったとも言えるが、吉岡里帆のいいところはあまり出ていなかった気がする。振り切った話を期待し過ぎただろうか。

(60点)
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