食べ方が気まぐれな巨人。
コミックを実写化する場合、原作のファンを中心に批判が起こるのは常である。原作の人気が高ければ高いほど抵抗感も強まり、本作においても、配役のイメージが異なる、物語が書き換えられているといった声が強く聞かれている。
ただ、原作を一度も読んだことがない立場からすればそんなことは関係なく、純粋に楽しめる作品に仕上がっているかどうかに集中することができるのは、ある意味幸せなことかもしれない。
そんな前提での感想になるのだが、まず良かった点として挙げられるのは、「巨人」がよくできていたことである。
読んだことはなくても、何とも気持ち悪い生き物の姿は印象に強く刻まれており、理不尽に人間を食らう場面が遠慮なく描かれていたことに感心した(ちなみにPG12指定)。
ただその他は首を傾げることが多かった。
まずは冒頭。エレン、ミカサ、アルミンの主要メンバーが登場するが、後から声入れしたのがはっきり分かる音声編集に興醒めする。
エレンは現世に背を向け、壁の外に自由を夢見る青年という設定だが、残念ながら思慮の浅い生意気な若造にしか見えない。これは三浦春馬の演技力がどうこうと言うより、生い立ちや心理面の描写がないままで、あさっての方向を向いている姿を見せられてもどうしようもないというもの。
他の人物も、同様な理由でどうにも感情的に入れ込むことができない。エレンと同じ兵団に加わる人たちは、エレンの歩きに合わせて移動するカメラの背景としてさらっと紹介されるだけである。
そもそも顔が汚れでくすんでいて認識しづらいし、それぞれがワンポイントエピソードのみのキャラクターになっているから、とにかく存在が軽い。ラブラブのカップルとシングルマザーは予想どおり捨て駒として捕食される。
捨て駒といえば、巨人が次々に人間を食べていくのは前述のとおりなのだが、クライマックスのアルミンを襲う場面での間延び感もいただけない。
荒唐無稽なおなはしにリアリティを求めることはナンセンスと分かってはいるが、雑魚キャラは無慈悲に噛みちぎっていたものを、たっぷり時間をかけて口に運び、ご丁寧に舌の上に乗せちゃう。
で今度は、助けに来たエレンが巨人の口が閉じるのを両手で懸命に押さえる。この辺は、マンガのひとコマだと違和感なく読み進められるものが、実写だと途端に印象が変わってしまう典型だろう。
それでも俳優陣はよくやっていると思う。長谷川博己や石原さとみは、これまで見たことがないタイプの個性を出しているし、桜庭ななみや、食べられちゃったけど水崎綾女も短い時間の中で魅力を十分発揮していた。水原希子だって悪くない。
世間では反感を買いやすいSEKAI NO OWARIのテーマ曲もよくできていて、売れているグループの勢いを感じる。
総括すれば、困難なお題に対して多くの要素をよく盛り込んで、キャストもスタッフも全力で取り組んだことは伝わってくるけれど、引き込まれてカタルシスを感じるという次元にはほど遠い内容だったというところ。
当初名前が挙がっていた中島哲也氏が監督を務めていたらどうなっていただろうと思わずにはいられない。
(50点)
コミックを実写化する場合、原作のファンを中心に批判が起こるのは常である。原作の人気が高ければ高いほど抵抗感も強まり、本作においても、配役のイメージが異なる、物語が書き換えられているといった声が強く聞かれている。
ただ、原作を一度も読んだことがない立場からすればそんなことは関係なく、純粋に楽しめる作品に仕上がっているかどうかに集中することができるのは、ある意味幸せなことかもしれない。
そんな前提での感想になるのだが、まず良かった点として挙げられるのは、「巨人」がよくできていたことである。
読んだことはなくても、何とも気持ち悪い生き物の姿は印象に強く刻まれており、理不尽に人間を食らう場面が遠慮なく描かれていたことに感心した(ちなみにPG12指定)。
ただその他は首を傾げることが多かった。
まずは冒頭。エレン、ミカサ、アルミンの主要メンバーが登場するが、後から声入れしたのがはっきり分かる音声編集に興醒めする。
エレンは現世に背を向け、壁の外に自由を夢見る青年という設定だが、残念ながら思慮の浅い生意気な若造にしか見えない。これは三浦春馬の演技力がどうこうと言うより、生い立ちや心理面の描写がないままで、あさっての方向を向いている姿を見せられてもどうしようもないというもの。
他の人物も、同様な理由でどうにも感情的に入れ込むことができない。エレンと同じ兵団に加わる人たちは、エレンの歩きに合わせて移動するカメラの背景としてさらっと紹介されるだけである。
そもそも顔が汚れでくすんでいて認識しづらいし、それぞれがワンポイントエピソードのみのキャラクターになっているから、とにかく存在が軽い。ラブラブのカップルとシングルマザーは予想どおり捨て駒として捕食される。
捨て駒といえば、巨人が次々に人間を食べていくのは前述のとおりなのだが、クライマックスのアルミンを襲う場面での間延び感もいただけない。
荒唐無稽なおなはしにリアリティを求めることはナンセンスと分かってはいるが、雑魚キャラは無慈悲に噛みちぎっていたものを、たっぷり時間をかけて口に運び、ご丁寧に舌の上に乗せちゃう。
で今度は、助けに来たエレンが巨人の口が閉じるのを両手で懸命に押さえる。この辺は、マンガのひとコマだと違和感なく読み進められるものが、実写だと途端に印象が変わってしまう典型だろう。
それでも俳優陣はよくやっていると思う。長谷川博己や石原さとみは、これまで見たことがないタイプの個性を出しているし、桜庭ななみや、食べられちゃったけど水崎綾女も短い時間の中で魅力を十分発揮していた。水原希子だって悪くない。
世間では反感を買いやすいSEKAI NO OWARIのテーマ曲もよくできていて、売れているグループの勢いを感じる。
総括すれば、困難なお題に対して多くの要素をよく盛り込んで、キャストもスタッフも全力で取り組んだことは伝わってくるけれど、引き込まれてカタルシスを感じるという次元にはほど遠い内容だったというところ。
当初名前が挙がっていた中島哲也氏が監督を務めていたらどうなっていただろうと思わずにはいられない。
(50点)