Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ザサークル」

2017年11月25日 23時39分56秒 | 映画(2017)
何でも透明化すればいいわけではない。これ教訓。


今や世界を支配するSNS。行き過ぎた社会の怖さを描く・・・という目の付け所や意気込みは良いのだが、話の行き過ぎが目立ってあまりまっすぐ落ちてはこなかった。

経営者を演じるT.ハンクスはさすがの存在感。巧妙な語り口と仕草でカリスマ性を体現していた。

主人公・メイのE.ワトソンも戸惑いながら働くIT企業の新入社員にぴったり。この2人の配役で本作はかなりアドバンテージを得ているはずである。

しかしだ。途中から肝心のメイのキャラクターが迷走を始める。

ちょっとしたきっかけから、一個人のすべてを透明化するという新たなプロジェクトの実験モデルに抜擢されたメイ。ただでさえ不安が大きかった新入社員なのに、自分の24時間をあけっぴろげにする企画に耐えるどころか、会社の姿勢にのめり込む態度を見せるようになる。

もちろん仕事を通して目覚めることはあるかもしれないが、プロジェクトの陰では、両親が恥ずかしい思いをしたり、親友が離れて行ったりして、その度にメイ自身心を痛めるような描写が出てくるものだから迷走としか映らない。

ただ、SNSに踊らされて常軌を失う人たちを具体的に映し出したところは良かった。特に、世界中のSNSユーザーが協力して犯罪者を追い詰める場面は本作最大の見どころと言っていいだろう。

犯罪者というレッテルが貼られていようがいまいが、攻撃許可のサインが出た途端に世間が束になって一定の人間をつるし上げる。この手の話は今も毎日テレビで垂れ流されているから非常に分かりやすい話だ。

そうして見ると、もう少し丁寧に作り上げればかなり深く面白くなったであろうし、行き過ぎになりつつある現代社会に警鐘を鳴らすことも可能だったはずの映画なのである。実にもったいなかったという一言に尽きる。

(65点)
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「ジャスティスリーグ」

2017年11月25日 22時54分03秒 | 映画(2017)
印象の弱い敵に苦戦する地球組。


MARVELがアベンジャーズなら、DCはジャスティスリーグだ。

とはいえ、今回の主要なメンバーのうち、アクアマン、フラッシュ、サイボーグは自分が主役になった作品がない状態での登場である(「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」にはちょこっと出ていたらしいが)。彼らがどこまで話をおもしろく引っ張れるかが成功への分かれ道と言える。

結論から言えばまあまあ楽しめた。

アクアマンとフラッシュはX-MENのミュータントのようなものだから(フラッシュ≒クイックシルバー)面白くならない方が不思議なくらい。

G.ガドットは相変わらず美しくかわいいし、サイボーグの悲しき誕生はアメコミの王道であり、キャラクターとして十分立っていた。

しかし問題はまたしてもあの男だった。死んだはずだよ、ケントさん。

冒頭のクレジットでH.カヴィルの名前が出ていたし、A.アダムスD.レインが途中で結構出てきたから、この後絡んでくるのかなーと思ったら大当たり。

生命が軽すぎる。

その後もいきなり破壊行為。こないだのソーのように、破壊神を呼び起こすなら自分の星を捨てるときにしてほしいものだ。

桁違いの強さでやっぱりグループには彼がいないと・・・というかレベルの大きな差を感じてしまう。

アベンジャーズにも頭抜けたパワーの超人と神様がいるけど、あちらはチームでないとという説得力があるのは、やはり話の書き込みが十分かどうかによるのだろう。

Z.スナイダー監督には何も言うまい。彼が描く戦闘シーンはかっこいい。これは「300」の頃から変わらない。

思い返せば、1作めの「アベンジャーズ」も最初は不満が多かったし、これから作品を重ねて良化していくのかもしれない。期待しよう。

ちなみに本作は、エンドロール後にMARVEL式おたのしみ映像があった。特許じゃないのだから、面白いことは採り入れていいと思う。

(65点)
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「はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳」

2017年11月25日 21時58分25秒 | 映画(2017)
40年の空白を埋めるリブート。


子供のころ、平日の夕方のテレビと言えばアニメの再放送だった。

少女漫画が特に好きというわけではなかったが、自然とついていたテレビで見ていたのが「はいからさんが通る」だ。

でも、何度も再放送されていたにも拘らず、紅緒と少尉がどうなったのかという記憶はまったくなかった。調べてみたらアニメ版は打ち切りでエピソードの最後が語られていなかったらしい。

それが劇場版アニメーションとしてよみがえり、今度は最後までしっかり描かれるとの話を聞き、多くない上映館を探してなんとか観ることができた。

コミックスで8巻、アニメでも1年かかるストーリーを前後篇合わせて約3時間にまとめるのだから、全体としてかなり端折っている印象はあった。

しかし、懐かしいキャラクターに何十年ぶりに出会えた感動はそれをはるかに上回っていた。もちろんコミカルとシリアス、ギャグと恋愛が入り混じる作品の空気も記憶の底を気持ちよくくすぐった。

劇場に来ていたお客さんはバラエティに富んでいて、原作やアニメ放映当時を知っているであろう年配の人ばかりかと思ったら、小学生のような女の子も来ていたことに驚いた。ひょっとすると声優人気であろうか(しっかりした声優をキャストに据えたのも今回良かったところだと思う)。

いずれにせよ、名作は色あせないことを改めて実感した。端折りで登場人物の感情の移り変わりがしっかり描き切れない点は残念であるが、興味が湧けば原作を読むなどすればいい。そうやって作品は時代を超えて受け継がれていくのだろう。

それにしても、昔の記憶が戻って喜ぶなんて年寄りくさくて恥ずかしい話だが、早くも未知の結末と出会える後篇が楽しみになっている。いつもは批判ばかりしている前後篇分割だが、今回ばかりは早く公開してほしいと願うばかりである。

(80点)
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「マイティソー バトルロイヤル」

2017年11月19日 12時02分06秒 | 映画(2017)
改めてはじめから観返したくなる引力。


アベンジャーズシリーズの中で観たことがなかった"Thor"が主役となった作品。

何故観る気が起きなかったかというと、神が主役という設定に広がりを感じなかったからにほかならない。ファンタジーの中でも神話めいたものが絡んでくるとどこか型にはまってしまうような印象があったのだ。

しかし、アベンジャーズメンバーが他の作品を行き来するようになって、もはやソーだけを観ない理由はなくなった。先に始まったヒーローたちの映画がアベンジャーズのスピンオフとなり、全体のストーリーに絡んでくるから観ないと損をする気になるという点もある。

商売上手と言ってしまえばそれまでだが、MARVELの良さは、シリーズとはいえ単発の作品としてもしっかり成り立っていて、これまでの事細かな流れや設定を知らなくてもそれなりに映画として楽しめるというところにある。

そして、ソーの物語に最も魅力を与えているのは、不肖の弟・ロキとの関係だ。弟ゆえのコンプレックスと言おうか、故郷が存亡の危機を迎える中で手を携えたかと思えば裏切りを繰り返す。

それはソーの中でも既にパターン化していて、神だけにやっていることはかなりの大事なのだが、「しようがない弟だ」という感じで軽くいなしてみせる。更には、ただ呆れるばかりではなく、ロキの能力は認めていていざという時は頼りにする。いい兄貴だ。

今回最強の敵として登場するヘラは、これまで父親から知らされていなかった姉だという設定がとってつけたようで今ひとつだったが、途中でソーが捕えられた星で遭遇する風変わりな宇宙人などのキャラクターは個性的でひきつけられるものがあった。

久しぶりに見たJ.ゴールドブラムはまだまだ若く、昔ながらの妖しさも健在。こうしたキャラクター設定や配役の巧みさもMARVELならではといったところか。

邦題の「バトルロイヤル」が大きな批判を受けたが、異郷の星での格闘イベントもクライマックスのアスガルドでの戦いも、確かに様々なものが入り乱れての総力戦であり、目の付け所として間違えているわけではない。まあ「ラグナロク」が使えるのならそちらが良かったことは言うまでもないが。

アスガルドを捨てて民衆とともに地球へ向かうソーたちの次の舞台は「アベンジャーズ:インフィニティウォー」になるらしい。そろそろ一連のシリーズもクライマックスを迎えることになるのだろうか。

(85点)
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「ブレードランナー2049」

2017年11月12日 16時07分46秒 | 映画(2017)
近未来のその先の近未来。


前作を予習してから観に行きたかったけど結局できないままに終わってしまった。

前作の舞台は2020年だったと言う。もちろん映画で描かれている世界は現実とはほど遠い。しかし時間軸以外の人類の悲観的な未来は少なからず現実味を持っており、そのインパクトは今でも色あせるものではない。

今回描かれたのは、見捨てられた者たちが騒々しくうごめく故郷の星・地球の30年後。退廃が進んだと言いながらも、人間たちが暮らす街のイメージはそれほど変わっていないように思えた。あくまで記憶に残る前作との比較に過ぎないが。

代わりに、前作では出てこなかった(と記憶している)人間からも見放された廃墟、どうやらラスベガスらしいのだが、ゴーストタウンと化した地域の様子が重要な場面で印象的に描かれる。

前作でレプリカントを製造・管理していたタイレル社は倒産し、ウォレスという科学者が経営する新しい会社に資本が移転していた。ウォレス社はレプリカントの機能を進化させるとともに、問題を起こした旧体の一掃に力を入れていた。

R.ゴズリング演じる主人公はそんな新型レプリカントの1体。心の乱れなど一切見せずに仕事をこなす優秀な警察官であった。

彼がある日、捜査上で発見した旧型レプリカントを始末すると、そこに彼に植え付けられた記憶に引っ掛かるものがあることに気付く。それは、機械であるはずのレプリカントが起こした奇跡の証でもあった。

H.フォードのデッカード捜査官とレプリカントの間に男女関係があったことは薄々憶えていたので、思ったよりも話には入りやすかった。

「強力わかもと」はなくとも、日本を含めたアジア的な雑然とした要素に満ちた街並みは前作との繋がりを意識させる役割としては十分。変に中国色が濃くならなかったのは、本作がソニーグループのコロンビア作品だったからかもしれないと想像する。

それ以上に良かったのは音楽だ。前回は、「炎のランナー」で躍進したヴァンゲリスが奏でる壮大で虚ろな音が、見事に映像と共振していたのだが、今回その空気をH.ジマーが再現。これがまたよくできていて個人的にとても満足した。大型スクリーンで音の圧力を体感したのはひさしぶりだった。

人造人間であるレプリカントの悲しさもしっかり表現されていた。

主人公は、淡々と仕事をこなしAIの恋人に安らぎを求める毎日から、自分のルーツや生まれてきた理由を探るうちに、その人となりを大きく変化させる。

精巧で有能な機械であるからこそ生きている誇りに目覚めるのだが、それは彼にとって決して幸せな結果を生むものではない。

特に、自分が選ばれし者ではなかったことが分かったときの落胆と安堵が入り混じった複雑な感情と、それを経て更に闘うことを決意する下りは雄々しくも悲しい。ホログラフィーAIのジョイ(A.デ・アルマス)がかわいかっただけに余計にそう感じたのかもしれないが。

デッカードから秘密を聞き出そうとするという設定で、過去のレイチェルを再現したレプリカントが登場。S.ヤングのクレジットがあったから本人の許可は得ていることは間違いない。

「スターウォーズ」でも過去のレイア姫が出てくる場面があったけど、こうした技術を使って過去の作品の世界を広げる風潮は続くのだろう。

(80点)
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「ゲットアウト」

2017年11月05日 02時59分39秒 | 映画(2017)
「出て行け!」って、どこへ?


秋の夜長はしっとりと恋愛映画で・・・というのはひと昔前の話らしい。11月は妙にホラー作品の公開が目に付く。

本作は北米では2月に公開されて異例のヒットを記録した。

黒人青年のクリスが白人の恋人ローズの実家へ挨拶に行ったのだが、どうもその家は何かがおかしいという話。

初の黒人大統領だったオバマから、レイシストと非難を浴び続けるトランプ政権になって、完全に対決姿勢となっているハリウッド。

人種問題を匂わせたテーマ設定は商業面からも上手なやり口に見えたが、話が進んで行くに連れてこの映画の、特に題名の巧妙さに大いに驚かされた。

至るところに散りばめられた不穏な空気は、普通に見る限り黒人と白人の微妙な社会的関係に端を発するものと捉えてしまうのだが、そこが大きな穴となっていたのだ。

いや、正確に言えば、明らかに人種差別的な要素は根底に確実に流れている。ローズの実家・アーミテージ家では、初対面の父親がクリスの緊張をほぐそうと敢えて人種の話題に触れ、ローズもクリスが気を悪くするのではないかと常に気にかける。

ローズの家族は、白人社会に一人紛れ込んでしまった黒人の居心地の悪さを理解する進歩的文化人として振る舞う一方で、過去の経緯から黒人の使用人を雇ってもいる。身分で差別をしているように見えるかもしれないが、アーミテージ一家は使用人たちを家族同様に扱っていた。

しかし、この家で過ごす時間が長くなるほど、家を取り巻く異様な空気が次第に強まってくる。そしてその異様さを発信するのは、何故か決まって黒人である使用人や来客であった。

この描写がものすごい。差別される側で描かれて然るべき黒人がまるでモンスターの如く振る舞うのだから、観ている側は混乱を余儀なくされる。

そして後半、この家の秘密が明らかになると同時に、クリスの絶望感が一気に押し寄せてくる。

明らかになった敵にどうすれば勝つことができるのか。その鍵も前半の物語にしっかりと置かれていたものが効果的に使用され、すべての展開が見事に繋がるクライマックスがまた素晴らしい。

新鮮な驚きに会うことを求めて映画館に足を運ぶのが、この季節なんだと改めて感じた。

(95点)
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「IT/イット"それ"が見えたら、終わり。」

2017年11月05日 01時54分23秒 | 映画(2017)
大人は見えないしゃかりきコロンブス。


この邦題はあまり良い評判を聞かない。確かにスマートとは言えないけれど、唯一無二の感じはそれほど悪くないと思う。

北米では9月に公開され、S.キング原作史上最大とも言われる特大ヒットを記録している本作品。郊外の住宅街で次々に子供が行方不明になる事件が発生するが、その背後にはピエロの格好をした謎の怪物の存在が・・・と、簡単に言えば都市伝説を実写化したような話である。

子供たちを喜ばせる役回りのピエロだけれど、よく見ると顔怖いよねーというのは、チャッキーやアナベルがホラーアイテムに使われるのと同じくらい定番であるが、今回のヒットでペニーワイズが新たなホラーアイコンとなるのか注目である。

都市伝説の怪物ということでリアリティよりも想像の世界的な描写が多くなっている。「それ」は子供が不安に感じているものに姿を変えて近づいてくるのだ。

ただ、ネタバレをすれば、「それが見えたら、終わり」というのは明らかなミスリードで、物語の本筋は学校でイケてない子供たちが団結していじめっ子や化け物に立ち向かっていくブレイブストーリーである。

もちろんペニーワイズは手を変え品を変え主人公たちを脅えさせるのだが、すぐに殺してしまうわけではないし、時折ほろ苦い思春期の思いなどが挟まれるなど必ずしも緊張感一辺倒で進まない。

武器は効かないし神出鬼没だし厄介なことこの上ない怪物であることと、対峙するのが力関係で明らかに劣るはずの子供という構図にそもそもの課題があるのだが、何にせよ「終わり」の絶望感は途中で消失する。

同じ「IT」で言えば「イットフォローズ」で味わった凍り付くような寒気にはほど遠い。

しかし、子供たちのちょっとした成長物語としては悪くない。それぞれのイケてなさは愛おしく、紅一点ベバリー役の女の子もかわいらしい。

入口で期待を誤ると微妙な評価にならざるを得ないが、小説で読んでみるとかなり読み応えがある作品なのかもしれない。

(70点)
コメント (2)
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