Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「グラスホッパー」

2015年11月23日 00時07分05秒 | 映画(2015)
凶暴化しないバッタ。


伊坂幸太郎の原作を、生田斗真浅野忠信山田涼介のキャストで映画化した本作。

映画を中心に様々な役を演じてきた生田斗真が、そのいずれとも違うごく普通の社会人に扮しているところが新鮮である。

舞台はほぼ全篇、常に死と隣り合わせの裏社会で展開する。対面した者を自殺に追い込む浅野忠信の「鯨」と華麗なナイフさばきで標的を切り刻む山田涼介の「蝉」は、そこで暗躍する殺し屋だ。

深い陰のある尖った二人と対照的な存在である社会人「鈴木」は、婚約者を殺害されたことをきっかけにこの世界に巻き込まれる。

そういえば、先般木村拓哉がドラマで普通のサラリーマンになったときも意外性に驚いたものだが、主役を張るのが当たり前の人が完全にオーラを消すのは、それはそれで器用な芝居だと思う。

この普通の男が婚約者の仇をどうやって討つのか興味があったが、なんと「鈴木」は最後まで「鈴木」のままである。

もっとはっきり言うと、3人が共演する映画とはなっているが、「鈴木」と「鯨」「蝉」の話は近い距離で起きているものの交わることはない。全員が揃う場面ですら1箇所、それも数秒で通過するだけだ。

下手すると悪い意味で「騙された」となりかねないが、この意外性は個人的に有りだった。普通の人がふとしたことから開眼してヒーローになる方が映画的ではあるが、結局普通のままっていうのも現実的だしおもしろい。

設定を多少変えたとはいえ、原作がよくできているのだろう。3人を取り巻くキャラクターはしっかりしており、常に緊張感を持続して進み中だるみがない。

その中で不満な点はというと、裏で糸を引いているらしい互助会組織の位置づけである。彼らのシナリオ通りにことが進んだということになっているが、ということは、「鈴木」の婚約者が犠牲になったのも?

キーになる子供の使い方があいまいにしか説明されていないから、最後に「鈴木」の笑顔を見てもしっくりこない。もっと怒っていいと思うよ、「鈴木」。

(65点)
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「バクマン。」

2015年11月23日 00時05分56秒 | 映画(2015)
条件付きで「あり」。


「エンドロールがすごい!」という記事を見て、有効期限が間近に迫っている鑑賞券があったので観に行った。

確かに、手が込んでいて愛を感じられる作りだった。CGではなくわざわざこしらえたのだろう。著作権関連と思われる作品名のクレジットも多く出てきていた。

マンガはそれなりに読んだ。永久保存としているコミックスも棚に多く収納している。

ただ、定期購読していたのは「週刊少年チャンピオン」→「ビッグコミックスピリッツ」なので、「ジャンプ」愛はそれほどない。

普通の高校生が、漫画家になろうと決心して、ジャンプ編集部に原稿を持ち込んで、連載を勝ち取り名声を得るというのが大まかなあらすじ。

原作の流れがどうなっているのかは知らないが、2時間以上の上映時間をとっている割には、話がぽんぽん進んでいる気がした。

もともと才能がある2人という設定だし、彼らの努力と苦悩はビジュアルとして描かれている。それでも結果として心に響いてくるものは軽くて薄い。

それはおそらく、まさにそのビジュアルで描いたという手法に起因するものだと思う。象徴的なのは、連載が始まってからの、ライバルである天才高校生漫画家とのつばぜり合いの場面だ。

実際は読者投票の1位を獲得するための争いを、映像では彼らがペンを持ってチャンバラをすることで表現している。分かりやすいのだが、冗長でおもしろくないと感じてしまった。

これに時間を使うのなら、もう少し背景を丁寧に描いた方が物語に入り込めるのにとも思った。登場人物の描写は対照的に粗いからだ。

想いを寄せる声優志望の女性、苦楽をともに味わう漫画家たちという脇役が出てくるが、彫り込みが浅い。主人公と絡むためだけに配置されたように映るのだ。

例えば、主人公は将来を見据えて手塚賞の「入選」にこだわっていた描写があったにも拘らず「佳作」組があっさり連載をスタートさせたり、過労で主人公が倒れたところを助けるのが1人で同じ週刊連載を持つ仲間だったり。

マンガへの愛や漫画家の苦悩を伝える役を主人公しか担っていないから、どうしても物語としては薄味になってしまうのであろう。

技量はあるしこなれてはいるけど、感情に響くものが足りない。編集長だったら、こうコメントするところかと思う。

(60点)
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「俺物語!!」

2015年11月23日 00時03分08秒 | 映画(2015)
「好きだー!」と叫びたがってるんだ。


先日観た「ヒロイン失格」にはどうにも嫌悪感が先に来たのだが、同様に少女漫画を原作とした本作は非常に楽しめた。

荒唐無稽さではこちらも負けていない。いきなり川で溺れる小学生がいたり、お化け屋敷で惨事に見舞われたり。同じ日テレ映画だし、坂口健太郎も出ている。

しかし、作品への印象は大きく異なる。それは突き詰めていけば、温かさだということが分かる。

気は優しくて力持ちだが、見た目が豪傑過ぎる主人公の猛男。幼なじみの親友・砂川は正反対のイケメンで女子の羨望の的。猛男が惚れる女子はいつも砂川を好きになり、猛男は自分の想いを伝えることすらできない。

そんな猛男が、あるとき困っている女性を助けたところ、あまりにかわいくて一目惚れしてしまった。その女性・大和凛子は助けてくれたお礼にと菓子を作ってくるようになるが、猛男は彼女の目的が砂川にあると察して、またしても想いを告げずに陰で二人の後押しをしようと誓う。

もう30歳を超える鈴木亮平が体重を30kg増やして猛男役に取り組んだことが話題に。老けた高校生というのは設定の肝でもあるので、これは振り切った配役でちょうどよかったと思う。演技も安心して見ていられるし。もみあげを付けてもかっこよさが残っているのが問題といえば問題だが。

砂川を演じた坂口健太郎も前作に比べて遥かに好印象だった。クールな表情はおそらく変わらないのだが、劇中で語られるエピソードでいいひと感が増したせいだろう。

そして凛子役の永野芽郁。全体的に垂れ気味に映る笑顔はひょっとすると女子ウケしないかもしれないが、表情や立ち居振る舞いは爆死するほどのかわいさだった(普段の姿やニコモとしての画像を見ると雰囲気が大きく違っているが・・・。さすがモデルである)。

猛男は凛子へ一途な想いを抱くが、それ以上に自分の周りの人の幸せを願う。砂川が猛男へ抱いている深い友情が、あまり多くない言動や行動から十分に伝わってくる。そして凛子が、自分の内からあふれた想いを伝えるためまっすぐに行動する。

「ヒロイン失格」のはとりも、一途で可愛げがあるといえばあるのだが、本作の3人は自然と応援したくなってくるところが違うのだな。もちろんこれは個人差がある話である。

あと、定禅寺通りや評定河原の河川敷など、仙台ロケを大々的に敢行していたところも個人的にはツボだった。原作は関係ないだろうけど、フィルムコミッションがんばりました。

(85点)
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「ピッチパーフェクト2」

2015年11月23日 00時01分03秒 | 映画(2015)
分かりやすく、2匹めのどじょう狙い。


半年も経たない前に「1」を観て高評価をつけたはずなのに、今回の「2」は「あれ?」と首を傾げてばかりだった。

なんでだろう?

前作で大学生アカペラグループの頂点を極めた「バーデン・ベラーズ」であったが、凱旋舞台となった大統領列席の式典で(ファット)エイミーがまさかの大開帳。実力はさておき人間性で劣悪のレッテルを貼られ、グループは再び一からやり直しというのがあらすじである。

前作の噴水嘔吐に並ぶインパクトという発想としての大開帳は理解できる。しかし、その後の展開がどうにもすんなり受け入れられなかった。

ベラーズが活動禁止になった後釜として入ってきたドイツグループが今回のライバルとなる。再び栄光を取り戻すには、世界大会で彼らを打ち破るしかない。

何か無理やり感が漂う。どん底からでこぼこチームが這い上がって勝利を掴み取る物語を再現させるために、やっつけでこしらえた舞台と見えてしまう。

途中で出てくる即興のアカペラバトルも前作の焼き直しに過ぎない。学園祭的なノリだった「1」の方が自然でよかったくらいだ。Green Bay Packersが出てきたのには驚いたが。

一方で前作から発展したのは人間関係だ。今回唯一新加入の新入生エミリーを演じるのは、Hailee Steinfeld。映画に歌に売り出し中らしいが、いまいち良さが伝わってこない。

本作では、このエミリーや(ファット)エイミーが男性とさらっといい感じになっちゃうのも特徴だ。エイミーとくっつくバンパーなんて、前作ではいやな奴だったのに、エンドロールも含めて随分とおいしい役に出世している。

そして最大の疑問は、世界大会優勝の筋書きである。

途中で伏線が張られていたので、アカペラ大会の常識を覆すオリジナル曲で勝負するという流れは予想ついたが、実際のパフォーマンスを見ても、ライバルが諦めるほどのデキだったのかが伝わってこない。カナダチームとして出ていたPentatonixのステージで互角以上の争いだと思うのだが。

で、まとめると、好評だった前作の踏襲ありきがみえみえだったことが何より残念。音楽は相変わらず聴き応えがあったものの、「1」の時ほどの新鮮さは感じられず。エンドロールがいちばん面白かった。

(50点)
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