Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

今年の13館(2013)

2013年12月29日 18時44分15秒 | 映画(2013)
今年も最後になりました。来年はもっと映画館に足を運べる年になるでしょうか。

TOHOシネマズ海老名(神奈川)34回

昨年が42回だから、こちらは思ったより減っていなかったということ。結局は遠くまで行ってまで観たい作品があまりなかったのかもしれません。

新宿ピカデリー(東京)3回
イオンシネマ海老名(神奈川)3回

今年の7月に、ワーナーマイカルシネマズがイオンシネマに変わりました。それに伴い、シネコンの元祖とも言われるWMC海老名もAC海老名に。残念では歩けど、まあ残っただけでもよしとするところでしょうか。

MOVIX利府(宮城)
TOHOシネマズ八千代緑が丘(千葉)
ユナイテッドシネマ豊洲(東京)
角川シネマ有楽町(東京)
TOHOシネマズシャンテ(東京)
新宿武蔵野館(東京)
品川プリンスシネマ(東京)
TOHOシネマズ川崎(神奈川)
ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘(神奈川)
TOHOシネマズ大分わさだ(大分)

関東以外は宮城が1回、大分が1回。行った先で映画を観るというのも妙な話ではあるのですがね。
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今年の47作(2013)

2013年12月29日 16時13分01秒 | 映画(2013)
個人的には「あまちゃん」と東北楽天ゴールデンイーグルスに後押しされた1年。

他にも珍しく明るいニュースが多く、いい年だったと振り返ろうと思った途端に尻すぼみになったのが最後の2か月。

気がつけば、まるで何かに追われて逃げるように1年の幕引きをしているのでありました。

映画館に足を運ぶ回数も少なく、印象に残った作品も少ない2013年でした。

1.「シュガーラッシュ」(4月7日)

今年観た中で、ほぼ完璧と思えたのはこの作品くらい。最近は、ピクサー印がないディズニー映画の方がデキのいいことが多くなっている気がする。物語もきっちり書き込まれているし、画も色合いが華やかで、見てとにかく楽しかった。

2.「ローマでアモーレ」(6月29日)

W.アレンのコテコテなどたばた喜劇。観ていてとてもイタいんだけど、楽しくて温かい気持ちになる。定番といえば定番で、前作に比べて評価は高くないようだけど、年齢のせいかこの安定感がたまらなく心地良かった。

3.「ゼログラビティ」(12月14日)

宇宙を疑似体験。S.ブロック演じる宇宙飛行士が、大地を踏みしめて立ち上がる場面に感動。まさにグラビティ。人間が自らの「生」を実感する瞬間とも言える。

4.「キャプテンフィリップス」(12月6日)

「ユナイテッド93」のP.グリーングラスが再び。公正な立ち位置を保ちながら、緊迫感に満ち溢れた現場を作り上げる手腕に今回もただ驚く。そこにきれいごとが入り込む余地はない。

5.「華麗なるギャツビー」(7月2日)

米国文学の名作をベースに映像と音楽で極めて独創的に彩った快作。華やかさがぴったりフィットするL.ディカプリオをはじめとした俳優陣も良かった。映画館でこそ映える作品。

6.「アイアンマン3」(5月5日)

「アベンジャーズ」でも活躍し過ぎで、存在が頭一つ抜けた感があるトニー・スターク。その分あまり遊べなくなってしまったのか、お笑いはよもやのB.キングズレーに譲る仕上がりに。それでも本年の世界No.1ヒットらしいです。

7.「ウォールフラワー」(12月1日)

昔から青春映画といえば俳優の先物買いの場であったが、本作の3人も輝いていた。特にE.ミラーは、今後も作品ごとに期待せずにはいられない。

8.「ウルヴァリン SAMURAI」(9月14日)

これはX-MENではないと批判の声が多かった作品。確かにミュータント戦争ではなく、ニッポンのへんてこやくざが出てくるところに我慢できない気持ちは分かります。でも、結構楽しめてしまったので。

9.「オズ はじまりの戦い」(3月17日)

もはや食傷気味ともいえる冒険モノではあるが、重い腰を上げて観てみるとそれなりに面白かったりする。しかも結構な名前の人たちががっちりとこの絵空事に関わっているところがまたおもしろい。

10.「死霊館」(10月11日)

普段は霊感がないからなんてのほほんとしていても、これが実話だと言われるとさすがに恐怖を感じずにはいられない。実際の呪われた人形の顔がまったくそれらしくないところが、また怖い。

11.「魔法少女まどか★マギカ[新編]叛逆の物語」(12月14日)

手を変え品を変えの来場者プレゼント作戦はどうかと思うが、独創的な世界観と、前作の大団円を敢えて壊して再構築する頭脳と力量には舌を巻く。まだ続けるつもりはあるのだろうか。

12.「ブルー はじめての空へ」(10月13日)

世界でヒットしても日本ではどうにも売り方が分からない。東洋のガラパゴスは良し悪しで、こうした優良作品が日の目を見ることなくレンタルショップの棚に埋もれていくのである。

13.「シュガーマン 奇跡に愛された男」(3月20日)

伝説のミュージシャン。情報が瞬時に世界中へ広がる現代ではかなわなかった奇跡。でも現代なら口コミで売れてたかもと考えると少し複雑である。

14.「ジャンゴ 繋がれざる者」(3月2日)

アクの強いタランティーノ映画だけど、どこかみんな楽しそうに演じてるように見える。ただL.ディカプリオはラスボスっぽく目立つのかと思っていたので意外な結果に。

15.「ワールドウォーZ」(8月11日)

これはゾンビ映画ではないとの声が多数。他方、宣伝でゾンビって言ってなかったじゃん!と批判する人も多数。両者の声を採り入れた落としどころとして、スター俳優が活躍するお気楽パニック映画です、ではどうだろう。

16.「クロニクル」(9月29日)

そろそろネタが尽きてきた感のあるプライベートムービー風作品だが、巧く逆手にとって見応えのあるモノに仕上げてきた。高校生独特の感受性を絡めた物語も冴えている。

17.「キャビン」(3月13日)

これも小品だけど相当おもしろかった。最後のモンスターとクリーチャーのお祭り状態を観るだけでも結構笑える。

18.「映画クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!」(4月21日)

「やっぱり、おいしいじゃないか・・・」は、クレしん史上に残る名台詞ではないかと思う。勧善懲悪も楽しいが、悪役を丁寧に描くことで作品の深みは変わってくる。

19.「グランドイリュージョン」(10月25日)

冒頭はスピーディーに観る側を圧倒する展開で、まさにタイトルを裏切らないと期待させるも、残念ながら後半に失速。いつになくかっこいいJ.アイゼンバーグが掘り出し物。

20.「アンコール!!」(8月1日)

予定調和といえばそれまで。でも自分の居場所を見つけられて本当に良かったと、観ていて思った。頑固者はいろいろ難しいから。周りの支えに感謝だね。

21.「パシフィックリム」(8月16日)

「カイジュー」である。わが国の文化をリスペクトしてくれるのは本当にありがたい。でも、テクノロジーもイケてるはずなんです。イェーガーも任せてもらいたかった。

22.「トワイライト/ブレイキングドーンPart2」(1月6日)

空前のシリーズがひっそりと完結。楽しませてもらいました。アリスの活躍がうれしかったかな。一方で主役の2人は私生活でお騒がせ。別の話が作れる?

23.「怪盗グルーのミニオン危機一発」(9月16日)

鶴瓶の声でも当たってしまえば、まさに勝てば官軍状態。ミニオンは広がりのあるキャラクターだから、次回のスピンオフ(?)作品も期待ができそう。

24.「世界にひとつのプレイブック」(2月23日)

J.ローレンスがすっとオスカーを持っていきました。チャンスを的確にモノにするのも才能のうち。まだまだわが国ではマイナーな彼女がどうキャリアを積んでいくのか楽しみ。

25.「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」(9月1日)

またしても、深夜枠で放映されて話題になったアニメ。でも、本作は他のとんがった作品とは一線を画す心にじわっと来る物語。それにしても今年の邦画はアニメばかりだったな。

26.「愛、アムール」(3月22日)

老老介護の果てにある究極の愛とは。妻の望みと夫の望み、そして過酷な現実。考えさせられることが山のようにあって途方に暮れる。

27.「ムーンライズキングダム」(2月9日)

多感な子供たちの冒険と聞いただけで結構わくわくしてくるのだが、思ったほど満足できなかったのは年齢をとり過ぎてしまったからだろうか。

28.「ウォームボディーズ」(9月26日)

次々に新しい形態が生まれるゾンビ。ついに再生を果たした。話がかわいかったから許します。

29.「ゼロダークサーティ」(2月16日)

P.グリーングラスと同様に、K.ビグロー監督も緊張感溢れる現場の描き方が巧い。全体の面白さへ反映させられるかが違っているが。

30.「悪の法則」(11月27日)

弁護士先生の、ちょっと欲を張ったばかりに・・・な物語。ありきたりといえばありきたり。まあ、地道にコツコツ生きていきましょう。

31.「スマーフ2 アイドル救出大作戦!」(8月17日)

北米でコケたらしい。Britneyの主題歌もヒットしなかった。それなりに楽しい作品に仕上がっていると思ったんだけど、難しいものです。

32.「トランス」(10月14日)

J.マカヴォイの目に惑わされたのかも。まさかのダメ男。ちょっと催眠療法士がスーパーになってしまった感があるが。

33.「鷹の爪GO 美しきエリエール消臭プラス」(9月23日)

「紙兎ロペ」が活躍しようとも、TOHOシネマズといえばやはり鷹の爪団なわけで。島根県自虐カレンダーも職場に飾らせてもらいました。

34.「サイドエフェクト」(9月7日)

S.ソダーバーグの最後の作品、らしい。輝かしい経歴にしては地味と言うか、俳優陣は豪華だけどあまり印象に残らない。

35.「モンスターズユニバーシティ」(7月21日)

ピクサーも続篇や前日譚が増えてきて、あまり期待しないようになってしまいました。「カーズ」を意識した「プレーンズ」はピクサーじゃないけど。

36.「死霊のはらわた」(5月3日)

敵の正体は邪悪なモノ。もうそれだけで無敵感が漂う。呼び出しちゃいけません。山小屋にも行っちゃいけません。

37.「タイピスト!」(11月10日)

D.フランソワのアイドルムービーかと思うような出来映え。周りはみんな引き立て役ですよー。

38.「オブリビオン」(6月1日)

印象に残る予告。意外性のある世界観。T.クルーズ作品としては地味な印象だけど、悪くはないと思う。

39.「LOOPER/ルーパー」(1月14日)

最後にすっきりを期待していたので、悲壮感さえ漂う物語に少し落ち込んだ。超能力も興醒めに加担。

40.「テッド」(1月19日)

まさかの大ヒット。もはや何も言うまい。もっと映画館でもみんな素直に笑ってくれれば良かったのに。

41.「図書館戦争」(5月1日)

種市先輩が登場する前に観たので、福士蒼汰くんが生意気そうな青年に見えてしまった。岡田准一は小っちゃくてもジャニーズの勝ち組です。

42.「中学生円山」(5月18日)

観てましたねぇ、実写版の邦画。いずれも「あまちゃん」絡みではあるけど。しかもどちらもかなり下にいるけど。

43.「ハングオーバー!!!最後の反省会」(7月12日)

とりあへづ終わらせました、という意味でしか存在感がなかった気がする。反省会を是非。

44.「サプライズ」(11月16日)

印象に残るのは、殺害現場でエンドレスで流れる大音量の音楽と、脳天ミキサーでしょうか。あのバラエティさを追求すれば、もっとおもしろくなったと思う。

45.「サイレントヒル:リベレーション」(7月14日)

7年ぶりの新作がまさかのパワーダウン。ほとんどドキドキすることなく終わってしまった。

46.「マンオブスティール」(8月31日)

今年は「あるべき」論争に翻弄された年でもあった。「ゾンビは・・・」「X-MENは・・・」が許せた一方で、受け入れられなかったのはこのスーパーマンだった。もちろん少数派だったようだが、

47.「エリジウム」(9月28日)

許せない度がいちばん高かったのは実はこちら。非難されるよう設定された世界観と、それを解決させる方法のどちらもダメ。
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「魔法少女まどか★マギカ [新編]叛逆の物語」

2013年12月23日 19時05分18秒 | 映画(2013)
少女が見せたもう一つの成長。


前回のテレビシリーズのダイジェスト版と、今回の作品。観た後に共通して思ったことは、「これ作った人って頭いいよな」ってことである。

何より構成に唸らされる。そう来たか、と。

前回は、どうみても普通の、他人を押しのけるような性格も能力も持ち合わせていない少女が、何故最強のポテンシャルを有していたかを、驚くべき着想で筋を通してみせた。

そして今回は、きれいに収まった前作を敢えて壊して再構築するという、これまた驚きの作業をやってのけている。

そもそもタイトルに入っている「まどか」がミスリードであるというのが前回の痛快な肝なのだが、今回はもはやそれは既知のこととしてまるっきり無視して進む。

まどかがその身を犠牲にして「円環の理」となった後の世界が舞台。

魔法少女たちが恨みから解放され、完全になったはずの世界に綻びが生じていることに気付くほむら。

冒頭の魔法少女たちの活躍はどうやら幻。薄々と勘付くに連れて、おどろおどろしい風景が姿を見せ始める。

誰が世界を操っているのか。勘のいい人なら分かったのかもしれないが、予想は見事にはずれた。

真実を知り苦悩するほむらを前に、何とか力になろうと魔法少女仲間が集まる。そしてその行く末は・・・。

頭がいいと思うのは、安易なハッピーエンドに持っていかないことはもちろん、決してバッドエンドでもない、要は単純ではない落とし方を選択しているところにある。

前回の「円環の理」も、すごい力技でハッピーエンドに持っていったようにも見えるけれど、最後に残るキュゥべえの立ち位置はまったく釈然としていない。何か引っ掛かるけど世の中は続いていくという感覚で終わっていた。

そして今回釈然としないのは、おそらくほむら以外の全員である。

一部分をとればハッピーエンドにもなる。でも、それはおかしいでしょ?と誰もが言いたくなる世界。

でも、それって実は現実の世界と同じことに気付く。万人にとって良いなんてこと、まずないでしょ。

したたかにほくそ笑むほむらの姿と作り手が重なって見えてくるようで非常に興味深い。

(85点)
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「ゼログラビティ」

2013年12月22日 06時25分02秒 | 映画(2013)
宇宙ではあなたの叫び声は誰にも聞こえない。


初めて目にするものに勝るものはなかなかない。

宇宙空間そのものの恐怖を真正面から見据えて作った作品。新鮮な驚きに満ち溢れている。

タイトルバックの轟音から突然無音へと変わる場面に象徴されるように、とにかくそこにはモノがない。

空気がない、音がない。いや、そもそもそこには何も存在しない。

その中で黙々と作業を続ける宇宙飛行士たち。彼らの背後にぽっかりと浮かぶ大きな青い地球。

肉眼で見ることはおそらくない、けれども想像の限りにおいても比類なき姿に圧倒される。

美しさの理由は、もちろん視界を遮るもののない真空の世界にある。美しさと過酷さが表裏一体の空間で突如発生する事故。

頼みの綱であったヒューストンとの交信も途絶え、酸素が残る限られた空間を継いで地球へ生還する唯一の鍵は、自分の知識と生き延びようとする希望だけとなる。

話の軸は単純だが、主人公にかつて娘を失った女性飛行士を配しているところが妙味である。

本来であれば生きていく希望そのものである子供を亡くした彼女が、それでも地球への生還を誓う姿に感動する。何のために生きるかの前に、生きていくから人間なのだ。

話の前半で彼女をサポートする、G.クルーニー演じるベテラン飛行士がまた切ない。

後半の登場シーンでは一瞬うれしい気持ちにさせられるが、その後はよりいっそうの切なさに襲われる。

中国製宇宙船はちょっと都合の良い罰ゲーム風にも見えるものの、ああでもしなければ帰れない、とにかく究極の世界観を強く見せ付けられた。

(90点)
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「キャプテンフィリップス」

2013年12月08日 05時55分17秒 | 映画(2013)
駆け引きでアメリカに勝とうと思うなかれ。


「ユナイテッド93」の緊張感が再び、である。

事件が起きる前の加害側の準備と被害側の日常から淡々と、しかしドキュメンタリー式でカメラが追いかけるので、知らないうちに観ている側が引き込まれていく。

どうやらソマリアの沖で頻繁に起きているらしい海賊行為。報道で表面的な事実は知らされるものの、現場でここまで命を賭けた攻防が繰り広げられているとは思わなかった。

何より驚くのは、世界規模の巨大タンカーがたった4人に乗っ取られてしまうことだ。

それもタンカー側が決して怠慢だったわけではない。むしろフィリップス艦長は、危険を察知する力、最善の方策を判断し実行する力に長けており、はじめは海賊を追い払うことに成功する。

乗っ取られたのは、たった1箇所の過失、放水ホースの接続が外れたことによるものであった。

武装した4人から見れば、力に任せて潰してこようとする相手をかいくぐり、タンカーにハシゴをかけることに成功したわけである。

一度きっかけができれば侵入はたやすい。威嚇射撃で相手の反撃を封じればよい。

武装と非武装の差をここまで明確に示されると、丸腰で外へ出ることの無謀さが際立つ。理想を掲げるだけで平和は維持できないことの分かりやすい一例だ。

接近の攻防は、乗っ取られた艦内での心理戦へ移るが、ここでもフィリップス艦長の判断が冴える。

艦長の最大の責任は、貨物を目的地まで確実に輸送することに加えて、乗組員の安全の確保である。

そのことを身を持って示す艦長を目の当たりにして、事件が起きる前にはやや統一感に欠けていた船員たちも団結力を見せる。

結果として海賊側に船外待避を余儀なくさせることに成功するが、海賊側も命を賭けているだけに引き下がれない。最後の攻防である艦長誘拐へと舵を切る。

ここから現れるのがUS NAVYだ。弱体化を言われながらもそこは「アメリカ」、国力は変わらず世界の第1シードである。

どんな手を尽くそうとも国民を守る。このメッセージにブレはない。

どこまで真実か分からないが、冷静な判断、慎重な運用、そして的確な遂行。最後の闘いは、海賊側の悲壮さが際立つ。

母船から見捨てられ、巨大な力にじわじわと締め付けられ、客観的に見ればもはや勝ち目はない。薄々分かっていながら引くこともできない。

お互いが死力を尽くした争いの後に感じるのは、なくならない不平等という争いの種。

それがきっかけで事件が起きるが、たまたま自分が恵まれた側にいたために、また家族の元へ還ることができる。

救出に成功した後に医療チームの事務的な説明を聴き、初めて極度の緊張から解き放たれる艦長の嗚咽が心に刺さる。

(90点)
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「ウォールフラワー」

2013年12月01日 18時33分56秒 | 映画(2013)
「無」の自分が「無限」の一部になるとき。


言うまでもないことだが、世の中は不公平だ。

神様は乗り越えられる人に試練を与えると言うが、それは得てして慰みに近く、克服できずに終わる者も多い。

本作の主人公・チャーリーは、幼くして負った心の傷に苦しみ続けてきた。

苦労の過程で身につけた処世術は、自らの立場を客観的に捉えて時間をやり過ごすこと。高校入学の時点で、卒業までの日数を数えて溜息をつく。

しかし彼は徹底して心を閉ざしているわけではない。どこかで希望の糸口を欲していて、ところどころに小さな小さな行動となって現れる。

それは授業中のノートへの筆記であり、足だけは運ぶパーティーやフットボールの試合である。

一風変わった上級生のパトリックに自分から近付いて声をかけるのも、そうした流れの中のはなし。「はみだし者」特有の何かを感じ取ったのかもしれない。

何かと痛々しいチャーリーを描きながらも、この物語が温かく優しい空気に包まれているのは、そんな彼自身が持ち続ける希望と、それに気付いて応え続ける周りの眼の多さにほかならない。

ちょっとした恋人との諍いが弟に悪い影響を与えるのではないかと心配する姉。

高校で新しい友達に出会えたことを心から祝福し、30ドルのプレゼントを買うからお金を貸してというチャーリーに50ドルを渡す父。

自分からなかなか前に進めないことを見抜いて、読書の課題を与えることで意欲を引き出そうとする国語教師。

そして、チャーリーの心の冒険を大きく後押しするのが、新しい友達のパトリックと義理の妹・サムだ。

彼らと、彼らが日常を共にする仲間は、一見奔放に振舞っているように見えながら、ひと皮めくれば10代独特の繊細な心が顔を覗かせる。

彼らの共感を得て、少しずつ「社会」へ適応していくチャーリー。仲間に溶け込んだからこそ訪れる皮肉な儀式も話を盛り上げる。

どこか懐かしく感じるとともに、誰ひとりとして他人の助けなしに成長した者などいないことを痛感し、改めてこれまで自分がめぐり会った人たちへの感謝の気持ちを思い起こさせる作品である。

「少年は残酷な弓を射る」以来のE.ミラー。いるだけで危うげなオーラが湧き出る存在感に驚かされる。声もいい。

(90点)
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