Con Gas, Sin Hielo

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「ローマでアモーレ」

2013年06月30日 04時49分18秒 | 映画(2013)
同じ説明不能なら、楽しい方がいい。


W.アレンの映画では、いつも愚かな人間が出てきてイタい行動をする。ただ、描き方がさらっとしているからか、喜劇にしろ悲劇にしろ何故か観た後に心の中にどこか温かな空間が生まれる気がする。

齢70を過ぎて突然世界を回り始めたW.アレン。今回の舞台はローマだ。

とはいえ、街並みや話す言語が違っても出てくるのは人間。ちょっと上流な、でも基本的に誰とも大差ない感覚を持つ人たちが、「分かってるはず」なのに少しずつ進む道がずれていく様子が、いつものようにさりげなく描かれる。

今回も配役は豪華だ。J.アイゼンバーグE.ペイジなんて初顔も出てきて楽しい。

最近ごぶさたすることが多いW.アレンも久々にしっかり出てくる。相変わらず「共産党がどうの」とか言ってる。楽しい。

映画全体は4つの物語を断片的に切り取ってつないでいる構成。群像劇らしく最後にお互いがどこかで交わるのかと思いつつ、なんと何もない。

彼らをつなぐのは、冒頭の交通整理員であり、最後の窓から語りかける男であり、ごく普通のローマの人と街並みというオチ。この、ちょっとしたさりげない意外性が、たまらなく楽しい。

つながらない4つの話ならオムニバスで1本ずつ流した方がいいのではと思うけれども、何の関係もない普通の人たちが少しずつ外していく様子が並行して描かれるのが実に効果的。

登場人物が増えて整理できなくなるのではという危険性も、有名な俳優ばかりじゃないにも拘らず、はじめにキャラクターをしっかり植え付けているから、何の迷いもなく話に入っていける。

話もそれぞれ種類が違っていて、簡単に言えばアレンが出る、アレンが出ない、狂言回しを使う、突然不条理なことが起こる、これまでにも見た様々な要素がふんだんに盛り込まれる。

派手な演出ではないけど、普通の日常からするととんでもないあり得ない暴走をし始める人たち。それでも観ている方が興醒めしないのは、根底にある諸々の設定が間違いなく「あるある」なのだからだと思う。

根底が覆される心配がないのなら、演出の遊びは考えが及ばないほど振り幅が大きい方が楽しい。このあたりはW.アレン長年の技であり真骨頂ともいえる。

シャワーで舞台なんて薄々予想はしていたけど、実際に出てくれば想像以上で思わず吹き出した。首をはねたくなるなんて批評を自分の役に向けるのも楽しい。

収拾がつかないくらい遊ばせておきながら、突然あっという間に店じまいするところも、らしくて楽しい。

いろいろあってバカもするけど、それが人生。かつて「人生万歳!」という作品があったけど、どの作品でも人生や人間に対する彼なりの愛情が伝わってくるから好きだ。

彼の作品を観られるというだけで、人生は少しだけ楽しく豊かになれる。それだけは間違いなく言えると実感した。

(95点)
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「オブリビオン」

2013年06月02日 00時24分05秒 | 映画(2013)
俺俺、ジャックハーパー。


ジャックリーチャーではない、念のため。観ていないけど。

予告がなかなか良かったので楽しみにしていた作品。近未来の地球って、かなりの確率で壊滅しています。まあ豊かになった世界ではドラマは生まれにくいのだろう。

序盤のジャックのミッション。どこか違和感を感じて、早々に疑いの目で画面を見るようになった。

それは映画として狙った方向なのかミスリードなのか分からないが、疑い出すとちゃんと全てが怪しいようにできている。ドローン、怖いよ。

大枠の予測は合っていたが、細かいところで意外性を感じられる部分はあったので、それなりに楽しむことはできた。

最も優秀な人材を取り込むことで効率的に地球を滅ぼそうとしていたのが、優秀さを求めたところにほころびが出てしまったという皮肉。

人を愛する気持ちは、数十年隔絶されようが、複写し過ぎて記憶が薄まろうが、簡単に消滅するものではないということも根底には流れていた。

ただ、ラストはどうかな。あれだとジャックは微かな望みではなく、致命的な敵失に過ぎなくなってしまうような気がするのだけど。

(65点)
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