Con Gas, Sin Hielo

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今年の12館(2017)

2017年12月30日 00時01分16秒 | 映画(2017)
事あるごとに言うのは、ぼくは映画好きというよりも映画館好きだということ。昔は、映画館ごとに佇まいが違ったし、予告前に流れる地方色溢れるCMが好きでした。現在はどこへ行っても同じ仕様のシネコンばかりになり、以前のような楽しみ方はできなくなりましたが、それでも「あの映画はあの土地へ行ったときに観たんだ」と関連付けて思い出すのが秘かな楽しみであることは変わりません。

TOHOシネマズ海老名(神奈川)35回

夏ごろに早々と1か月フリーパスポートの権利を得たものの、いつから使うか決めかねているうちに年末になり、仕事の関係で土日しか映画館に行けなかったため、パスポートで観た映画のほとんどがホームグラウンドという結果になりました。しかし、年間TOP5の作品はいずれも海老名以外で観ているというのも不思議な話です。

TOHOシネマズ新宿(東京)4回

定期で行ける新宿は今年も2位。早い時間に席が売り切れてしまうので、パスポート向きのところではありません。ただ、TOHOシネマズは都心に次々に新しいシネコンを作っているので、来年はもう少し分散するかもしれません。

TOHOシネマズららぽーと横浜(神奈川)3回

パスポート初日に一気に3本観たことで入ってきました。ひさしぶりにプレミアスクリーンを利用したけど、いまプレミア料金で上映することなんてあるのでしょうか。豪華な椅子はありがたいけど。

新宿シネマカリテ(東京)2回
TOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京)2回

良作の確率が高い単館も最近減りましたが、今年はお世話になったのはシネマカリテのみ。水曜日男女問わず1,000円というところが何よりうれしいです。六本木ヒルズはプレミアムフライデーの「ララランド」と「エル ELLE」。アニメの字幕版ではありませんでした。

TOHOシネマズ仙台(宮城)1回
TOHOシネマズ船橋(千葉)1回
TOHOシネマズ錦糸町(東京)1回
TOHOシネマズみゆき座(東京)1回
ユナイテッドシネマアクアシティお台場(東京)1回
立川シネマシティ(東京)1回
イオンシネマ海老名(神奈川)1回

それにしても今年はTOHOシネマズばかりでした。そりゃマイルも貯まるわけです。
みゆき座は来春には閉館してTOHOシネマズ日比谷へ移ることになったんですよね(シャンテだけ残る)。歴史あるみゆき座の名前がついに消えるとすれば残念です。東京へ出てくる前からのあこがれの映画館で、現在の場所に代わる前から足を運んだものです。
立川へ行ったのは約20年ぶりで、名物の爆音上映というのを体験してきました。独特な座席、照明など映画館愛を感じる場所でした。
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今年の51作(2017)1位→25位

2017年12月29日 22時34分37秒 | 映画(2017)
今年は2年ぶりの50作超え。もちろん年末に1か月パスポート砲を放ったことが大きいのだけれど、今年は圧倒的に洋画の年だった気がする。一般の市場も同様の傾向と聞いている。

モンスター級の作品がなかったとはいえ、MARVELとDCが競うように新作を発表し、ディズニーやユニバーサルも好調に推移、アカデミー賞関連は「ララランド」が引っ張る形からバラエティに富んだ良作が並んだ。

「ララランド」と言えば、映画館で観たのはプレミアムフライデーの初日だった。プレミアムの名前にぴったりな作品ではあったのだが、肝心の政策の方は散々に叩かれて今は見る影もなくなってしまった。

そんな2017年の記録は次のようになりました。

1.「スウィート17モンスター」(5月3日)

わが子はもうすぐ17歳。普通の17歳は、目立って輝いていなければ、目立って悪いわけでもない。学校と家庭という狭い世界の中で自分を形づくろうと様々に自分をぶつけている世代だ。誰もが共感できる愛おしい女の子をH.スタインフェルドが好演。親世代はW.ハレルソン演じる教師の目線で優しく見守る構図だ。

2.「ゲットアウト」(11月4日)

今年最も唸った作品。一見何事もない田舎の家に漂う怪しい空気の作り方。不気味な登場人物の演技。それらの謎が解けるときの完璧な繋がり感と、畳みかけるようなクライマックスへの展開。すべてが独創性に溢れて言うことなしの快作。

3.「ラ ラ ランド」(2月24日)

今年前半の話題をさらった一作。夢の世界を作り上げたD.チャゼル監督の手腕はお見事。主演男優賞は逃したがR.ゴズリングもすっかりトップスターの風格。こんなにかっこよかったか?

4.「マンチェスターバイザシー」(7月8日)

大きな挫折の後も人生は続く。場合によっては、辛い過去に直面しなければならないこともある。でも、人との関わりは、時には問題を起こすが、時には癒しにもなる。だから今日も新しい出会いを求めて、新しい人生を生きていく。

5.「SING」(3月20日)

80年代の洋楽はツボである。本作はもっと時代の範囲が広かったが、とにかく音楽でテンションが上がる。最近のユニバーサルは物語も安定しているから、まさに万人におすすめである。

6.「スターウォーズ/最後のジェダイ」(12月16日)

偉大なシリーズだからどうやっても様々な声が出る。保守的に作れば新鮮味がないと言われ、革新的に作れば「こんなのスターウォーズじゃない」と言われる。個人的には全篇通して惹きつけられたのでアリだが、レイアがフォースでメリーポピンズになったのは確かにちょっとお笑いではあった。

7.「カフェソサエティ」(5月6日)

W.アレン監督が描く愚かな人間を見るとどうして元気が出てくるのか。誰もそんなに変わりないと安心する?何よりアレン自体が、こじらせ系なのに好きなことやって幸せそうだからかもしれない。

8.「新感染 ファイナルエクスプレス」(9月17日)

意外にもこれまでなかった韓国発のゾンビ映画。超高速で移動する電車の中での惨劇という設定と、そこから派生的に生まれる独創的なアクションシーンが娯楽作品としての質を高めた。

9.「LOGAN/ローガン」(6月4日)

H.ジャックマンというスターを誕生させたウルヴァリンがその役割を終えた。シリーズは広げるだけではなく、きちんと引き際まできれいに描いてこそということを実感した。

10.「マイティソー バトルロイヤル」(11月17日)

シリーズの作品が1本できるごとにアベンジャーズの層が厚くなっていく。今回でソーはかなり成長したから、次のアベンジャーズがますます楽しみ。ロキがどう絡むかも含めて。

11.「沈黙-サイレンス-」(1月24日)

江戸時代のキリスト教弾圧は現在の価値観に照らし合わせれば酷いの一言に尽きる。相手が相手なら延々と責任や謝罪を要求されてもおかしくないくらいだが、そういうことはないので、じっくりと向き合った映画を作ることができるわけだ。

12.「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(8月19日)

20年以上前の実写ドラマをアニメ化。当時主人公を演じた奥菜恵が相当評判が高かったらしいが、彼女昔から良いと思ったことがないので、アニメの方がいいや。

13.「スプリット」(5月12日)

正直点数を高くし過ぎた感はある。言われてみれば、いつものM.ナイト・シャマラン監督節。あり得ないものが堂々と画面に登場するから一歩間違えればコントになってしまう。

14.「はいからさんが通る 前編 紅緒、花の17歳」(11月25日)

長生きはするもので、来年まで待てば未完のアニメの結末が見られることになった。何十話にもなる話を詰め込んだため、さすがに話の飛び方が著しいが、立派な声優陣までそろえて作ってくれただけでも感動ものである。

15.「ブレードランナー2049」(11月11日)

ハンソロに続いてデッカードまで復活するとは驚いた。近未来という実際にはない世界観を確立させた前作を継承するのは難しかったと思うが、個人的にはほぼ満足した。

16.「ローグワン/スターウォーズストーリー」(1月19日)

新しいスターウォーズは待たせない。正規のシリーズではないからテーマ曲は流れないけど、辻褄が合うようにうまくストーリーをこしらえるものだと感心。

17.「ギフテッド」(12月2日)

天才の子供がいたらどこまで可能性が広がるのだろう。と思いがちになるが、方向を誤って袋小路へ押し込んでしまうこともある。寄り添いつつも子供の自主性にある程度委ねることが必要なのかな。

18.「スパイダーマン:ホームカミング」(8月11日)

「アメイジング~」シリーズがよく分からなくなったまま、新たなるスタートを切ったクモ男。高校生活が背景として描かれるから、アメコミヒーローの中では比較的明るく軽いテイストになりやすい。「ホームカミング」ってパーティーだったのね。

19.「美女と野獣」(5月1日)

誰もが知る題材を、考え得るかぎり完璧に近い配役で実写化。ディズニーらしくそつのない仕上がりと言えるが、枠を超えるものも特になし。

20.「エル ELLE」(8月26日)

被害者なのに強い。高圧的だから同情が集まらないという個性的な女性をI.ユペールが体を張って熱演。決して悪人でもない彼女は自分のやり方で前に進む。

21.「ムーンライト」(4月1日)

アカデミー作品賞受賞。賞レースは時代を映す鏡なのだが、差別や貧困といった問題に繰り返し光が当てられてきているのに、一向に改善しないのは悲しいことである。

22.「メッセージ」(5月28日)

難解な作品であるにも拘らず、ばかうけの印象が強く残ってしまったちょっと不遇な作品。手探りで宇宙人と交信をする描写が独創的でおもしろかった。

23.「パッセンジャー」(3月25日)

「宇宙のタイタニック」なんて言っている宣伝があった記憶があるが、もし純愛に感動したくて観たらとんでもない曲球に怒り出すかもしれない。でも、この不道徳は何故か許せてしまった。

24.「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」(4月5日)

近年、数々の作品でその目ぢからに劣らない存在感を発揮しているJ.ギレンホール。心の不安定さから身の回りを破壊し尽くすようになる役はハマっていた。

25.「ドリーム」(10月14日)

天才女性数学者が米国の宇宙開発プロジェクトの重要な役割を担ったという実話を基にした物語。全体的に明るいトーンで綴られているが、日常の至るところに差別が存在している光景が印象的だった。
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今年の51作(2017)26位→51位

2017年12月29日 08時44分08秒 | 映画(2017)
26.「怪盗グルーのミニオン大脱走」(7月22日)

直接話に絡まなくても看板はミニオン。映画の中と同じようにキャラクターとしても自由奔放に動き回るようになった。

27.「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(12月16日)

一生懸命が似合う土屋太鳳。明るく元気な姿と、発作からリハビリまでの落差に、いつ襲われてもおかしくない病気の怖さと日常の健康のありがたさを実感した。

28.「僕のワンダフルライフ」(10月7日)

飼育頭数でネコに抜かれてしまったが、飼い主に忠実なイヌの姿は反則級に無敵だ。そういえば来年は戌年。

29.「IT/イット"それ"が見えたら、終わり。」(11月3日)

「それ」が見えても全然終わらない詐欺的表題ではあったが、口コミ効果でわが国でもスマッシュヒット。子供ごころにピエロは怖い。

30.「ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命」(12月23日)

真実を基にした物語は多く、どれも重い現実を伝えてくれるのだが、欲を言えば意外性がないところがやや残念。

31.「セル」(2月19日)

あまり評判は良くなかったようだが、電波に体を乗っ取られる画(大きく口を開いて電波を受け渡し)は強い衝撃だった。

32.「LION/ライオン 25年目のただいま」(4月15日)

これも奇跡の実話として映画向きの話ではあるのだが、積み重ねて感動というよりグーグルアースの偶然に見えてしまったことが残念。

33.「ザマミー/呪われた砂漠の王女」(8月5日)

まだまだ若くアクションができるT.クルーズ。「ダークユニバース」プロジェクトの第1弾に抜擢されるも、映画自体は地味な印象が否めず。

34.「スノーデン」(2月14日)

個人的にスノーデンはあまり支持していないので、評価はこんなところ。少なくとも万人受けするヒーローではない。ビハインドを作る人はいないだろうか。

35.「ダンケルク」(9月18日)

C.ノーラン監督は頭が良過ぎるのかな。題材があまり馴染みがない点や、戦時下の兵たちが一様にくすんでいて見分けがつきづらい点で入り込めず。

36.「ガーディアンズオブギャラクシー:リミックス」(5月14日)

一般的には前作より評判が良いようだが、個人的には逆。ベビーグルートは良かったけど、全能の神の存在が大き過ぎる割りに普通に戦っちゃうところがどうにも。

37.「ゴーストインザシェル」(4月8日)

S.ヨハンソンビートたけしの存在感。一人だけ日本語しゃべる違和感も、超越した存在でなんとかセーフ。

38.「ジャスティスリーグ」(11月25日)

少しずつ盛り上がってきたDCヒーロー。しかし、クリプトン星の問題児が今回もかき回す。ブルースウェインにトニースタークの余裕が欲しいところ。

39.「オリエント急行殺人事件」(12月15日)

オチを知ってる推理ものは辛い。コスプレしないJ.デップのふてぶてしい演技は良かった。

40.「スイスアーミーマン」(9月23日)

本年いちばんの問題作。衝撃の死体を演じたD.ラドクリフは、普通にしていても死相が漂って見えてしまうように。

41.「ドクターストレンジ」(1月28日)

映像のインパクトに物語を融合しきれていなかった印象。観る方が頭が悪いと言ってしまえばそれまでではあるが。

42.「クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ」(5月1日)

今年の「クレしん」はいまいち。春日部では現在サトーココノカドーが2度めのイベントを開催中。

43.「ちょっと今から仕事やめてくる」(6月7日)

「働き方改革」の必要性を端的に訴えるタイトル。これだけで応援したくなる映画だ。少しずつ世の中が変わることを期待している。

44.「ザサークル」(11月25日)

道徳的に問題のある主人公にあまり反省している様子がないと、応援しようという気にはならないものである。

45.「GODZILLA 怪獣惑星」(12月9日)

このアニメシリーズは、ゴジラの長く多様な歴史にその名を刻むことができるのだろうか。本作を観るかぎり特別に何か秀でたものがあるとは感じられなかったが。

46.「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」(9月16日)

奥田民生は、いくら憧れても30代でなれるものではない。なったらそれはそれで怖い。水原希子は世間の評判はいまいちなところがあるけど、華やかさを持つ女優であることは間違いない。

47.「フラットライナーズ」(12月23日)

たった一つの過去の過ちを取り繕うだけで大きな武器を得られるのであれば、いけないことする人が続出しちゃうんじゃないだろうか。

48.「ワンダーウーマン」(9月2日)

G.ガドットを発掘したことが本作唯一最大の功績。

49.「カンフーヨガ」(12月23日)

J.チェンがボリウッドダンスを踊ることが本作唯一の見どころ。

50.「サバイバルファミリー」(2月12日)

言いたいことは分からないではないが、サバイバル生活に流れがなく切り貼り+つなぎ合わせになっているため、極めて消化不良。

51.「ひるなかの流星」(3月26日)

これって「いいなあ」って憧れるのだろうか。コミックだとさらっと流せるのかもしれないが、生身の人間が演じるととても気持ち悪い。ただ永野芽郁はかわいい。
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「ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命」

2017年12月27日 00時12分05秒 | 映画(2017)
勇気が扉を開く。


人々や社会に多大な損失をもたらす戦争。しかしその裏では、オスカーシンドラーや杉原千畝のように、勇気ある行為で多くの人々の命を救った心温まる物語も存在していた。

本作で取り上げられたのは、ワルシャワで動物園を営業していた夫婦、ヤンとアントニーナである。

戦禍に巻き込まれ動物園は壊滅状態になったが、そこから彼らの思いもよらない作戦が始まる。それは、動物園を兵士の食糧を賄うための養豚場として存続させると同時に、敷地内にユダヤ人を匿い、秘密裏に強制居住区から脱出させるというものだった。

豚のエサを運搬するトラックに紛れ込んで居住区から動物園へ。危険と隣り合わせではあったが、用意周到な作戦はかなりの確率で成功した。

主人公であるアントニーナは、戦争が始まる前は動物園経営者の妻(Zookeeper's wife)に過ぎなかった。しかし、ユダヤ人を匿うというヤンの提案に同意して以降は、文字通り命を懸けて守り抜く。

昼間はヤンは外出しているため、隠れ家を守るのはアントニーナ一人。たびたびドイツ将校が訪ねてくるのだが、彼女は不信感を与えないよう表情を変えずに渡り合う。

いくらかの脚色はあると思うが、自分たちの命をも危険に晒してまで他者に尽くす精神に偽りはまったくない。こうしたアントニーナの懸命な姿が本作の最大の見どころである。

主演のJ.チャステインは総合プロデューサーも兼任しているが、こうした女性の静かな強さに惹かれたのではないだろうか。実際に彼女が演じるアントニーナの佇まいにそれが十二分に現れていた。

(70点)
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「フラットライナーズ」

2017年12月26日 23時15分05秒 | 映画(2017)
反省しないのび太に未来はない。


大作、シリーズもの、アニメ作品が幅を利かせる中で、何かの偶然で公開時期がここになったとしか思えない正月映画らしさ皆無の本作。

1990年に製作されたという前作は観ていないが、キャストを見るとなかなかの顔触れで興味深い。今回の作品は、解説を読むかぎり単なる焼き直しではなく、設定が一変されているようである。

主役はひさしぶりのE.ペイジ。一時期の勢いが見られなくなっていただけに、どのような活躍を見せるのか期待が膨らんだ。

主人公は、総合病院で臨床実習に従事している5人の若き医学生。E.ペイジ演じるコートニーは、心肺停止後の脳に何が起きるのかに尋常ではない関心を抱いており、同僚を誘って禁断の臨死実験を実行に移す。

予告を観ると、小さな実験が次第にエスカレートして取り返しがつかなくなるような流れに見えたが、実際はコートニーの実験後の変貌ぶりを目の当たりにして、他の学生たちも追随するという話である。

各人が様々な臨死体験をするが、共通点としては、過去の強い記憶が呼び起こされ、連鎖的に様々な感覚が以前より鋭くなるといったものである。斜め読みしたような書籍の内容を詳しく思い出したり、ルービックキューブを秒速で完成させたり、学ぶことが求められる学生にとってはそれは魅力的な能力なのである。

しかし、うまい話は簡単に転がったりはしていない。やがて彼らは過去の記憶にとり憑かれたかのごとく、幻覚に悩まされるようになる。

本作のテーマは、超えてはいけない一線とはどういうことかであると思う。

人が生きていく中で出会う様々な欲望をどうコントロールするか、言い換えれば、欲望に支配された人間に待ち受ける運命とは何か。社会の構成員として基本的かつ非常に重要な視点である。

しかし、本作は肝心なところを置き去りにしてしまう。自らの愚かさがもたらした恐怖を、意外にあっさりと克服するのである。もちろん大変な思いもするが、映画で描かれた部分を総合的に判断すると「あっさり」という印象を抱く。

90年版とどのくらい違っているのか興味があるが、こういう題材を取り扱うのであれば、もう少し謙虚に作ってほしいというのが正直な感想だ。

(60点)
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「カンフーヨガ」

2017年12月26日 22時12分10秒 | 映画(2017)
あなたもわたしも一帯一路。


わが国におけるJ.チェンの人気の頂点は1980年代前半だった。

当時定期購読していた「ロードショー」の人気男優ランキングでは不動の1位。若々しさと躍動感に溢れ、かつコミカルな要素が満載な彼の作品は、本当におもしろかった。

やがてハリウッドが彼に追いつき、人気は世界的なものになった。ハリウッド発としての代表作である「ラッシュアワー」の公開は1998年。ほぼ時を同じくして香港は中国に返還された。

香港は行ったことがないので印象でしか語れないのだが(先入観と言ってもいいのかもしれない)、やはり返還後の香港にはどこか中国共産党の影がちらついてしまう。

今回の作品は中国・インドの合作。これ以上ない明快な題名が観る側の興味を引き付けるが、この両国は国境付近で小競り合いをしているのも事実。娯楽作品の皮を一枚めくれば・・・などと感じてしまう。これはよろしくない。

また、そうした要素を除いても、60歳を超えたジャッキーはさすがに以前のようにはいかない。考古学の権威という役で若い弟子たちのアクションを絡ませることでなんとか盛り上げるが、ジャッキー自身がいちばん輝いて見えたのは、エンディングのボリウッド風ダンスシーンであった。

中国とインドの融合というよりは、それぞれの材料を別々に調理して同じテーブルに上げているように映った。予算をつぎ込んだと思しきアクションシーンも多くあったが、基盤となる歴史的な財宝の話がどうにも淡白で興奮が伝わってこなかった。

ジャッキーは映画界の宝であり、年齢に相応しい役どころがまだまだあると思うが、本作にその要素を見つけることはできなかった。

(55点)
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「スターウォーズ/最後のジェダイ」

2017年12月17日 14時07分04秒 | 映画(2017)
若い力が新たな時代を創る。


言わずと知れた映画史上最強シリーズのエピソードⅧ。G.ルーカスの手を離れ、ディズニー傘下で再発進してからは2作めとなる。

前作のときのような世紀のお祭り騒ぎとまではいかないまでも「スターウォーズ」である。映画館の空席情報を見たら、金曜深夜27時台のTOHOシネマズ新宿が満席だったのには驚いた。

前作「フォースの覚醒」はとにかく「無難」という言葉が最もしっくり来る出来ばえだった。

観た直後こそ高揚感もあって高めの点数を付けたが、振り返ってみれば、キャラクターの弱さや、これまでの焼き直しに見えてしまうストーリーの新鮮味のなさといった欠点が多く目に付くようになった。

それから2年。これまでのシリーズの中では最も短期間で続篇を発表することになったのだが、結果を見ればこれは成功だったのではないかと思う。

前3部作の20年前から比べても世の中の流れは速まっている。もちろん「スターウォーズ」は別格だが、他の大作に上書きされて風化する前に次の手を打つのは当然のことだ。

中間年である昨年正月には「ローグワン」を、来年の半ばには「ハンソロ」のスピンオフを繰り出してくる点を見ても、制作側が絶対に負けられない戦いと肝に銘じていることが伺える。

話はずれたが、2年ぶりの続篇。まず思ったのは、新しいキャラクターたちがだいぶこなれてきたということである。

それは劇中での位置づけに加えて、演じる役者たちの実績が積み上がってきたことが大きい。

レイ役のD.リドリーは、観たばかりの「オリエント急行殺人事件」で重要な役を演じていたし、前作でダースベイダーの後継としては物足りない印象が強かったA.ドライバーは今や引っ張りだこ。フィン役のJ.ボイエガも活躍が目覚ましい。

それだけで作品の価値が上がるというのも現金な話だが、今回、カイロレンがほぼ全篇マスクを被らずにいたことと無縁ではない気がした。

「シスでも、ジェダイでもない、我々の時代を作る」と言ったカイロレンの言葉どおり、ついに新3部作として独立を果たしたということだと思う。

物語の中身も見どころがぎっしり詰まっていた。ファーストオーダーに息の根を止められる寸前まで追い込まれたレジスタンスの痛々しい戦いが「動」ならば、その裏で繰り広げられるジェダイを巡るレイとルークのやりとりは「静」。

そこに割り込むカイロレン。レイアとハンソロの息子である彼とルークの間に何があったのかの全貌が明らかになり、それぞれの状況は二転三転する。

今回よく分かったのは、カイロレンは明らかにダースベイダーの後継ではないということである。最後の瞬間まで完全な悪を貫いたベイダーに比べて、カイロレンは未熟さが完全に露呈している。

敵としては物足りないのかもしれない。ただ、それ故に今回「ひょっとしたらここでジェダイの心を取り戻すのかも」という期待を持った場面があったことも確かである。不確定要素として観る側を振り回す装置になったのかもしれない。

レジスタンスや異星生物にも新しいキャラクターが次々に登場。B.デル・トロの役柄はエピソードⅨで重要になるのだろうと推測するなど、次作への興味はますます尽きない。

(90点)
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「8年越しの花嫁 奇跡の実話」

2017年12月16日 20時53分26秒 | 映画(2017)
愛こそすべて。


土屋太鳳はそれほど好きな女優というわけではない。

がんばり屋だし、それなりにかわいいし、性格も良さそうなのだが、あまり良い印象がなかったのは朝ドラの「まれ」のせいだろうか。CMもいろいろ起用されているが、及第点を超える魅力を感じることはなかった。

今回彼女が演じた役は、突然意識不明の病に陥った女性・麻衣。彼女には結婚を約束した男性・尚志がいて挙式を間近に控えていた。

劇中には3タイプの麻衣が現れる。尚志と付き合ってたころの快活な麻衣、病に倒れてまったく体の自由が効かなくなった麻衣、そして意識が戻ってから記憶の消失に苦悩する麻衣だ。

冒頭に一瞬だけ、意識が戻って間もないころの麻衣が映るが、普段の土屋太鳳とのあまりの違いに驚かされる。と同時に、直後の場面で麻衣が元気に振る舞うほど、この後の展開が怖くなる。

300万人に1人という言葉が出てきていた。劇中の描写は、突然頭が痛くなり、記憶が定かでなくなり、錯乱やけいれんを起こすというものだった。

発作の症状と、意識不明になった後に寝たきりで手だけが勝手に動く様子は、演技だと分かっていても見るのが辛くなる場面だ。顔のむくみはおそらく特殊メイクだろうが、がんばり屋の土屋太鳳の面目躍如である。

そんな理不尽な不幸に遭いながらも、回復を信じて懸命に愛情を捧げ続けた尚志とご両親。脚本を岡田惠和が手掛けたということもあって、いい話、泣ける話にきっちり、「過ぎる」くらいに仕上がっている。

おそらく現実の記憶の回復やリハビリはもっと過酷なものだったと思う。現在も回復途上なのかもしれない。

しかしこれは、麻衣と尚志の強い絆を描くことを重視した場合、闘病生活の辛さよりも麻衣の記憶を巡る二人のやりとりに時間を割いた方が良いという判断だったのだろう。モデルになった二人も満足じゃないかな。

薬師丸ひろ子杉本哲太も良かった(もちろん佐藤健も)。苦しい気持ちを抑えながら精一杯の愛情を注ぎ合う家族は素晴らしい。図らずも麻衣のような、土屋太鳳のような娘がいたらいいなと思ってしまった。

(75点)
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「オリエント急行殺人事件」

2017年12月16日 20時18分06秒 | 映画(2017)
レイはエレガントな美人さんだった。


あまりにも有名なA.クリスティ原作の推理小説を、K.ブラナーが豪華俳優陣を配して再映画化。

本作の特徴は、何よりも一度観たらまず忘れないオチにある。観に来ているお客さんは中高年の人が多い気がしたが、少なく見積もって3割くらいは結末を知っているとして、果たしてその人たちを満足させるデキになっているかが評価のカギであった。

人種、年代、性格とバラエティに富んだ配役は良かったし、内に外に動くカメラワークは、こちら側が豪華列車の旅を一緒に楽しんでいるような楽しい気分になった。

しかし、やはり結末を知っていると肝心のポアロ探偵の推理の鋭さが伝わってこなくなる。

昔にあった事件と、出自がバラバラな乗客たちが徐々につながりを見せていく経過こそが高揚感を生み出していくはずが、一瞬で後に続く展開がだいだい分かるという残念さに変わってしまうのだ。

すべての展開を詳細に憶えているわけではないから、ポアロと乗客一人ひとりのやりとりはそれなりに楽しむことができたが、まあ仕方ないよねといったところ。

もともと推理小説・マンガの類は、展開の都合が良過ぎると思ってしまってあまり性に合わないという面もある。フリーパスがなかったら観なかったのかもしれない。

エンディングを観るかぎりは、このまま「ナイル殺人事件」へと続いていくようだ。これも小学生のころの作品でとても懐かしいが、こちらは主題歌(日本オリジナルのイメージソング?)くらいしか記憶にないので、こちらの方が楽しめるかもしれない。観るかどうかはキャスト次第だろうか。

(65点)
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「GODZILLA 怪獣惑星」

2017年12月09日 22時50分42秒 | 映画(2017)
はめこみゴジラ。


1か月無料パスポート期間は、普段では観ないような作品にも足を運ぶことがある。今回もそうだ。

記録的なヒットとなった「シン・ゴジラ」から1年ちょっとで、敢えて設定の違うゴジラを作ったというのはどういうことなのか。

わが国のお家芸とも呼べるアニメーションと、世界に知られる日本のキャラクターであるゴジラというのは、ありそうでなかった組み合わせである。

本作のゴジラは、破壊神のイメージを更に拡大し、人類が地球を捨てざるを得なくなったという設定。「シン・ゴジラ」で国の首脳を一瞬で葬り去った悪魔の光線がまたしても絶望的な威力を発揮する。

地球を飛び出したはいいが、適当な移住先が見つからないまま20年が過ぎ、疲弊した宇宙船の乗組員たちは結局地球へ戻ることを決断する。宇宙旅行の間に時間の進行にズレが生じたはずだから、ひょっとしたら地球は再び人間が住める星になっているかもしれないという淡い期待があったのだ。

しかし、再び地球へ降り立った者たちが見たものは、1万年の間地球に君臨し続けたゴジラの新たな姿であった。

ゴジラに地球を支配された後を描くという時点で、これまでのゴジラ作品とは世界観が異なっているのだが、異星人が登場してきたのには驚いた。

その点を含めて、主人公側の人物設定が結構細かい。怪獣映画でもキャラクターを作り込むのは当然のことだが、本作は人間側を描く比重が随分大きかった気がした。

「シン・ゴジラ」もそういう意味では異質であった。ただ、「シン・ゴジラ」はわが国の危機管理を徹底的に掘り下げた脚本や演出が見事だったのだが、本作が熱心に語っているのは、登場人物の過去の出来事や相関関係といったものが主で、いまひとつ深みが出てこない。

これでは、地球規模の脅威に対して立ち向かう人間たちを描いた数多ある過去の作品の枠を超えることはなく、「なぜゴジラなの?」という疑問が湧いてきてしまう。シリーズものらしいので、今後必然性が整理されるかもしれないが。

そうは言っても、本作のゴジラ=GODZILLAの造形は素晴らしい。人間のキャラクターもシリアス調で丁寧に描かれているが、時間こそ少ないもののGODZILLAの場面は違う作品かと思うくらい細やかさが桁違いである。

地底の奥深くから這い出てきたような全身のゴツゴツ感、振り向かれれば己の死を確信せざるを得ないような心のない目など、無慈悲な裁きを下す絶対的存在の威厳をいかんなく発揮している。この姿だけでも一見の価値ありである。

(65点)
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