Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ゾンビ処刑人」

2011年11月26日 15時19分12秒 | 映画(2011)
少し笑えて、ひたすら悲しいグロ。


ゾンビはかつて、人々に恐怖をもたらす存在だった。

いや、もちろん大前提は変わっていないのだが、その存在が意味するところの深さからか、PVで踊ったりコメディー作品を彩ったりと、ゾンビの活躍は大きな広がりを見せている。

本作のゾンビは、いわゆるゾンビとは少し設定が異なる。

頭の機能は極めて正常に近く、本能に任せて人肉を食らうなどということはしない。太陽の光が出ると活動が停止するなど、ややヴァンパイア的な要素が取り入れられている。

ヴァンパイアも特に北米では根強い人気を誇る。「トワイライト」シリーズに代表されるように、堂々と大恋愛叙情詩の主役を務めるほどだ。

ゾンビの外形にヴァンパイアの儚さを加えたのが、本作の"Revenant"=「亡霊」である。

HP等の紹介では、思わぬ形でヒーローになってしまったゾンビと書かれているので、コメディーを期待してしまったのだが、主人公であるバートと、その友人たちが辿る道は救いようがないほどに悲しい。

バートの葬儀では、誰もが突然の死を悲しみ、恋人だったジャネットは「もう少し二人でいられる時間があったなら」と悔やむ。

そこへ姿は変わったとはいえバートが帰ってきたのだから、それはもう願ったり叶ったりとなるはずなのだが、実際はまったくそうはならない。

看護士の友人ただ一人が「迷える亡霊は正しく成仏させるべき」と助言するが、親友のジョーイは手を下すことができない。せっかく親友が帰ってきたのにと。

そのうちに彼らは、取り返しのつかない坂道を転げ落ちていく。まあ、首も腕も飛んでちぎれて。さすがシアターNである。

頭と最後を飾るのは中東での戦争である。

良かれと思ったことが、どうにもコントロールできずに余計に多くの大切な人たちを巻き込んでいくという図式がぴたりと当てはまる。

この「亡霊」は、いまこの時間も戦地で戦い続けている現実の存在ということなのだ。

(70点)
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「ラブ&ドラッグ」

2011年11月19日 22時18分21秒 | 映画(2011)
ありのままを受け入れる難しさ。


「ミッション:8ミニッツ」に続いてのJ.ギレンホール

おそらく好みがはっきり分かれる顔だと思うが、今回のように明るい表情で営業トークされると、なんか「いい男だよな」と思ってしまう。

映画全体も、若くしてパーキンソン病に苦しむA.ハサウェイ演じるマギーとの恋愛が軸であり、ともすると重い展開に陥りそうなところを、下ネタ系をふんだんに盛り込み敢えて軽い筆圧で描いてみせる。

この変化球はおもしろい。騙されたまま話に引き込まれてしまう。

かたや軽い日常のアプローチとして、かたや重い日常から少しでも逃れるために性的関係から始めることを選択したはずであった。

そんな言ってみれば対照的な二人の関係が、見えない強い力によって引き寄せられていく。

遊び人を自負するジェイミーだが、根っこにあるやさしさが頭をもたげ、彼女をどう愛すればいいのか苦闘する。

相手を思えばこそのやさしさが通じない。それほどに重い病気という壁。

象徴的な場面は二人でシカゴへ行ったときだった。

マギーは、不意に立ち会えた患者の集まりで心を軽くすることができ、ジェイミーに心からのお礼を述べる。一方でジェイミーは会議場で会った男性から「アドバイスするとしたら別れることだ」と告げられる。

対照的な表情を浮かべ並んで歩く二人。根底が異なる二人はまともに近づこうとしてもかえって行き違うだけなのだろう。

この辺りまでの描き方はよかった。問題はラストだ。

ジェイミーもマギーも何を学んだのか。どうもそれが曖昧なままジェイミーの行動が前のめりに進んでいったように見えた。

全体の軽い画の中で、重い決断をしろというわけではないが、マギーから見て「これなら大丈夫」と思える何かがせめて欲しかった。

それにしてもJ.ギレンホールもA.ハサウェイも随分励む場面が多かった。見た目かなり濃い二人だが暑苦しくなるまでには至らず。

コメディーパートのオチの部分を一手に引き受けた弟役もぎりぎりでウザさを抑えられてたかな。

(75点)
コメント (6)
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「ミッション:8ミニッツ」

2011年11月06日 00時40分21秒 | 映画(2011)
解き放たれた魂は甘き彼岸へ。


「映画通ほどダマされる」というほどではない。

同じシチュエーションを繰り返す演出は「バンテージポイント」を彷彿とさせる。一方で主人公の訳ありな状況には、「これはひょっとすると、あれか?」とだいたいの想像がつく。

ただ、この2つのいわゆる鉱脈はまだまだ枯渇してはいない。この作品にはこの作品なりのおもしろさがあった。

事故現場の光景では、人物や小物の細やかな設定と配置がサスペンス感を盛り上げる。

自分を取り巻く大きな目論見を気にしながらも、制限された時間の中でとにかく糸口を探さなければならないという緊張感がいい。

そして戻された現世で繰り広げられるのは、動きを制限された中での謎めいた指揮系統とのやりとり。

対照的な世界を強制的に行き来させられる主人公はたまったものではないが、観ている側は心地良い触れ幅に強く引き込まれる。

そしてダマされるラストであるが、これは騙す騙さないという括りにはならない気がした。

ひとことで言えば、かなり甘い。

科学者が、過去を体験できても変えることはできないと言っている中での、一つの答えでもあるのだが、信じる者は救われる感じが満載である。

ある意味ファンタジーに片足なり突っ込んでいるような状況に見えた。

と言いながら、ラストの収め方を含めてかなり好きな作品なのではあるが。

(85点)
コメント (4)
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