デキる男の落とし穴。
全篇を通してT.ハーディーが運転するだけという異色作。
一日の仕事を終えたと思しき男が車を走らせる。赤信号で止まった交差点で何か熟考すると、意を決したようにハンドルを切って再発進する。
そこから、ハンズフリーの電話での会話を通して、男の置かれている立場、人格や考え方が少しずつ明らかになっていく。
男は欧州最大規模の建設現場を仕切る現場監督。大量のコンクリート搬入を翌日に控える中で、過去に関係を持った妻ではない女から出産が迫っていることを告げられていた。
有能な技術屋である男は、すべてを割り切って素早く判断することに長けている。
一度だけ犯した過ちで妊娠させてしまったが、そこに愛はない。しかし女には他に頼れる人はなく、自分が蒔いた種であることは明らか。
であれば、子供の人生に対しては責任を果たそう。認知してできる限りの世話をする。ただ女に愛情はないから家庭はそのまま。それが男の決断だった。
男にとってはすべてにおいて合理的で筋が通った話なのだが、実際は男以外誰一人として納得できるものではなかった。
合間に入ってくる建設現場関連の電話に対する鮮やかな対応ぶりが見事なまでに対照的で皮肉が効いている。
自信は度を越すと驕りになる。巷にもよくある話だ。
正しい(はずの)判断が受け入れられない理由を理解できない。周囲を思いやらない選択が導く先は、夜のハイウエイのように暗くて危うい。
映画というよりは一人芝居の舞台というべき素材である。しかし、ラストの余韻を含めて観た後に誰かと意見を戦わせたくなるような、興味深い話であることは間違いない。
(80点)
全篇を通してT.ハーディーが運転するだけという異色作。
一日の仕事を終えたと思しき男が車を走らせる。赤信号で止まった交差点で何か熟考すると、意を決したようにハンドルを切って再発進する。
そこから、ハンズフリーの電話での会話を通して、男の置かれている立場、人格や考え方が少しずつ明らかになっていく。
男は欧州最大規模の建設現場を仕切る現場監督。大量のコンクリート搬入を翌日に控える中で、過去に関係を持った妻ではない女から出産が迫っていることを告げられていた。
有能な技術屋である男は、すべてを割り切って素早く判断することに長けている。
一度だけ犯した過ちで妊娠させてしまったが、そこに愛はない。しかし女には他に頼れる人はなく、自分が蒔いた種であることは明らか。
であれば、子供の人生に対しては責任を果たそう。認知してできる限りの世話をする。ただ女に愛情はないから家庭はそのまま。それが男の決断だった。
男にとってはすべてにおいて合理的で筋が通った話なのだが、実際は男以外誰一人として納得できるものではなかった。
合間に入ってくる建設現場関連の電話に対する鮮やかな対応ぶりが見事なまでに対照的で皮肉が効いている。
自信は度を越すと驕りになる。巷にもよくある話だ。
正しい(はずの)判断が受け入れられない理由を理解できない。周囲を思いやらない選択が導く先は、夜のハイウエイのように暗くて危うい。
映画というよりは一人芝居の舞台というべき素材である。しかし、ラストの余韻を含めて観た後に誰かと意見を戦わせたくなるような、興味深い話であることは間違いない。
(80点)